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ゆるふわ義妹にゲームを教えたら、僕の世界が一変した件  作者: 卯月緑
ゆるふわ義妹とゲームを遊んでいたら、僕の世界が深まっていく件
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ゲーム仲間


 玖音さんはエアコンの効いた畳の部屋に僕を招き入れてくれた。

 でも、その時紗雪さんはお茶を入れに行っていて、部屋には僕と玖音さんだけの状況になってしまった。


 僕と玖音さんは似ているところがある。

 僕は赤面症の気があって人と話すのが得意じゃないし、特に女の子は大の苦手だ。

 玖音さんも引っ込み思案な性格で、人見知りもするみたいだし、顔を真っ赤にして俯いている姿もよく見かける。


 だから、またまたこれも自然な流れ。

 会話が続かなくなった僕たちは、逃げるように二人であることを始めたんだ。


「うわ、この人たち勉強始めてる。友人の家に来て真っ先に始めるのが勉強って、お嬢様も坊ちゃまも優等生過ぎませんか?」


 戻ってきた紗雪さんが、冷たいお茶をお盆に乗せたまま心底呆れたようにそう言った。

 僕と玖音さんは顔を見合わせて苦笑する。


 玖音さんの家でのお盆休みは、そんな感じで始まったんだ。





「私、まさか本当にお兄さんに来ていただけるとは思っていませんでした」


 紗雪さんも交え、勉強をしながら三人で雑談する。

 話を聞いていくと、今回僕が誘われた背景には、やはりひかりちゃんが関わっていたことがわかった。


 メッセージのやり取りで、玖音さんのスケジュールを知ったひかりちゃん。

 お盆に時間が余っているなら、僕と遊んでみてはどうかと玖音さんに声をかけたみたい。


 でも、玖音さんは恥ずかしくて答えに迷う。

 するとコミュ力お化けのひかりちゃん、他の人にも意見を聞いてみようよとこの話に紗雪さんを引き込んできちゃったみたい。


 後の話はトントン拍子。

 時間が合う時に遊ぶだけだった話は、あっという間に玖音さんのお母さんに話が行き、連日のお泊り会へと発展したみたい。


 まあ、ひかりちゃんと紗雪さんがコンビを組んでいたと聞いた時点で僕は驚かなかったけど。

 なんとなく二人とも、こういうことに関してはブレーキが効かなそうな性格だし。


「ねぇ坊ちゃま、坊ちゃまは事前にもう玖音様の母君にも話を通しちゃったから絶対来るようにと言われるのと、当日いきなり押しかけられて連れ出されるのどっちが良かったですかね?」


 紗雪さんにそう質問される。

 やっぱり僕の運命は、ひかりちゃんと紗雪さんがコンビを組んだ時点で決まっていた気がする。


「それって僕は断れそうにないと思うんですけど、僕が嫌だと言ったらどうするつもりだったんですか?」


 なんとなく悔しかったので、僕は紗雪さんに反撃してみる。

 すると、彼女はすぐにニヤリと笑った。


「あれれ。坊ちゃまは、玖音お嬢様に会いたくないだなんて()っしゃりませんよね?」


 手痛いしっぺ返しを食らってしまった。

 自然と僕と玖音さんの視線が合い、二人とも顔を赤くして俯いてしまう。


 紗雪さんはそんな僕たちを見て、嬉しそうに「く~」と身悶えした。


 あと、紗雪さんのブレーキはやっぱり不調みたい。

 次に彼女は身を乗り出してきて僕の肩をポンポンと叩くと、小声で喋り始めた。


「ほら坊ちゃま、玖音お嬢様は嫌々強引に連れてこられたのではないかと心配してしまいますよ? 何か言ってあげてくださいな」


 紗雪さんはそう言うけど、強引に連れ出されたのは事実だと思うんだけどなあ。

 でも、今の状況が嫌だってわけではないので、それだけはきちんと玖音さんに伝えることにした。


「僕は玖音さんに会えて嬉しいです。これから少しの間ですが、お世話になります」


 恥ずかしかったけどそう伝え、ペコリとお辞儀した。

 玖音さんは黙ったままだったけど、代わりに紗雪さんが「ヒュー」と茶化すように声を上げた。


「いや~、お姉さんもう胸がキュンキュンしちゃってますよ。お嬢様、楽しい毎日になりそうですね!」


 紗雪さんは僕から離れ、今度は玖音さんのほうに近付いていく。

 その玖音さんはとても恥ずかしそうだ。耳まで真っ赤にして俯いている。


 嬉しそうに話す紗雪さんと頬を染めて縮こまる玖音さん。

 そんな二人を見ていると僕もドキドキして落ち着かない。


 何か口を挟むか、勉強に戻るか。

 僕が迷い始めていると、ふと俯いていた玖音さんが上目で僕を見た。


 そして玖音さんは、意を決したように背筋をピンと伸ばす。


「わ、私もお兄さんに会えて嬉しいです。楽しい毎日になればいいなと思っています」


 茹でダコのような顔で、玖音さんはそう言い切った。

 すぐにまた俯いて縮こまっちゃったけど、僕はその一瞬で彼女に圧倒されてしまっていた。


 僕は慌てて視線を彷徨(さまよ)わせる。

 また紗雪さんに茶化されてしまうかなと思ったんだけど、僕が見つけた彼女は、耐えられないといった感じで体を反らし苦しそうに自分の心臓辺りを掴んでいるだけだった。




    ◇




 でも、楽しい毎日になればいいという希望は、問題なく達成できそうだった。

 僕と玖音さんは、同じ趣味を持っている。


「お、玖音さん、右のオーガにクリティカル出ました。間もなくスタン行けそうです」

「了解しましたお兄さん。準備が完了次第、詠唱開始します」

「お願いします」


 勉強を終えて、そのままスマホでゲームを始めた僕たち。


 僕はいつも壁掛けの巨大ディスプレイでゲームを遊んでいるけど、スマホでも空中投影ディスプレイを使えば、それなりの大きさの画面で遊べるんだよね。


「術式開放。ブースト完了。集中(コンセントレーション)……。詠唱開始。――お兄さん、残り八秒ほどで発動します」

「わかりました」


 ひかりちゃんや、その友だちの洋風美少女とゲームするのも楽しいんだけど、玖音さんとのゲームにはその二人では味わえない楽しみ方がある。

 僕はゲームが大好きだし、玖音さんも立派なゲーマーだ。


「――詠唱完了まで残り、三、二、一」

「ここかな。うん、スタン成功」

「お兄さん最高です。参ります! 深紅の大閃光(クリムゾンフレア)!」


 僕が無力化したモンスターに玖音さんの攻撃が決まる。

 無防備な状態で高威力の魔法が直撃したモンスターは、ひとたまりもなく消滅した。


「気持ちいいです……。あ、お兄さん、残りは属性気にしなくてもいいですよね? 雷のエンチャしますね」

「ありがとうございます。玖音さんはさすがですね。属性もバッチリ覚えてますね」

「こ、このくらい、魔法使いなら当然です……」


 説明や打ち合わせをしなくても、ゲームがスムーズに進んでいく。

 その分趣味丸出しの発言をしてもいいし、ゲームのネタならお互いちゃんと通じる。


 玖音さんとゲームをするのは楽しい。

 ゲーマー友だちがこんなに素晴らしいことだなんて、僕も玖音さんも知らなかったよ。


 もちろん、ひかりちゃんたちと遊ぶのも大好きなんだけどね。

 それぞれの良さがあるよね。


「大技なんて使わせませんよ。ただでさえお兄さんには守ってもらっているのですから、私だって……!」


 ちなみに玖音さん、ゲーム――特にファンタジー系のゲームをしているとロールプレイが入ってくる。

 キャラクターになりきって楽しむというか、そういう演技が入ってくる、という感じかな。


 魔法の名前を読み上げちゃったり、「魔法使いなら当然です」とか言っちゃう玖音さん。

 僕も初めて見た時は驚いたけど、ゲームの楽しみ方の一つだと思うし、すぐに慣れちゃった。


 まあ、初めて見たというか、前に玖音さんに頼まれてゲームの通信プレイをしていたら、ついつい玖音さんの口から飛び出てきちゃったんだよね。

 あのときの玖音さんの恥ずかしがりと言ったらすごかったなあ。


 僕はそんな癖があるなら、クラスでもなかなか自分の趣味が打ち明けられないという気持ちもわかるなと思ったんだよね。


「……玖音さん、気付いていますか? さっきのオーガ、オーバーキルボーナスで金箱出してますよ」

「ああっ、言わないでくださいよお兄さん。私もずっと気になっていたのですから」

「すみません。早く片付けちゃって中身を確認しますか」

「はい……!」


 生き生きとした目でゲーム画面を見る玖音さん。

 やっぱりゲームを遊んでいる時はこうでなくっちゃね。





 さっきから紗雪さんはお昼の手伝いに行っているので、部屋は僕と玖音さん二人っきりになっていた。

 でも、ゲームをしているといつものように焦り続けたりはしない。

 僕と玖音さんは(ひかりちゃんの時と比べると全然離れているけど)隣に座ってお互いのゲーム画面を見せ合っていた。


「金箱はレア斧でしたか。私一人だと悲しむところですけど、お兄さんがいてくれたら何が出ても構わないところがいいですよね」


 玖音さんはすでに僕のキャラクター及びプレイスタイルを知っている。

 僕は彼女の言葉に頷くと、言った。


「でも、僕としてはレアをもらう機会が多くなって申し訳なくなるんですけどね」

「私が持っていても使わないですから、お兄さんに有効活用してもらうほうがいいですよ。逆に、杖とかは必ずもらっているので私の方こそ申し訳ないです。お兄さんは魔法職も出来るのに」


 僕はそのゲームタイトルが気に入ると、とことんやり込んじゃうタイプだ。

 しかも満遍なく色々遊ぶから、職業――クラス、あるいはジョブがあるゲームだと、すべての職を極めてしまうことだってある。


 その点玖音さんは職業が存在するゲームだと、いつも後衛職ばかりやっているみたい。


 後衛なのは彼女の持ってるイメージ通りなんだけど、何故か一番大好きなのは炎の魔法使いらしい。

 彼女の見た目と性格は炎って感じはしないんだけどね。好みっていうのは不思議だよね。


「玖音さんもソロプレイをしている以上、敵と至近距離で戦うことだってあるんですよね? 前衛職もやってみてはいかがですか?」

「うーん……、近距離戦が苦手というわけではないのですが……」


 ゲームには色々な楽しみ方があると思う。

 その中の一つに、同じゲームでも違う条件で遊ぶという楽しみ方があると思う。


 それは同じゲームでも、また再び新鮮さを味わえる遊び方だと思う。

 

 例えば敵と戦うゲームなら。

 同じ敵と戦うときでも、常に敵に近寄ろうとする近接武器と、常に敵から距離を取ろうとする遠距離武器だと、その敵に対するイメージもガラリと変わってくる。


 すると敵の新しい弱点が見えてきたり、この敵はこんなところが厄介なんだなと理解できたりもする。

 僕はそういう時に新鮮だなと感じると当時に、またゲームに一つ詳しくなれたと思って嬉しくなるんだよね。


 でも、もちろん玖音さんのような楽しみ方もアリだ。


 先ほどの敵と戦うゲームで例えるなら、一つの武器で戦い続けているとその武器への知識も深まり扱いも上手になっていくだろうし、その武器の敵に対する対応策も増えていくと思う。

 武器に対するこだわりも深まるだろうし、先ほどの玖音さんのようなロールプレイも、より一層面白くなるかもしれない。


「どうです? この機会に前衛職も始めてみては? ちょうどここにレア斧もありますし」


 僕は玖音さんのプレイスタイルを否定するつもりはないけど、彼女が迷っているみたいだったのでもう一度勧めてみた。

 けれども玖音さん、少し迷っていたけど、やがて笑うと僕の勧めを柔らかく断ってきた。


「そうですね、うーん……。でも、やっぱり今回は止めておきます。光る剣とかならもっと迷っていたでしょうけど、斧はやっぱり重そうですし」


 眉をひそめて笑う玖音さんに、僕も笑顔を向けた。


「残念です。でも、玖音さんは何を持って戦っていても素敵だと思いますけど」


 僕としては斧を持った玖音さんも嫌いではないですよと伝えたかったんだけど、それを聞いた玖音さんは微妙そうな表情になってしまった。

 僕はまだまだ女の子の気持ちがわかってないみたいだね。



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