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ゆるふわ義妹にゲームを教えたら、僕の世界が一変した件  作者: 卯月緑
ゆるふわ義妹にゲームを教えたら、僕の世界が一変した件
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彼女に頼まれて、激闘

投稿できていませんでした。

遅れて申し訳ありません。


 ひかりちゃんが寮を蹴って僕の家に留まると決めた次の日。

 彼女が巨大ガエルを倒したゲームに、アップデートがあった。


 アップデートによりゲームの内容が新しく追加される場合、大抵それは『ゲームをクリアしてやることがなくなった人向け』の内容になる場合が多いと思う。

 今回のアップデートもその例から漏れておらず、ゲームを始めたばかりのひかりちゃんには難しい内容となった。


「うわ~ん! こんなの無理だよぉ……!」


 僕は頭を抱えていた。

 先日頑張ってひかりちゃんが倒した巨大ガエル、それが今回追加されたイベントでは、五匹同時に襲いかかってきていた。


 クリアした人向けのアップデートとはいうものの、今回はかなり難易度が高めに設定されているようだ。

 普段オフゲではネットを見ない僕だけど、今回はひかりちゃんがやってるってことで調べてみた。

 すると、ネット上でも阿鼻叫喚(あびきょうかん)が広がっていた。


 最初のカエル五匹なんて序の口に過ぎず、敵は倒せば倒すほど強くなっていくとのこと。

 最後には、炎と氷と雷の三匹のドラゴンを同時に相手することになって、しかもある程度ダメージを与えると、光と闇のドラゴンまで乱入してくるという鬼畜仕様らしい。


「これは……、また今度にした方がいいかもね?」

「う~!」


 どうして僕は、ひかりちゃんに涙目で威嚇されているんだろう。


「こ、このゲームのボスはね、ただ攻撃するだけでも倒せるけど、頭を使って楽に倒す方法もあるんだよ」


 僕は少しでもゲームの魅力を伝えようと、ひかりちゃんに説明を始めた。


「ちょっとコントローラー借りるね?」

「うん」

「それでね、たとえばこのカエル、跳び上がったら自分のいた場所に落ちてくるでしょ? それを逆手に取って、逃げる前に爆弾を置いておくんだよ。こんな感じで……」


 自分のいた場所にカエルが跳んでくるとわかっているから、爆弾を置いてから逃げる。

 するとカエルは、プレイヤーがいなくなって爆弾だけが置かれている場所に降ってくるから……。


「ドカン。ほらね、簡単に大ダメージが入るでしょ?」

「お~……」


 ひかりちゃんが感心してくれるので、僕はちょっと得意になってプレイを続ける。


「だから、これを応用すると、さっきのカエル五匹も……」


 僕はぐるぐる逃げ回って、カエル五匹を上手く誘導する。

 そうしてタイミングを見計らい、ここぞというときに爆弾を大量に設置し始めた。


 一斉にプレイヤーに――なおも爆弾を置き続ける僕に襲いかかってくる五匹のカエル。

 僕は冷静に爆弾を設置し続け、カエルが降ってくる直前ですばやく回避した。


「わぁ~」


 ド派手に爆発が起こり、見事にカエルは一網打尽(いちもうだじん)

 でも、まだひかりちゃんのキャラクターはゲームを開始して間もない。一度に殲滅するには少し火力が足りなかったようだ。


 しかし僕は焦ることなく、堂々と残ったカエルの前まで歩いていく。


「あとね、このカエルは舌が弱点なんだ。それに、舌を伸ばして攻撃をしてくる際には舌舐めずりをして予兆まで知らせてくれるから――」


 カエルの攻撃に、ジャストでこちらの斬撃を叩き込む僕。

 巨大ガエルは痛がって怯む。僕はそれを見越して、すでに斬撃から溜め攻撃へと移行している。


「ズバッと。……はい、おしまい。こんな感じで、このゲームは色んな倒し方があるんだよね」


 僕がそう言うと、ひかりちゃんはキラキラした目でこちらを見つめてきた。


「すごいすごい、お兄ちゃんかっこいい!」


 照れくさくなって頭を()く僕。

 でも次の瞬間、僕はその格好のまま凍り付くことになっちゃった。


「その調子で、ひかりに最後までやって見せて!」


 僕は愕然(がくぜん)としてしまった。

 調子に乗った(むく)いなのか、兄として、ゲーマーとしての威信を賭けた戦いが始まっちゃったんだ。




   ◇




 繰り返しになるけど、今回追加されたイベントはクリアした人向けの高難易度ミッション。

 そして、ひかりちゃんのキャラクターはまだまだ育成が進んでない序盤のキャラクター。


 いくらゲームに慣れていても、キャラクター性能の低さは厳しいものがあった。

 それでも僕は、なんとか持てる知識と技術を駆使して敵を討伐し続けていた。


「おぉ~、お兄ちゃんかっこいい! ドンドン進んでいくね!」


 いつの間にか隣にピッタリとくっついて来て、僕を応援する絶世の美少女。

 世の男子なら誰もが羨むような状況だったけど、残念ながら僕にはそれを楽しむ余裕がなくなってきていた。


「で、でもねひかりちゃん、そろそろ僕も限界だよ。もう少ししかダメージが通らなくなってきちゃった。爆弾とロングソード一本じゃもう無理だよ」


 この重圧から逃れたくて、僕は失敗したときの予防線を張っていく。

 けれどもひかりちゃんは、僕に絶大の信頼を寄せてくれているみたい。


「だいじょうぶ! お兄ちゃんなら出来るよ!」


 間近から無垢な瞳で僕を見つめるひかりちゃん。

 プレッシャーから胃が痛くなってきちゃった。もし失敗したら、彼女はどんな反応をするのかなあ……。


「あ、あんまり期待しないでね?」


 僕はそう言いながら、画面上の次のステージを見た。

 なんだか薄暗いステージだった。奥に廃墟のようなものも見える。朽ち果てた屋敷で、まるでおばけでも出てきそうな……。


「うわ……、このステージは……」


 僕は疲れた声を出した。

 それは、戦う前から苦戦が予想されるステージ。恐らく出てくるのは、霊体(ゴースト)だ。


「なんか、白い幽霊がいっぱい出てきたよ?」


 予想通り登場する霊体(ゴースト)たちを見て、ひかりちゃんが普段どおりの声でそう言った。

 彼女はゲームに詳しくないから事の深刻さに気付いていないみたいだけど、ほとんどのゲームにおいて、霊体(ゴースト)は物理攻撃に耐性があるんだよね。


 もちろんこのゲームでもそれは例外じゃない。

 爆弾の攻撃も爆発属性で効きにくいし、ひかりちゃんが持ってる剣はただのロングソードだ。


「(せめて火の初期魔法でも覚えていればなあ……)」


 僕はこっそりとため息をつきながら、アイテム欄から暗闇を照らすための松明(たいまつ)を取り出してきた。

 このゲームの松明は、微弱ながらも炎属性の攻撃力を持つ。


「(まさか久しぶりに松明プレイをすることになるとはね……!)」


 僕は詠唱を始めた霊体(ゴースト)から優先的に、突撃を仕掛けていった。




   ◇




 極度の緊張とプレッシャーにさらされ続けていた僕は、気が付けば頭の中で変な脳内物質を分泌し始めていたみたい。

 胃痛の原因だったはずのひかりちゃんの声援が、いつの間にか純粋に僕の力になっていた。


「わぁ! ギリギリだったね~! ひかり、ドキドキした~!」


 嬉しそうに僕に抱きついてくるひかりちゃん。

 僕はとっくに感覚が麻痺し始めていて、そんなひかりちゃんに笑顔で応えていた。……疲労から青ざめた笑顔ではあったけど。


 目の前で崩れ落ちる巨大騎士。

 僕は今日一日で、新たな世界に踏み出せたと思う。


 すでにひかりちゃんのキャラクターでは、かすりヒットだけで瀕死になるような状況だった。直撃すれば、一発ダウンが確定してしまう。

 敵に与えられるダメージもわずかなものになり、僕はひたすら精密な操作を繰り返し繰り返し行うことを強制されていた。


 でも、そんな時間にも終わりが見えていた。ゲーム画面に表示される、ファイナルステージの文字。

 いよいよ炎、氷、雷の三属性ドラゴンと最終戦の始まりだった。終盤には、光と闇のドラゴンも参戦してくるらしい。


 僕は大きく息を吐くと最後のステージを開始させた。

 ところが――。


「わ、最後は強そうなドラゴンが五匹もいるんだね~」

「……え?」


 僕は素の驚きの声を上げていた。

 事前に調べた情報では、最初は三種のドラゴンがいて、その後で二種のドラゴンが追加されるはずだったのに。


 それが、いきなり最初から五種類のドラゴンが勢揃いしていた。

 ネット上の情報が間違っていたとは考えにくい。大勢のプレイヤーが、その戦いの感想を書き込んでいたんだ。終盤にいきなり襲いかかってくる光と闇のドラゴンがきつい、等々。


 つまり、これは、恐らく――。


「(なんかフラグを立てちゃって、隠しステージに来ちゃったんだ!)」


 普段の僕なら小躍りして喜ぶような瞬間だったけど、ひかりちゃんのキャラクターを操作している今の僕には絶望の一文字しかなかった。 

 ただでさえ一発食らえばおしまいの状況なのに、三匹同時どころか五匹まとめて相手しなくちゃならないなんて。


 なんだか緊張の糸が切れちゃったような気がした。

 ここまで来れただけでも十分だよね、という気分になってくる。


 けど、そんな僕に、ひかりちゃんは笑って言ったんだ。


「頑張って、お兄ちゃん」


 折れかけていた心に、再び火が付いたような気がした。

 コントローラーを持つ手にも、ゆっくりと力がみなぎってくる。


「……期待しないでね?」


 僕は、今日一番の自然な笑顔で返事が出来たと思う。

 任せろとは言えなかったけど、それも僕らしいよね。


 僕は真剣に画面を見つめた。

 大丈夫。ドラゴンは何度も倒してきた。その動きは、全部頭に入っている。



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