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魔力の塊

 四大陸の上空に魔力の塊が出現。日差しを遮られ地上は暗くなる。次第に魔力の塊から雨のように何かが降ってきた。

 人とは呼べず、かといって獣と呼ぶには歪。灰色のオーラを纏ったそれは、ゆっくりと人々に近付く。


「「「「「うわああああ!!」」」」」


 口のようなものを開き、そのまま飲み込んでいく。もうそれは化け物としか形容できない。


 魔法や魔術を使えても、使うべきときに使えなければ意味がない。身を守ることの難しさを痛感する間もなくやられていくだけ。


 だが全員がそうではない。ある程度の戦いの経験があれば対処できる。化け物とはいえ実体があるのだから、剣の腕が立つ者ならば戦える。


「いきなり襲ってくるとは。瞬きすら許されないなんて厄介だ」


「面倒な連中だ。オラたちだけで終わらせられる数じゃねえぞ」


 元・近衛騎士のカザトと近衛騎士団長のクーゴが背中を預けあい立ち向かっている。すでにクーゴは雷速拳を連発していた。


「最初から飛ばしすぎだ。ペース配分を考えて戦え」


 カザトは風の斬撃を化け物に当てていく。風の斬撃に当たった化け物は、見るも無残に斬られるだけ。

 しかし数は一向に減らない。魔力の塊から次々と降ってくるからだ。


「ちっ、俺たちがバテる方が先だな」


「大陸全土に降ってやがるな。オラたちだけでどうこうできねえぞ」


「魔法や魔術を戦闘に使ったことのある人たちばかりじゃない。ましてや相手は化け物だ。悔しいが現実だ」


 二人は奥歯を噛み締める。せめて目の前の人たちだけでも守るため戦っていく。


* * *


「早く逃げろ! 止まれば終わりだ!」


 水の大陸ではムロが武装石を発動、右腕に巨大な剣を装備して戦っていた。

 そして彼は独りではない。


「アッシらを相手になんて奴らなの。いくら倒しても減らないし」


 ナティが異空間に化け物を閉じ込めていくが、化け物の数は減らない。


「あんまり連発すんなよ。魔力切れ起こしたら元も子もないからな」


「わかってるし。わかってるけど、けどやっぱり焦っちゃうし」


「オレたちで守れるもんなんか少ないんだ。数少ない守れるもんのために戦おう」


「……うん!」


 二人は見つめ合い気持ちを落ち着ける。独りではないことを再認識したことで体の重みは不思議と消えていた。


* * *


 化け物は山奥であろと関係なく現れる。

 ガントはご機嫌斜め。ただでさえキツい目が吊り上っていた。


「おいおいおいおい。こちとら疲れてるんだ。せっかくの睡眠を邪魔しやがってこんにゃろ」


 右足を鳴らして化け物の動きを止める。金縛りは彼の十八番。朝飯前である。


「あれが元凶か」


 魔力の塊に視線を移したガントは髪を掻く。


「やれやれ。自然発生したとは思えない。どこの誰がやったんだか知らんが、とんだ迷惑だってんだ」


 ガントは腕を組んで思考する。策を練っているというよりは、どう終わらせようかと考えているよう。


「しゃーない、久しぶりに本気出すか。起きろ、冷獣王。大暴れさせてやる」


 ガントは自分の胸に手を当て呼びかける。

 ドクドクと心臓の鼓動が高鳴り、ガントの瞳が金色に変わる。どこからか現れた金色の毛皮を纏い、ふっと息を吐く。


 ガントが生まれた瞬間から、彼の体内で共に生きている獣。このことは本人以外知らない。いつしか両者は協力して苦難を乗り越えるようになった。


「魔力の塊とは面白い。この冷獣王の胸を高鳴らせるほどのものか試してやろう」


 ガントの声だがガントではない。

 紫色のリストバンドを金色に染め、両腕に金色のガントレットを装備。

 躊躇なく魔力の塊へと跳躍する。金色の毛皮によって空を飛ぶことが可能になっている。


「どうしてやろうか。こんなものを片づけるのに手間をかけたくはないな」


 掌と掌から生じる高魔力。地上に放てば最悪の事態が起きるほど危険なものだ。


「冷獣王を落胆させることは許さんぞ。冷獣咆!」


 激しい魔力と魔力のぶつかりが空を震えさせていく。


* * *


「い、いったい……何が起きている!?」


 オーマは頭を抱えていた。魔力の塊が傷付いていることに気付いたからだ。


「おまっさんの考えが甘かったようだな。そう簡単に世界をどうこうできぬということだ」


「悪足掻きに決まっている。儂に敵うものなど存在感しないのだ。今に化け物の脅威に潰されるだろう」


 オーマは焦りを振り払う。それを可能にしているのは、絶対の強さ。


「……おまっさんの好きにさせると思うか。魔力の塊だろうと化け物だろうと、灰のように吹き飛ばしてみせるぞ」


「やれるものならやってみせろ。もう誰にも止められはせん!」


 土の大陸の上空に浮かぶ塊からも化け物が降ってくる。色を取り戻しても地獄は続く。

 化け物を見て逃げ惑う人々。色を失っても取り戻しても、その先に自由はなかった――わけではないようだ。


「――!?」


 オーマは目を丸くした。するしかなかった。

 土の大陸の上空に浮かんでいた魔力の塊が、まるで幻だったかのように消えてしまったのである。同時に化け物も消滅。


「おまっさんは……!」


 突然現れた人物を見てマオルも目を丸くした。

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