物書きな僕ら1
「克己ー、ノート貸してー!!」
幼馴染みの実花が俺を拝むようにして言う。
「おいおい、4月には高校生だぞ?
さすがに他校の板書は網羅せんぞ?
未だそんなんで大丈夫か?」
机に入ったノートを差し出しながら、心配してやる。
「んー、まぁ?たぶん?」
なんも考えてない顔で実花が答える。
「つか、よくわかったね!私が借りたいのが数学だって」
差し出されたノートを見て嬉しそうにする。
「お前、他の教科は寝ないじゃん。」
しかも俺より点数いいし、という言葉は心にしまっておく。
「さすが幼馴染み様克巳さま!!明日返すね!」
「おー!明日も数学あるから返せよー」
数学ノートを抱えて立ち去る実花を見送る。この時に思い出せてたらあんなことにはならなかったかもしれない。
翌日、目を輝かせて実花が走り寄ってきた。
「ねね!!克巳も小説書くんだね!?知らなかったよ!」
「なぜ知っている」
思わず漏らした言葉を、なかったことにしたくて口を手で押さえたが時すでに遅し。
「これぇ!!!」
得意満面に見せてきた俺の数学ノートの隅っこ。
演習が終わって暇だからと思い付いた構成メモが残っている。
「克己も、ってことは?」
「もちろん、私も書くよー!ホームページもあるよ?見る?」
おおぅ、アクティブ作家さんでいらっしゃった。俺はまだ一人でこっそりかいてるだけ。しかもエンドマークをつけられた試しがない。
「見ないよ」
不用意に俺に勧められるということは。書いてるのはきっと目がつぶれてしまうくらい眩しくポジティブなものなのだ。
作者を知ってしまってるからこそ、その表裏のない人間性に嫉妬してしまいそうだった。
「ちぇー!ざーんねん。見てもらって感想聞きたかったのに……あっ!いいこと思い付いた!」
実花が思い付くいいことは大抵俺にとってろくでもないことだ。
「小説交換ノートしよう!」
……ほらやっぱり。