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生骸屍肉  作者: 呉武鈴
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双方思奸 2

笠羽亨はクロと共に駅前の喫茶店でケーキセットを頼んでいた。

「ふむ、人間の嗜好品も悪くないな」

「『あっち』じゃ、どんなもん食ってんだよ?」

「見た目はこちらとあまり変わらない。ただし味は人間が食えたものではないな」

「ふーん」

クロの言葉に一応納得しながら亨はレモンティを口にする。

「しかし、お前らは一体なんなんだ?」

「私達はお前達でない。これだけで充分だと思うが」

「…それもそうか」

そこで会話が途切れ、二人の意識はケーキに集中することになる。しかし食べ始めたと同時に亨は自身の携帯電話が鳴り始める。

「……」

うっとおしそうに受信先を確認するとそこには『事務所』と書かれている。目の前のケーキを我慢しながら席を立ち、電話に出る。

結局彼はケーキをクロに譲り、代金を払った上で事務所に戻ることになった。



事務所に戻った亨が見たのは何処の国か分からないが怪しい雰囲気を出している三人の外人と茶を用意している雪奈の姿だった。

面倒事を押し付けられると感じた亨は内心『断ろうかな』と考えたが依頼を選んでいられる立場でないことを思い出し、話を聞くことにした。

「さて用件は何ですか?」

仕事用の顔を作りながらも相手に隙を見せずに尋ねる。

「この娘を拉致して欲しい」

流暢な日本語を喋りながら一枚の写真を机の上に出すと男は黙ってしまう。亨は写真を手に取るが意識は男に向けている。それなりの場数を践んでいることを暗に示している目付きに袖下に吊してある拳銃は警察などが持つものに比べて殺傷能力が高すぎる。

「この娘について持ってる情報、そして何故拉致をするか教えろ」

自分はお前達の知ってる情報と交換に依頼を受けてやる。もし情報に嘘があったら、それが分かった時点で依頼は取消し、ただし前金はしっかり貰うと宣言した上で依頼するか聞く。亨は自分に不利益なことは可能な限り避けることで今まで生きてきた。それ故にマズイ状況に陥ったら安全を最優先にすることを言った上で尋ねた。

「分かった」

即答出来たことから一人は幹部級の人間であることを亨は予想した。その収穫は少なからず交渉をスムーズに展開することが出来る。更に自分の不備が組織に不利益をもたらし責任を取らされる立場にあるため人間は一応信頼出来る。

そんな考えと共に依頼についての話が始まった。



三人が帰った後、亨はボイスレコーダーに録音しておいた会話を繰り返し聞いていた。

「…久しぶりにデカイ仕事だが、なんでよりにもよってお前なんだよ、ララ」

愚痴は誰にも伝わることはなく、ただ空気に消えていった。

「…そういやクロのヤツ、遅いな」

それなりに時間は経っているが未だにクロは帰って来てない。

「余分に金は渡しといたけど…まさか追加注文してないだろうな」

食べたらすぐに帰って来いと言ってなかったからそのまま待っているかもしれない。そんな考えに至った亨は面倒だと言わんばかりに溜め息を着くとクロを迎えに行った。

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