沈霊唄賛 8
潜入から3日目。昼の礼拝が終わりまたも各自自由になっていたので捜査第零課の面々は全員が外出届を出して近くの喫茶にきていた。
「やはりバレてたか」
少年の報告を聞きながらコーヒーを飲む亨が呟く。
「まぁこっちもそれは覚悟でやってるからね」
亨の呟きを聞きながらチーズケーキを食べる樟葉がさも当然のように言う。
「でも〜これではっきりしたね〜」
サラダを食べるミクの表情はいつもと変わらない。
「にしても懲りずにまだつけるってのはアホらしいな」
イチゴパフェを嬉々とした表情で食べる少年がちらりと後ろを見れば白いローブをはおった男女が四人がこちらの行動を逐一観察しているのが見えた。
「…いくらなんでもあからさま過ぎない?」
「大方『もう目はつけてるぞ』ってゆう警告だろ」
「それでも〜止めませんけどね〜」
「ところで」
不意に少年が口を挟んだので三人共が少年を見る。正確に言えば少年の手にある伝票を見た。
「割り勘か?それとも誰かの奢りか?」
その一言で全員がそれぞれが顔を見合わせた。
「…ここは最年長のミクさんが払って下さい」
「いや〜ここは男性である亨さんが〜」
「一番高いモン食ってたヤツが払うべきだ」
「らしいわよ」
「なんで割り勘をしたがらねぇんだ」
四人の中では一番大きい男がコーヒーカップ片手に携帯電話で会話をしていた。
「教祖様、今日にでも行動を起こすようです」
『そうですか。じゃあ君達はいますぐ帰ってきなさい』
「いや…もう少し監視を続けます」
『…わかりました。しかし危うくなったらすぐ逃げるんだよ』
「了解しました」
「連中が会計を終えて出ていきます」
「よし、追うぞ」
「待て」
女性の報告により青年が立ち上がるが老年の男性によって止められる。
「…何だ?」
青年がいらついた様子で老人を見る。それにつられて全員が老人を見た。正確には老人の手にある伝票を見ていた。
「誰の奢りだ?」
「…割り勘ですよ」
老人の戯言を代表して女性が返答した。
結局のところ、樟葉達は喫茶店に寄っただけですぐに戻った。
ただししっかりと追跡者を捜査第零課に引き渡してからだが。
「もはや限界ですっ!」
「こらこら、そう声を荒げないで。ほら深呼吸して落ち着いて」
「これが落ち着いていられますか!こちらの者が既に7人も行方不明になっているんですよ!」
「確かに多いけどそれだけ慎重にならないといけないんだよ」
「…?」
「言い換えれば他人を躊躇なく始末できる奴らなんだよ」
「…あ」
「私としては無闇に死人は出したくないんだ」
「ならどうすれば?」
「餌を撒くのが一番だと思わないかい?」
『井波樟葉さん、笠羽亨さん、根岸ミクさん。館内に居られるのであれば至急『裏庭』講堂までお越しください』
17:00の礼拝が始まる前に一行は館内放送によって呼び出された。
「教祖から直々にご氏名かよ」
「これは〜チャンスですね〜」
「…何か罠を張ってそうだな」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず!たとえ何かあっても行かねばなるまい!」
「…おい」
「なんだ?」
無駄にテンションが高い樟葉を見ながら亨は横にいる少年に話しかける。
「いつもこんな感じなのか?」
「テメェの方が付き合いが長いだろうが」




