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ゆるふわ義妹にゲームを教えたら、僕の世界が一変した件  作者: 卯月緑
ゆるふわ義妹とゲームを遊んでいたら、僕の世界が深まっていく件
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パジャマパーティ?

大変遅くなりました。

明日からも頑張ります。


「坊ちゃまは、そんなとっておきの切り札を見せちゃったんですか」


 似たようなパジャマを着て、二人の女性が布団の上でくつろいでいた。

 一人は枕を抱いて薄く頬を染めて座っている女性、玖音さん。

 もう一人はその玖音さんの髪をお手入れしてあげている女性、紗雪さん。


「ぼ、僕は玖音さんに落ち着いてもらおうと思って見せただけで、決してお見合い話は冗談だって伝えたわけじゃないですよ?」


 そうして二人並んでいると、まるで姉妹のように思える玖音さんと紗雪さん。

 まあ、玖音さんには実のお姉さんがちゃんといらっしゃるんだけどね。紗雪さんはどうなんだろう。


 それでも姉妹のように仲良くしている姿を見ていると、昼間のバトルの影響もなさそうで本当に安心出来る。


「そういう私向けの言い訳は聞きたくないです。坊ちゃまはいい加減、お嬢様に黙っているのが辛くなったのでしょう?」

「……はい。すみません」


 夏の夜空に星が輝く頃、僕は玖音さんの部屋に招かれていた。

 彼女の個室は三部屋あるけど、今僕たちは寝室の方にいる。今日は三人でここで眠ることになるらしい。


「紗雪さん、お兄さんを共犯に引きずり込んでおいて、まだそのようなことを言うのですか?」

「え~、だってお嬢様もすぐに言われなくて良かったでしょ? 嫉妬に狂ってしまった自分はいかがでしたか? 普段とは違う気持ちで、坊ちゃまに迫ることが出来たのではないですか?」

「~~~ッ!?」


 紗雪さんのその言葉で、玖音さんは顔を真っ赤にして枕を強く抱きしめる。

 僕も恥ずかしいから、そういう発言は控えてほしいなあ。


「しかもそれだけでなく、坊ちゃまに愛の結晶まで見せていただけたんですよ? ね~? 日常のいいスパイスになったのではないですか~?」


 紗雪さんに耳元でそう言われ、玖音さんはますます恥ずかしそうに枕を抱く。

 だから紗雪さん、僕もめちゃくちゃ恥ずかしいから止めてください。だいたい愛の結晶は大げさでしょう。とても想いのこもった、素晴らしい贈り物でしたけど。


「ほら坊ちゃま、もう一度見せてあげてくださいよ。お嬢様の愛の結晶。いつも肌身離さず持っているのでしょう?」


 お手伝いの紗雪さん、わざわざ玖音さんにも聞こえるようにそう言った。

 しかし玖音さんは意外なことに、それを聞いて少し落ち着きを取り戻したようだった。

 顔は真っ赤だったけど、冷静な声で話しめる。


「残念ですが紗雪さん、私は少しやり過ぎてしまったみたいです。お兄さんはあれ、大事にしてくれているかもしれませんが、使ってくれてはいないみたいでした」


 苦笑しながら、そう言う玖音さん。

 紗雪さんは驚いて、僕も苦笑する。


 僕は恥ずかしかったけど、この話の流れではすぐに出したほうがいいと思って、ポケットから『ある物』を取り出した。


「お、でも坊ちゃまはちゃんと持ち歩いてくれてるみたいですよ。どうです、お嬢様、実際に坊ちゃまから自分が贈った品が出てくる感想は。これはこれでなかなかグッと来るのではないですか?」

「あぅ……」


 僕が差し出した『ある物』を見て、玖音さんが耳まで赤くして俯いてしまう。やっぱり僕も恥ずかしいかった。


 それは真っ白なハンカチだった。

 先日の僕の誕生日に、玖音さんが贈ってくれたプレゼントだった。


「……しかしお嬢様、自分で煽っておいてなんですけど、私もこのハンカチはやり過ぎだったと思います」

「うぅぅ……」


 玖音さんはますます縮こまる。

 僕もプレゼントを開けてみた時、その中身に肝を冷やしたものだった。いや、本当に嬉しかったけどね?


「手縫いのハンカチって。出会って数ヶ月の女が男に贈る品じゃないですよ。お嬢様は重い女ですねぇ」

「て、手縫いの部分もありますけど、ミシンも使ってますっ。……強度的に母がそうしたほうがいいって……」


 僕はこの夏ありがたいことに、いろんな人からプレゼントをもらった。

 でもその中で、一番手間と時間がかかっているプレゼントがどれかといえば、それは間違いなくこの玖音さんのハンカチだと思う。


「女の執念が籠もってますよね。チクチクチクチクと一針ごとに。坊ちゃまのイニシャルまで入れてあげて」

「も、もう言わないでください~……」


 とうとう玖音さんは音を上げてしまった。

 僕は彼女らに軽く会釈をしてハンカチをポケットにしまう。


 紗雪さんは楽しそうに玖音さんの髪の手入れをしながら、言葉を続けた。


「でもまあ、このハンカチを見せられたから、お嬢様はゲーム中でも冷静さを取り戻せたんですね」


 話題は少し戻ったみたい。

 僕たちは昼間やっていたパーティゲームの話をしていたんだった。


「お兄さんにこれを見せてもらった瞬間は、頭が真っ白になってしまいましたけどね。でも、おかげで状況の推理が出来るようになりました」


 玖音さんは僕と紗雪さんのお見合い話のことを考え直し、不自然な点に気付いたみたい。

 そして同時に、ゲームで勝利する方法も見つけてしまった。


「あ~あ。もう少しで私のボーナスが倍額になっていたのに。坊ちゃまの我慢が足りなかったせいで水の泡ですよ」


 わざとらしく肩をすくめ、左右に首を振る紗雪さん。

 でも僕はそれが演技だとしても、実際に彼女にお金が入らなくなったのは本当だったので謝ろうと思った。


 でも、それより先に玖音さんが口を挟んでくる。


「お兄さん、気にする必要はありませんよ。紗雪さんはあのままボーナスを貰っていても、他の使用人の方々に公平に分配して残ったものは貯金するだけだったでしょうから」


 僕は驚いて紗雪さんを見た。

 紗雪さんは珍しくちょっと照れくさそうに頬を染める。


「お嬢様? 女同士の根回しは重要なんですよ? 特に私はこんな性格なので、お金でも配らないと立場が良くならないんですよ~」

「今でも皆さん仲が悪そうには見えませんけどね。それに、そこまで心配なのでしたらお仕事で成果を見せてみてはいかがですか?」

「うわー、お嬢様が正論を言って私をいじめる~。坊ちゃま~、助けてくださいよ~」


 僕は苦笑して、でもハッキリと紗雪さんに告げた。


「玖音さんが正しいと思いますよ」

「……そういえばこの人たち、優等生グループだったんだった」


 玖音さんも改めて苦笑して、僕に教えてくれる。


「紗雪さんはああ言ってますけど、普段はいつも真面目ですよ。積極的に動き回って細やかな気配りで私たちを助けてくれていますし、お手伝いさんの中で立場が悪いというようなこともありません」


 僕もそれにすぐに答える。


「僕もそう思っていましたよ。玖音さんが電話をかければ三十分以内に必ず来てくれてましたし、僕への対応もすごく丁寧でした。出来るお手伝いさんだとずっと感じていました」

「ぼ、坊ちゃままで、何を言い出すんですか~」

「今では僕を認めてくれたのか、出会った頃とはまるで別人のように接していただいてもらってますけどね。それでも優秀なお手伝いさんという認識は変わっていませんし、親しく話してもらえてありがたいと思ってます」

「……やっぱり坊ちゃまの周りに、女性が集まるのも納得ですね」

「えっ?」


 そこで紗雪さんは、照れ隠しなのか玖音さんの肩を抱いた。


「も~、二人してからかわないでくださいよ~。それに、そんなに頑張りを認めてくださってるのなら、ボーナスくれても良かったじゃないですか~」


 玖音さんは驚いた様子だったけど、紗雪さんのその言葉にやがて笑みをこぼした。


「ふふ。そうそうお兄さん、紗雪さんってお休みをあげても私の部屋に来たりするんですよ? 今日はお嬢様の部屋で休むんだ~とか言って。お給料が入ってもボーナスをもらってもそんな感じなんです」

「うっ……」


 紗雪さんが玖音さんの肩を抱いたまま固まり、玖音さんは枕を置いて、そんな紗雪さんの腕に手を当てた。


「私がゲームしている後ろで私の髪をいじってみたり、部屋でのんびり本とかスマホを見ていたり。だからお金はほとんど使ってなくて余っていると思いますよ。ボーナスに執心してるなんて演技でしたね。すっかりと騙されてしまいました」

「じ、実は借金があってどうしても返さなくてはならないんです~!」


 苦し紛れとしか思えない紗雪さんの言葉に、玖音さんは優しく微笑む。


「では足りないかもしれませんが、私の全財産も返済に当ててください。それでも足りなければ、一緒にお父様に頭を下げに行きましょう」

「うぐ……、すみません、嘘をついてしまいました。借金なんてありません」


 肩を落とすように謝る紗雪さん。

 玖音さんは再び笑った。


「お金はほとんどが貯金で、最近は余った額を投資をしているという話でしたよね? 紗雪さん、その調子はいかがですか?」

「あ~、私こう見えて慎重派なので……。堅実なところに入れて地味に増やしてます」

「知ってました。でも、順調そうで良かったです」

「ありがとうございます……」


 いつもと違って、玖音さん主導で会話が進んでいく。

 そして玖音さんは、まだまだその手綱を離すつもりはないみたい。


「あ、それにですねお兄さん、紗雪さんも私と同じ学校の卒業生なのですよ? 紗雪さんのセーラー服も見てみますか?」

「お嬢様!?」

「今写真を送りますね。それに、実物を着てもらうことも出来ますよ。ね、紗雪さん?」

「じ、実物ですか? いや~、どうでしょう~? 部屋にあるにはあるのですが、さすがにそろそろ入らなくなっているような……」

「では試してもらいましょうか。大丈夫ですよ紗雪さん、その時はとっても恥ずかしいですけど、私も着替えますから。仲間外れにはしませんよ。一緒にお兄さんに見てもらいましょう」

「い、今からの話ですか? というかお嬢様~、なんだか別人みたいな性格になってますよ~。少し落ち着きましょうよ~」

「ふふふ。私も自分で不思議に思っています。ですが、今なら紗雪さんと並んでお兄さんに見てもらうのもいいかなって思えてしまっています」


 夜の自室でのお喋りが気分を高揚させたのか、玖音さんが紗雪さんを圧倒していく。

 直後スマホに紗雪さんの写真と思わしき、データが届いた。


 僕は少し迷ったけど、見ないのも失礼かなと思ってそれを開く。


 それはやはり紗雪さんの写真で、校門前で元気にピースサインをするセーラー服の彼女が写っていた。


「うわー、坊ちゃま見ちゃいました? 結構恥ずかしいものですね。しかし、これは私からもお嬢様の恥ずかしい写真を送らねばなりませんね~」

「あら紗雪さん、本当に今から着替える覚悟が出来たのですか?」

「と思いましたが! 坊ちゃますみません。お嬢様の恥ずかしい写真はまた今度にしますね」


 やっぱり深夜テンションなのだろうか。今も会話は活発に進んでいく。深夜と言うにはまだ早い時間だけどね。


 でも、そこで玖音さんが少し暗い表情を見せてきた。

 彼女は僕に恐る恐る尋ねてくる。


「あの、お兄さん、紗雪さんのセーラー姿、ずっと見ていませんか?」


 たしかに玖音さんの言う通り、僕は紗雪さんの写真を表示させたままにしていた。

 僕は苦笑すると、それを終了して言った。


「あ、いや、不思議だなーって思っていたんです」

「不思議、ですか?」

「はい」


 僕は今感じていた考えを、彼女たちに話し始める。


「ご存知の通り僕の家はあの学校の近くにありますから、ひょっとしたらいつの間にか、僕は紗雪さんとすれ違っていたのかな~、とか」

「ああ……」


 玖音さんは少し悲しそうにそう答え、反対に紗雪さんは楽しそうに僕に迫る。


「若い頃のピチピチした紗雪に会いたかったですか? 当時の私に会って、しかも坊ちゃまと呼ばれる妄想をしてみたとか?」


 僕は苦笑して紗雪さんに返事をする。

 普段の僕なら取り乱していた発言だったかもしれないけど、その時の僕が考えていたのはもう少し壮大なものだった。


「今でも紗雪さんは十分若くてお綺麗ですよ。でも、僕が考えていたのは少し別のことで――」


 そこで女性陣二人が息を呑んだのがわかったけど、その後すぐに彼女たちは僕の話に引き込まれていったのもわかった。


「僕が考えていたのはあの学校の縁のことでして。そもそも僕があそこに住んでいるのは、元々母があの学校に通っていたからなんですよね」


 僕は一つ息を吐くと、本当は控えるべきかもしれない話題を彼女たちに話す。


「ひかりちゃんが隠していないので話してしまいますが……。ひかりちゃんの亡くなられたお母さんもあの学校の卒業生なんです。だからひかりちゃんも僕の家に来るまでは、わざわざ遠くからあの学校に通っていたみたいですね」

「あ、わ、私もひかりさんから聞いたことがあります」


 そう言う玖音さんに、僕は頷きを返す。


「母も言っていました。あの学校はいい学校で、何代にも渡って通ってきてる子も多いって」


 僕のその言葉に、紗雪さんと玖音さんが続けて話し始める。


「なるほど~。そういう縁ですか~。それなら私もそうですね~。お嬢様の家に就職できたのは、あそこの卒業生って理由が第一条件でしたから」

「あの学校に通う私のために、母が紗雪さんのことを探してきてくれたんですよね」


 それは僕も薄々考えていた。

 紗雪さんは優秀な人だけど、その上で、あの学校の卒業生だったのが決め手になったんじゃないかって。

 実際にはもっとすごい、卒業生の中から優秀な人を探してきたパターンだったみたいだけど。


「ふーむ、坊ちゃまは男の子なのに、あの女学院に縁のある人だったんですねぇ」

「そうなりますね」


 縁というものは不思議だな。そう考えていたら、ついついボーッと考えてこんでしまったんだよね。


 しかしそこで紗雪さん、また話を僕が困る方向へ引き戻しちゃった。


「でもお嬢様、良かったですね。坊ちゃまが私のセーラー服に悩殺されていたわけじゃなくて」

「も、もう紗雪さん、そういう言葉は使わないでください」

「でも、ホッとしましたよね?」

「それは……。って、騙されませんよ。だいたい紗雪さんも、お兄さんがお気に召していたらどうするつもりだったのですか? 今から着て来て、見てもらうのですか?」

「む、むむむ……。わ、わかりました! では今から着てきましょう! 女紗雪、やる時はやるんです!」

「ほ、本当ですか?」

「もちろんお嬢様も着替えてくれるのですよね? 並んでお兄さんに写真を撮ってもらいましょうか?」

「あわわわわ……」


 さっきとは攻守が逆転して話が進んでいく。

 でもこれって、僕も少しは恥ずかしいだろうけど、絶対玖音さんと紗雪さんのほうがもっと恥ずかしいと思うけどなあ。止めたほうがいいんじゃないかなあ。


 でもそこで僕は、言っておきたい言葉を思い出した。

 それで話題が変わってくれないかなあと思いつつ、彼女らにその言葉をかける。


「でも、お二人今も仲が良さそうで本当に良かったです。昼間の僕は気が気ではありませんでした。二人とも結構えげつないやり取りをしていたので……」


 そこで玖音さんと紗雪さん、無言になって視線を合わせる。

 僕はハッとなった。これではせっかく忘れていた話を、僕のせいで蒸し返してしまったかもしれない。


 しかしやがて二人は、ほぼ同時に口元を緩めた。


 そして二人は僕に向き直る。

 しかし出てきた言葉は、てんでバラバラの言葉だった。


「私とお嬢様の仲ですし」

「数年は覚えておきます」


 僕と紗雪さんの顔色が変わり、恨み節を言った玖音さんへと視線が集中する。


「お、お嬢様? ここは仲良く水に流そうという流れでは?」

「く、玖音さん、僕もとても反省していますし、紗雪さんもきっと反省していると思いますから……、どうか許してあげてください」


 でも玖音さんは僕たちの問い詰めに、笑ったまま明るく答えた。


「もしかすると一生忘れないかもしれません。だって私、紗雪さんとあんなふうにケンカしたのは初めてですから。ケンカだと思っていたのは私だけだったみたいですけど」


 そう言って玖音さんは、僕のほうを向いたまま紗雪さんの手を握った。

 そして紗雪さんの目が潤む。


「お嬢様~! 私が悪かったです。私が調子に乗りすぎました~!」

「いいんですよ紗雪さん。今となっては笑い話です」

「ダメですお嬢様、私をもっと叱ってください~。私にも忘れられない罰を、この歳でセーラー服を着るという罰を与えてください~」


 玖音さんに泣きつく紗雪さん。

 玖音さんは困った表情で紗雪さんをあやしていたけど、すぐに違和感に気付いたみたい。


「……紗雪さん、演技は止めてください。さっきまで乗り気で着ようとしてたじゃないですか」


 紗雪さんもケロッと顔を上げる。

 その時には、涙の予兆はまったく見えなくなっていた。


「あはは、バレてしまいましたか。では一緒に着替えに行きましょう」

「ちょ、ちょっと紗雪さん、その変わり身はどうかと思いますよ。というか押さないでください。まだ着替えるとは言ってませんっ」


 しかし今度は紗雪さんが、とてもいい笑顔で玖音さんの目を見つめながら、言ったんだ。


「私もお嬢様と思い出に残ることをしたいんです。一緒に着てくださいよ~。現役女子高生なんでしょ~?」


 その言葉は、玖音さんの胸に響いたようだった。

 仕方ないなと言った様子で、でも、嬉しそうに頷く玖音さん。


「わかりました。そもそも私が言い出したことですしね。一緒にお兄さんに見てもらいましょう」

「ありがとうございますお嬢様。やっぱり私、お嬢様に仕えることができて最高に良かったです」

「も、もう。調子がいいのですから」

「おべっかなんかじゃないですよ~。あ、坊ちゃま、少々お待ちくださいね。すぐに着替えてまいりますので~」


 そう言って部屋から出ていく玖音さんと紗雪さん。

 僕はそんな二人を見ながら考えていた。


 昼間の影響があるかないかはわからないけど、あの二人ならきっと大丈夫だと。

 それに……、紗雪さんが零しかけた涙も、きっと本物だろうと。





 やがて隣の部屋から話し声が聞こえてくる。

 僕は離れていたんだけど、(ふすま)で仕切られただけの日本家屋は音が聞こえちゃうんだよね。あの二人も気にしてないし。玖音さんは忘れててるだけかな。


「あ、お嬢様、私スカート短いので今日はお嬢様も短くお願いします」

「む、無理です。無茶言わないでください」

「合わせてくれるんでしょ~? それに、今日お兄さんを私に取られるかもと思った時、どう思いました~?」

「…………」

「少しはアピールしたほうがいいんじゃないですか? 大丈夫、はしたなくはしませんよ」

「……やります!」


 やっぱりこれって、深夜テンションだよね。



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