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1 : 異世界

 私には前世の記憶がある。


 今生きているこの世界でもそんなことを口走れば、とても心配されるか、変人扱いされるぐらいには珍しい事のようで。先月、8歳の誕生日の日、父にカミングアウトすると、ベッドで1日寝かされた。


 この世界は、私が知る日本、いや世界とは随分違うようだ。

 物心ついた頃に、ふとこの世界にはない物を思い浮かべる事が多くて、欲しい物がない、見たい物がない状況にとても絶望した思い出がある。でも成長と共に、受け入れられるようになったのか、今はそれ程辛くはない。でもあったらいいなぁ程度の想いはある。


 私が住む国、ギフト王国。王政国家だから王様がいるのだ。政治も軍事も王様を中心に貴族が行なっている。王都のような巨大都市は、まるで、中世のヨーロッパを思わせる建物と美しい花が街を彩っている。一度父と一緒に行ったがとても壮観だった。

 また文明も、現代日本のように科学は発達していない。

 しかし、その代わり魔法がある。この世界で一番驚いた事だ。でもみんながみんな、魔法使いなわけではない。魔力を持って生まれた人間だけが使える。それも貴族階級に稀にいる程度。平民で魔法を持つ者は本当に奇跡の域だ。

 だが、魔力がなくても間接的に道具としては使えたりする。魔道具と呼ばれ、国の許可を得て、購入するらしい。王都に行く際、列車のような物に乗ったのだが、どうやらその原動力が魔道具によるものだったようだ。


 科学技術の代わりにこの世界では、魔法が人々の生活を豊かにしている。

 まさに異世界だ。



「ルカ、お祈りの時間だよ。」

「はい、お父さん。」


 そしてもう一つ。この世界、というよりギフト王国には宗教が根強く存在する。



 両手で、燐を模した赤い石を握り、目を閉じる。


「「今日も健やかな1日に感謝を。その加護に感謝を。神竜様に感謝を。」」


 父と共に、祈りを唱える。

 毎日寝る前に、守護神・神竜様にお祈りをする。



 この国の北部には大きな山がある。その山はハルバティアと呼ばれ、神竜様が住んでいるらしい。


 なんでも遥か昔、ハルバティアは活火山で、度々噴火し、生き物の住める場所ではなかったそうだ。そこに、それは美しい黒竜が現れ、マグマの吹き出す、活火山に舞い降りた。それから数日後、噴火が収まりその頂点に、炎を纏った竜が現れた。それ以降、噴火する事はなくなり、さらに一帯は、どんどん豊かな土地になっていった。特に水が良質になり、今ではそれが国の大きな利益になっている。


 そんな歴史からこの国では、その竜をこの国の恵みと人々を守る守護神・神竜様と崇め、ハルバティア神竜教団を中心に国民の9割が信仰する一大宗教だ。

 その信仰はこの国ではほぼ習慣なので私も父と一緒に信仰している。

 前世、無宗教だった私とは大違いで、笑ってしまう。

 前世同様、神の存在(神竜)を信じているかと言われれば見た事ないし、そこまで信じてない。でも、この国の恩恵はやはり休火山のハルバティアのおかげだと思う。その自然の恩恵という守護に感謝するのはとてもいい事だと思うから、私はこの宗教を信仰している。



「ルカ、今日は随分と熱心に祈るのだね。」


目を開けると、父が言う。青い瞳が優しげにこちらを見つめていた。


「はい。今日ハイレイルさんから手紙が届いて、なんでも私の8歳の誕生日のプレゼントを持って会いに来てくれるそうで。…でもここは人里離れてますし、何よりハイレイルさんの仕事柄道中危険もあると思うので、守護神である神竜様に加護を願っておりました」

「そうか、それならハイレイルも無事にたどり着くだろう」

「はい!」



 ハイレイルさんこと、ハイレイル・ド・デニスさんは、捨て子だった私を拾って、今の父という里親を見つけるまで育ててくれた人だ。と言っても、一緒にいたのは半年程だったらしいので育ててもらった記憶はない。今は数ヶ月に1回会う親戚のおじさんのような存在だ。


 詰まるところ私と父は、二人きりの血の繋がらない家族なのだ。


 まあ、見るからに血が繋がっているようには見えないのだけれど。


 物心ついた頃、鏡で自分を見ていて気づいたのだ。自分の姿が前世の幼少期と全く同じという事に。

 ストレートの黒髪に混じりっけのない真っ黒な目。the日本人な顔のパーツ。何だったら顔の右側の目の下と口の下にある黒子の位置まで一緒だ。

 正直ゾッとした。

(私、今世でも奥二重なの?)


 この国は(私の知る範囲だが)基本欧米系の顔立ちの人が多い。そして基本平民は茶色、青色、灰色系の目、髪色が多め。さらに王族、貴族には金髪、銀髪いるらしく、目の色も多様なようだ。

 色素薄めで、彫りの深い顔。

 そう、何が言いたいかと言うと私はとても、この世界では浮く見た目をしている。黒髪に黒目はかなり珍しい。そしてこの平たい顔だ。町に行くとチラチラと見られがち。やめて!

 一度「自分のせいで、お父さんはこんな人里離れた場所に暮らしているのではないか」と聞いたことがある。その時は「こっちの方が自由にできるから、ここにいるだけだ」と言われたが、どうだか。

 とても大切に私を育ててくれる父なので、とても申し訳なくなる。

 

(神よ、なぜ世界は変えたのに、私は変えなかった!!!?)


 そして見た目のだが、名前もなのだ。

 ルカ・バトラー


 前世でも私は、るかだったのだ。


 


 なぜこんな見た目で生まれたのか、なぜこの名前がついたのか、理由は誰にもわからない。

 なにせ私は、捨て子だっかから。



 赤ん坊の私は「ルカ」と書かれたメッセージカードと共に籠に入れられ泣き叫んでいたそうだ。


 あの、神竜様が住むという、ハルバティアの山の中で。

国名  ギフト王国 (略、ギフト)


宗教  ハルバティア神竜教団(略、神竜教)


休火山 ハルバティア


神竜  守護神 / 神竜様 / ハルバティア…と色々呼ばれ方がある。


名称、色々出てきたのでまとめ

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。応援しています。
2019/11/19 17:36 退会済み
管理
[一言] 初めまして!作品楽しみにしています! まだ2話ですが表現や文章力に引き込まれました! 早くハルバティア様登場してほしいです! 完結までがんばってください!
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