表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/85

グレン参戦

 ジャンジャラは本日も晴天なり。

 まさか、塔の中で激しい戦いが繰り広げられていたとは誰も思うまい。というより思うはずもない。


「こいつは……どうなってるんだ?」


 戦いの疲れで倒れていたマオルが目を開けると、そこにあったはずの塔がなくなっていたのである。

 隣にいるミルフィライトは眠ったまま。マオルの脳裏にミルフィキャットの言葉が浮かんだ。


「なんだったっけ? ……灰色……だったか? 最後まで言い終わらずに死んでしまいおって」


 頭を掻きながら途方に暮れていると、ゆっくりと誰かが近付いてくるのを瞬時に感じ身構える。


「なんだいなんだい。こんなところで眠るとは勇敢な奴だ。狙われても知らないぜ」


「なんだ、おまっさんか。警戒して損をした」


 近付いてきたのが薄紅色の髪にカチューシャをした男性だとわかり、マオルは警戒を解く。


「警戒に損はないと思うぜ。それよりも何かあったのか? ずいぶんボロボロと見受ける」


 薄紅色の髪の男性が心配そうに見てくるため、マオルはざっくりと起きたことを話した。


「――ということがあってだな。灰色の何かを見つけないといけなくてな」


「うーん? こんなところに塔なんてあったか?」


「気になるところがそこか!? しかもあんなに目立つ塔を忘れるとかないだろう」


「そう言われてもなぁ。オレ、あんまり景色とか気にしないから。あはは」


「まあいい。ミルフィライトの眠りを覚ますことに比べれば他愛もないことだ。心配してくれたことには感謝しよう」


 眠ったままのミルフィライトをおぶさるマオルだったが、体がふらついて思うように立てない。


「いやいや無理だろそれ。遠慮せず頼れよな」


「えっ!?」


 マオルの背中からミルフィライトを引き離すと、薄紅色の髪の男性が背中に寝かせてみせた。


「どこまで運べばいい? 世界の果てまで付き合うぜ」


「どうして儂たちにそうまでしようとする? 何か企んでおるのならやめておけ。見かけによらず儂は強い」


「事情を知ってる人間が一緒にいる方が色々と都合がいいだろう。オレを疑うのは勝手だが難しく考えなくていいぜ。人探しのついでだ」


「物好きな。後悔しても知らんぞ」


「心配ご無用。後悔する頃には死んでるからよ。おっと、まだ名乗ってなかったぜ。オレは、グレンってもんだ。よろしく」


 グレンが右手を差し出す。手には剣を振ってできたいくつもの肉刺まめがあり、ただのお人好しではないことを表していた。


「おまっさんは、不老不死と行動して後悔するタイプじゃなさそうだ。改めて名乗ろう、マオルだ」


 マオルとグレンは握手を交わす。

 これまで何度も握手を交わしてきたマオルだが、どういうわけか不思議な感覚に襲われる。決して嫌な感覚ではない。


 とりあえず腰を落ち着かせるべくホテルに向かったマオルとグレンは、ミルフィライトをベッドに寝かせてから食堂に向かう。


「灰色だけでは手がかりが少なすぎる。もっと何か手がかりがほしい」


「人間なのか動物なのか。そもそも生き物なのかもわからないんだろう。もしかしたら木片かもしれないぜ」


「木片を煎じて飲む、が正解ならば苦労せん。おまっさんの兄弟子の行方も掴まなければならんしな」


「オレのことは気にしないでいい。一刻を争うのはそっちの方だ。不老不死でも栄養失調は体に毒だろう」


 ちなみに二人が食べているのはフィッシュ&チップス。皿に盛られたチップスは綺麗になくなっていくが、フィッシュは寂しく残っている。


「魚を残すとはどういうことだ。若者が好き嫌いをしてはダメじゃないか」


「やだなあマーオ。オレが好き嫌いをするように見えるか? 人を見かけで判断しちゃダメだぜ」


 とか言いつつマオルの皿にフィッシュを移すグレン。空になった皿を前にして手を合わせた。


「きったないぞ。若者が食べなくてどうするか」


「誰が証明するのだろうなぁ。オレが魚を残してマーオの皿に移した、なんてさ」


「ぐぬぬ。こうなれば完食してやろうではないか。魚は体にいいぞ。食べられる骨は食べた方がいいぞ」


 ナイフとフォークに怒りを込めてフィッシュを切り刺し食す。チップスを食べたかっただけなのに。

 若い体のままなのが幸いして胃もたれを起こしたことはなかったが、しばらく揚げ物はけっこうだと思うマオル。


 その後、塔があったところにもう一度行ってみるが、やはり塔はなく、その痕跡すらない。

 マオルは首を傾げ考えてみたものの、答えは出ないと頭を振り諦めた。


「塔の有無は諦めてやろう。だが灰色に関してはそうはいかんぞ。絶対に手がかりを掴んでみせる」


 気合いを入れるべく空に向かって拳を突き上げてみたマオル。しかしながら照れ臭くなり、誰も見てないことを強く願う。そういうところは何年経とうと男の子なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ