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ゆるふわ義妹にゲームを教えたら、僕の世界が一変した件  作者: 卯月緑
ゆるふわ義妹と歩む、これからの僕たちの世界
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友達の妹

これからも頑張ります。


 弟くんがやろうと言ってきたのは玖音さんのお父さんも大好きな、巨大なモンスターを倒すゲームだった。

 もう長年ずっと続いているシリーズで、ゲームをしている男の子なら誰もが名前くらいは知っているような有名ゲームだ。


「兄ちゃんってどの武器使うんだ? オレはやっぱ大剣だな!」

「僕は恥ずかしながら、浮気性なんだ。だから色々な武器を使うんだよ」


 そんな僕たちを、女性陣はすぐ近くに座って見ていた。


「姉よ」

「なによ」

「お兄さん、浮気性だとか言ってますよ」

「ゲームの話でしょ。本人は絶対浮気とかしないタイプだと思うけど」


 凛子さんと美代ちゃんは、さっきから二人だけで話すことが増えていた。

 やっぱり姉妹ということなのかな。並んで座る姿はとても仲が良さそうだった。


「たしかに浮気もしそうにないし、嫁は大事にしてくれそうだし、超大当たりの男ね」

「……あんたのその性格、どうにかならないの? 私の同級生でもそこまで男漁りに夢中な子はいないわよ?」

「人聞きの悪い。男を漁ったことなんて今までに一度もありませんが?」

「じゃあ、今の行為は男漁りじゃなくて何だって言うのよ?」

「一目惚れ……。運命の初恋、かしら……?」

「…………」


 僕は凛子さん姉妹から目を離し、弟くんとのゲームに集中する。


「ま、少し話を盛っちゃったわ。最初に会ったときにいい男だと思ったのは本当だけど、さすがにもう二度と会うことはないかなと思ってたから恋心には発展しなかったわね。だから厳密に言えば一目惚れではないかな?」

「現実を見過ぎでしょ……。小学生らしく白馬に乗った王子様にでも憧れてもいなさいよ」

「ふん。一目惚れは嘘かもしれないけど、運命の初恋ってのは真実だし。彼が私の白馬の王子様だわ」

「…………」


 弟くんはパッと見た感じ、なかなかゲームが得意そうだった。

 まだ小学生ということで全体的な戦闘の流れを考えていくことは苦手みたいだったけど、反射神経や操作技術などその場その場の対応には光るものを感じた。


「でも、空はあなたなんて相手にしないわよ? あなたも見たでしょ? 義理の妹とはいえ、あんな美少女が隣にいたって恋愛感情を抱かないみたいなんだから」

「そんなことはもちろん織り込み済みよ。最初は友人の妹って立場でもいいの。でもずっといい女をアピールし続けていれば、やがて彼だって私の魅力に気付いてくれるはず。その頃には私だって、立派な乙女に成長してるはずよ」

「……何なのこの子……」


 何やら視界の端で、凛子さんが肩を落としたように見える。

 でも僕はちょうど弟――ミッキーくんの見せ場だったので、凛子さんに気をかけている暇はなかった。


「チャンスだよミッキーくん。特大の攻撃を弱点に打ち込んであげて」

「サンキュー兄ちゃん! 最ッ高のサポートだぜ!」


 僕が拘束したモンスターの(ふところ)に飛び込み、強烈な一撃を食らわせる弟くん。

 美味しいところは彼に持っていかれちゃったけど、僕は弟くんがものすごく嬉しそうにしているので満足だった。


「姉さん」

「なに?」

「あいつ、めちゃくちゃ楽しそうね」

「……そうね」

「あと、めちゃくちゃお兄さんに懐いてない?」

「懐いてるわね」


 上機嫌になった弟くんは、戦闘の合間に僕の体をポンポンと叩いてくる。


「いやー、兄ちゃんと戦うと動きやすいわ! オレ、他の友達とも遊ぶんだけど、兄ちゃんとやるのが一番気持ちいいかも!」

「そう? ありがとう。でも一回だけだし、偶然上手くいっただけかもしれないよ」

「いやいや、謙遜すんなって! オレの友達で拘束専門で遊ぶ子もいるんだけど、正直そいつよりも兄ちゃんの方が上手だよ!」


 弟くんは僕をべた褒めしてくる。

 年の功が大きいと思うのに、そんなに褒められると気恥ずかしいな。


「あっさり手懐けちゃってまあ。……お兄さんって、子ども好きなのかな」

「どうだろ。他人の善意には全力で応えるタイプだとは思うけど」

「やっぱいい男だわ。目に見える派手さはないけど、絶対に将来性あるわー」


 しかし褒められてしまった以上、無様なプレイをさらして幻滅されるわけにはいかない。

 僕は再び弟くんとのゲームに集中し始めた。


「それが、最近の彼は普通に目立つ存在になりつつあるのよね。今回の中間試験、とうとう学年一位になっちゃったし」

「すごいじゃない」

「なんでも妹さんやその友人さんと一緒に一夜漬けしたとかで、いつも以上に点数が伸びたんだって。ていうか満点だったわ」

「目立ってライバルが増えるのは困るわね……」

「まあぶっちゃけ、目立ってる理由の半分は、私が校内でいつも一緒にいるからだったりするんだけどね」

「姉さんも、顔だけは悪くないからねえ。――まあ、変な虫が近寄らないから良しとしましょう」

「なんで私、実の妹にこんな上から目線で話されてるの?」


 迫りくるモンスターの攻撃を避けながら、僕は弟くんの黒子に徹し続ける。


「すげー! 兄ちゃん全部の攻撃避け切ってる!」

「ありがとう。でも僕はもうだめだよ、スタミナなくなっちゃった。ミッキーくん、敵も疲れてるからトドメをお願い」

「ま、任せろ兄ちゃん! うおお、燃える展開だー!」


 僕は敵モンスターの体力を見切り、弟くんが最大限活躍できる場面を演出する。

 彼は僕の期待に見事応えてくれて、格好良くフィニッシュを決めてくれた。


「やった! 兄ちゃん、オレやったよ!」

「さすがだね、格好良かったよ。おめでとう」

「何言ってるんだ、兄ちゃんも格好良かったよ!」


 戦闘に勝利して、僕は弟くんと健闘を称え合う。

 気が付けば、そんな僕たちを凛子さん姉妹が見守ってくれていた。


「……やっぱりお兄さん、子どもの扱い上手じゃない?」

「まるで自分は子どもじゃないっていう風に聞こえるけど……。まあ、それには賛成するわ」

「いいお父さんになりそう……。絶対に逃さないわ……」

「恐ろしい台詞をウットリとした表情で言わないでよ。……まあ、私もそのつもりだけど」


 小学生の男の子と一緒になってはしゃいでみっともなかったかな?

 でもゲームは誰とやっても楽しむものだし、別に良いよね。


 そこで弟くんが「遊んでくれてありがとうな」とお礼を言ってきたので、僕は彼に向き直る。


「でも、ゲームは一区切りついたみたいね。姉さん、共闘作戦の続きと行きましょう」

「続きって、具体的にどうするのよ?」

「じゃんけんをして、勝ったほうがお兄さんの相手、負けたほうはあいつが余計なことを言わないように監視、ということでどうかしら?」

「――乗ったわ」

「いいわね、じゃあ早速」

「「じゃんけん――」」


 僕も楽しかったよと告げると、弟くんは「またいつかやろうな!」と言ってくれたんだ。




    ◇




 弟の幹人(みきと)くんの次は、妹の美代子(みよこ)ちゃんのお相手の番だった。


「お兄さんは小さな頃、将来何になりたかったんですか?」

「あまりそういうことは考えない子どもだったかな。美代ちゃんは何になりたいの?」


 その美代ちゃん、お兄ちゃんという存在に憧れでもあるのかな。

 いきなり僕の足の間に体を割り込ませ、ストンと座っちゃったんだよね。


 体が小さな女の子ならではの行為だけど、まだあまり話したことがない僕にしてくるなんて思いも寄らなかったよ。


「よくぞ聞いてくださいました。私はやはり、お嫁さんです」

「お嫁さんかあ。大昔から変わらない、とても素敵な夢だと思うよ。いい人見つかるといいね?」

「いい人……、もう見つけたかもしれません」

「そ、そうなんだ?」


 彼女はそのまま後ろを振り返り、見上げるようにして僕と会話する。

 正直なところ、正面に座ったほうが話しやすいと思うんだけど、しばらくお父さんもいなかったから甘えたいとかもあるのかな。


「私はダンナ様には尽くしてあげたいタイプなのですが、最近尽くされるのも悪くないかなとも思いまして。やはり夫婦ですもの。尽くし尽くされ、お互い何もかも半分ずつにするのもいいかもしれませんね」

「あ、う、うん。素晴らしい考えだと思うよ」


 しかし美代ちゃん、背伸びをしたい年頃なのかな。

 子どもっぽい甘え方をしてきたり大人びた話し方をしてみたり、不思議な女の子だね。


 そこで彼女は、ますます僕に体を寄りかからせて会話を続ける。


「お兄さんは、料理を作る側ですよね?」

「今のところは、そうだね」


 急にガラッと話題を変えられて、僕はさらに戸惑わされる。


「それ、はんぶんこにしてみてはいかがでしょう? 今度私と一緒に作ってみませんか? 私は母の手伝いをしていて、まったくの無知ではありませんの。お役に立てるかもしれません」

「て、手伝ってくれるんだ? 作る楽しみを分かち合うんだね?」

「はい。そして私は、ゆくゆく料理を立派に覚えてみせます。そしたら今度は私が尽くす番です。お兄さん、私の愛のこもった手料理、食べてもらえますよね?」

「あ、ええと、おかえししてくれるんだね? ありがとう。楽しみにしているよ」


 元々会話が得意じゃない僕は、苦労しながら美代ちゃんの相手を務めていた。

 ゲームなら接待プレイなんてお手の物だと思うんだけどなあ。美代ちゃん、僕とのお喋りに満足してくれてるのかな。


 そしてそんな僕たちを、今度は凛子さんと弟くんが近くに座って見守ってくれていた。


「……なあ姉ちゃん」

「なによ」

「さっきからキレてない? オレ、ちょっと怖いんだけど」

「キレてないわよ? ぜーんぜんキレてないわよ?」

「その割には、さっきから握りこぶしが震えてるような気が」

「キレてない。……いいわね? 返事は?」

「は、はい」


 僕がチラリと視線を向けると、凛子さんはすぐにニコリと笑ってくれる。

 やっぱり下の姉弟に僕のことを優先的に回してあげてるのかな。優しいお姉さんだね。


 でも、どうしてなのかな。

 その笑顔を見てると背筋が震えてくるんだけど。何か変なトラウマでも出来ちゃったのかな。


「もう、お兄さんったら、お姉ちゃんじゃなくて私を見てください」

「ご、ごめんね。あっちはどうしてるかなって気になっちゃって」


 しかし僕が横を向いていると、すぐに美代ちゃんが僕の顔に触れて元の位置に戻してくる。

 こういうところは、年相応の女の子っぽいよね。


「でもわかります。妹の私が言うのもなんですけど、お姉ちゃんってそれなりに美人ですよね」

「そ、そうだね。それなりというか、普通に綺麗だよね。学校でもすごく人気あるみたいだし」


 凛子さん本人の前で答えるのは恥ずかしかったけど、話題として振られてしまったので僕は美代ちゃんの発言を肯定した。


「姉ちゃんって学校で人気あるんだな」

「ふふん。まあね」

「……なんか、めちゃ機嫌良くなってね?」

「そうかしら?」

「もしかして、兄ちゃんに綺麗って言われたからか?」

「なんのこと? 別に機嫌良くなってないし?」

「いや、なってるだろ……」


 すると美代ちゃんは、そこですかさず言葉を続ける。


「ですがお兄さん、忘れてもらっては困ります」

「え、何を?」

「私も同じ血を引いているんですよ? 私だって後数年もすればあれくらいに……、いえ、もっともっと美人になってみせます!」

「び、美人さんかあ。お姉ちゃんと姉妹なんだし、たしかにきっと、美代ちゃんも綺麗な女の子になるんだろうね」

「それまでお兄さん、待っててくださいね。私、頑張りますから」

「う、うん。頑張ってね?」


 僕は美代ちゃんに押されて、流されるように彼女を応援してしまった。

 でも、美人になることが悪いことじゃないし、応援しても問題なかったよね?


「あいつ、姉ちゃんより美人になるってさ」

「うふふふふふ。いい度胸じゃない……」

「うおっ!? 姉ちゃん一気に機嫌悪くなってね?」

「あの子ったら、じゃんけんに勝っただけで人生にも勝ったつもりでいるのかしら……」

「ね、姉ちゃん、すげー邪悪っぽくなってるぞ。兄ちゃんも怖がるんじゃないか?」


 そこで僕は、問題がないことを確認するために凛子さんの方をチラリと確認する。

 彼女はその瞬間、さっきみたいに僕にニコリと微笑みかけてくれたんだ。


 だけどそれを見た瞬間、また小さな手が伸びてきて僕の顔の向きは元に戻されてしまう。


「もうお兄さんったら、いけずな人なんですから。今は私のことだけを見てください」

「に、二度もごめんね。でも、ちょっと向こうが気になっちゃって」

「後数年ガマンしてください。絶対に、私しか気にならないようにしてみせますから」

「そ、そうなんだ? とても強い向上心を持っているんだね」


 僕の目を見つめて、数年後の目標を語る美代ちゃん。

 まだ十歳のはずなのに、本当におませな女の子だった。


「……姉ちゃんってすごいんだな。あっという間に完璧な笑顔に変わりやがった」

「ぶっちゃけるとね。彼を怯えさせたことなんて何度もあるから、少々見られても構わないのよね」

「……兄ちゃんも大変なんだなあ……」


 でも美代ちゃん、そんなに美人さんになっちゃったら僕なんて相手にする必要なくなると思うけどなあ。

 後でいわゆる黒歴史とかになっちゃわないかな。心配だな。


 しかし、僕の目をじっと見つめていた美代ちゃんは、そこで恐ろしいことを言い始める。


「お兄さん、私の発言を子どもによくある一時的な発言だと思ってますね?」

「えっ!?」


 ズバリ言い当てられた僕は、驚きで固まってしまった。

 そんな僕に、美代ちゃんは可愛らしく微笑みながら口を開く。


「それでも良いんです。私、口だけではなくちゃんと行動で証明する女ですから。いつかきっといい女になって、お兄さんをあっと言わせてみせますね」


 彼女にそう言われた僕は、やっぱり固まったまま動けなかった。

 なんとなく、本当に素敵な女性になるのは間違いないんだろうなあ、と思った。


「美代子のやつは昔から生意気で変わってるやつだと思ってたけど、今日のあいつは一段とすごいな」

「まったくよ。どうしてあんな性格になっちゃったのかしらね?」

「そうかな、オレはなんとなくわかるけど。姉ちゃんと似てるじゃん」

「……どこが?」

「え? だって二人とも兄ちゃん一筋に気に入ってるし?」

「…………」


 結局凛子さんたちは内緒話をするだけで、最後まで口を挟んでくることはなかった。



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