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生骸屍肉  作者: 呉武鈴
11/29

沈霊唄賛 7

時を同じくして場所は捜査第零課。

「おはようござ…」

定時に出勤した増田の視界に真っ先に飛び込んできたのは、ちゃぶ台を引っ張りだしてそこで酒を呑んでいる劉玄と日比野の姿であった。

『見つからないうちに今日は帰ろう』と決めた増田が捜査第零課の扉を閉めるより先に劉玄が気付いた。

「増田、そんなとこにつっ立っとらんでさっさと入ってこい」

「…はい」

見つかってしまったからには逃げることは無理と判断し渋々捜査第零課に入ると案の定物凄い酒の臭いが増田の鼻を刺激した。その臭いに思わず鼻を押さえ、辺りを見渡す。よく見ればそこらじゅうに潰された缶ビールやらビール瓶、挙句の果てには綺麗に解体された樽であろう木材まであった。

「どんだけ呑んでるんですか?てかいつから呑んでるんですか?」

「いつからだったかのぅ…覚えとらんか日比野?」

「…確か昨日増田が帰ってから久しぶりに『組み手』をしてもらって、小一時間やった後に課長が奥から酒運んで来てからだから…20:00ぐらいからだな」

赤ら顔をしてるが意識がしっかりしている日比野と同じく赤ら顔をし、いつもと変わらない笑いかたをしている劉玄を見比べて増田は呆れた。

「…まさに蟒蛇(うわばみ)だ」



戻って狼誠教の礼拝堂

ミクと別れて取りあえず人が集まっている所に行こうと三人が歩き始めたとき、どこか場違いな鐘の音が響いた。それと同時に全ての人間が一斉に黙り舞台の方に注目した。

鐘の音が鳴り止む頃に舞台袖から初老の男性がゆっくりと舞台中央に向かっていく。樟葉が回りを見れば全員が両手を組み、目を閉じていた。慌ててそれに倣い手を組んだがその頃には老人は既に移動を終えていた。

老人はマイクスタンドのマイクを手に取ると信者を見渡すと微笑み言った。

「お早う」


その一言で樟葉の膝は震えだした


(…っ!?何!?何なの、この感覚!?まるでアイツに初めて会った時と同じ…)

たった一言―それも他愛もない朝の挨拶だけなのに樟葉はその奥に潜んだ闇を見つけていた。その余りの暗さに足が震え、冷や汗が止まらず、焦点が合わなくなる。そのまま闇に呑まれ意識を失いそうになるが不意に肩に手を置かれた。振り返れば真面目な表情をした少年と目があった。たったそれだけなのに樟葉は不思議と安堵を覚え、意識を保てた。少し余裕を持てたので隣に亨を確認してみると全く動じてないようだったが明らかに目付きが悪くなり敵意を剥き出しにしていた。


(ほぅ…私の闇に気付いているな。しかも呑まれないほど意志の強いのまでいる)

教祖―大上誠は舞台の上から全てを見ていた。異端者達がどれほどの者かを確かめる為に闇をさらけだしてみたが予想以上に強い意志の持ち主が複数いることに気付いた。

(これは早めに『裁いた』方がよさそうだな)

そう思いながら毎朝の礼拝を終えた。


朝の礼拝が終わるとそのまま全員が食堂に移動し、朝食をとる。その後は基本的に自由時間であり、外出届けを出し13:00までに戻ってくれば何も言われないらしい。

「とゆうわけで俺は貯まってる書類を片付けるために事務所に戻るから後は頼んだ」

「待ちなさい」

ロビーにて外出届けを提出しようとした亨の奥襟を樟葉が掴んでいた。

「こちとら忙しい中手伝ってんだ」

「こっちがさっさと終われば手間は消えるわよ」

「急ぎの案件なんだよ」

「雪奈ちゃんと忍ちゃんに任せなさいよ」

「あいつらに無理はさせたくない」

「あ〜ムカつく!ちょっとミクさん!何か言ってやってよ」

「根岸ならもう出てったぞ」

「なっ!?」

「次いでにアイツも一緒に行った」

「協調性のない奴ばっかね!」



「樟葉ちゃんおいてきぼりにしてよかったの〜?」

「邪魔だからな」

その頃、少年とミクは正式な手続きをして建物の外に出ていた。

「私より動けると〜思うけど〜」

「ネコ被ってんな。テメェの方が慣れてるだろうが」

「…まぁ正直近いうちにあの娘には抜かれそうだけど」

周りには聞こえないように小声で話ながら辺りの気配を探る。

「…三人ね」

「わざわざ尾行までつけられてんだからもうバレてるな」

「そうね」

そのまま足を止めずに十字路を右に曲がった。



「そこを右に」

「了解」

二人が曲がった方向に三人の人間が距離を保ったまま近づいていく。そのうちの一人が身を出さずに二人の行方を確認する。

「…っ?いないぞ」

しかしそこには誰もいなかった。

「そんな馬鹿な」

一番後ろにいた男がそれを確認するために前に進もうとする。そのとき頭の上に何かが置かれたのを感じた。疑問に思い上を見ようとしたが


そのまえに顎を掴まれ首を捻り折られた。


その時に鳴った音に反応して振り向いた二人の内、殺された男に近かったのは顔の側面を掴まれ塀に叩きつけられ頭蓋骨が砕けた。そのまま脳も圧迫され一瞬後には頭蓋骨の破片が刺さり死亡した。

もう一人はその行為を目視して声を出す前に後ろから首を極められそのまま意識を落とされた。

この僅か十数秒の間に死体が二つ、意識のない人間が一つ出来た。

「もしもし課長ですか〜?今からGPSのアドレス送るので〜死体の処理をお願いしま〜す。…いえ〜、二つですよ〜。あと一人いるので〜そっちは尋問お願いしま〜す」


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