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年下と年上

 ムロからリストバンドを返してもらったガントは首を傾げる。自分の話を聞いて納得したように見えないからだ。


「どういうつもり? 赤毛」


「赤毛じゃねぇって言っただろう、ったく。てめぇの話を全て信じたわけじゃねえが、この状況で嘘を吐くほど馬鹿とも思えねぇ。オレにとって今のてめぇは第三勢力だ」


「なんだっていいけど、早く俺をここから出してくれ。時間が惜しい」


「そんなに一大事なわけ?」


「抹殺師の次の狙いはアノンの消滅。次から次に国を吸収していくやり方が気に入らないから潰すんだと」


「ずいぶんと大きく出たなぁ。日陰もんが表に堂々と出るとは」


「抹殺師は何十年も前から暗躍している。抹殺師を作った奴は世界を変えたかったらしい。誰にもわからないくらいの小さな変化が、次第に大きな変化を生むことを望んでいたんだと。それが今も受け継がれているんだ」


「変革者にでもなったつもりかよ。思考が子どもじゃねぇか。“あいつ気に入らねぇから殺す”ってか」


「抹殺師がアノンの消滅を実行する前に動かなきゃならない。だけど圧倒的に戦力が足りない。なにせ俺一人だからな」


「それでどうしてもオレの武装石をってわけねぇ。だが悪い。オレの武装石はオレ以外には使えねぇ」


 ガントは、ムロの言葉を聞いて俯く。それほどまでに武装石に希望を持っていたのだろう。


「ムロ。こうなったらアッシたちが力を貸したらいいんじゃない? アッシが言えることじゃないのは重々わかっているけど、大勢の命が奪われるのを阻止したい」


「……しょうがない。お前に言われたら反対できないじゃないか。アノンに貸しを作るのも悪くないしさ」


「いいのか!?」


「抹殺師の動向を探っていたのは確かだしな。一気に潰せる機会を逃すわけにはいかない。いっちょ乗ってやる、チビ助」


「チビ助じゃない、ガントだ!」


「へっへー。これでおあいこだ」


 ムロがガントに握手を求める。

 ガントは差し出された手を見つめて考えた後、覚悟を決めて握手に応じた。この二人に頼ったのは正解なのだと自分に言い聞かせる。


 異空間から出た後、ムロはガントを鍛えようと思い始める。ガントが十四歳だとわかり、彼に足りないものを補いたくなったのだ。


「ガント、本当に一人で行動してきたのか?」


「そこに嘘偽りはない。俺みたいな子どもが一人なのはおかしいか」


「おかしくはないけど釈然としなくてよ。オレとナティの二人掛かりだったとはいえ、あんなあっけなく倒されたんでなぁ」


「油断しただけだ」


「ほーん、油断しただけぇ? あれがお前の全力なんだろう?」


 ムロはわざと挑発してみせる。怒りは最大の起爆剤になるからだ。

 狙い通りガントは目の色を変えて悔しがる。ムロの言うことに反論できない。あれが自分の全力だったのは間違いじゃない。


「こ、これだから年上は」


「それも気になってたんだ。年上に嫌なことでもあるのか」


「けっ! 思い出すだけで反吐が出る。あいつ以上の奴を知らない自分にも腹が立つ」


「いったい誰のことだ?」


「あんたらには関係ない。それよりも、よくも俺のことを貶してくれたな。当たってるだけにムカつく!」


 やっぱりそこは十四歳。なによりも若さが勝る。どんなに痛い目に遭おうとも、納得できるまで喰らいつく。


「そうだそうだ、若い奴はそうじゃなきゃ! それなら鍛え甲斐があるってもんだ」


「えっ?」


「俺がお前を鍛えてやるって言ってるんだ。悠長に話す時間も惜しいんだろう? そうと決まればさっさと始めるぜ」


「ちょっと待ってくれ!? 俺は同意してない!」


「問答無用だ。ナティ、異空間に頼む」


「はぁ〜。出た意味ないし、時間ないし。どうして勢いで決めて始めるわけ」


 ナティは呆れるしかなかった。ついさっきまで殺気の飛ばし合いをしていたのに、完全にそんなことがなかったようになっている。なにより自分がムロの蚊帳の外になっていることが気に入らない。


「ナティ、早くしてくれ」


「もう! ムロの人たらし!」


 頰を膨らませて不満をアピールしながら魔術を発動させるナティ。ガントからムロを取り戻すため、特訓に付き合うのだった。


* * *


 木剣と木剣がぶつかり合う音が聞こえる。

 剣の稽古を再開したシロは、あっという間に体の動きを戻す。

 カザトは、成長眩しいシロを素直に認め喜んでいた。剣の腕で越されることはないと思っていた弟子が脅威になっているのは、自分の教えが間違っていなかったのだと自信に繋がっている。


「体力が増えてきたなぁ。息がさほど上がっていないぞ」


「立て続けてピンチに見舞われたんだ。稽古で疲れてたまるか。王子としての貫禄も増えたよ」


「それはどうだかなぁ。あまり変わっていないと思うぞ」


「そうやって俺の成長を認めないのは如何なものかねぇ、カザト兄ちゃん」


「ここで認めて成長が止まっても困る。お前はもっともっと成長するし、王子としての貫禄も増すだろう」


 口では認めていないカザトだが、心の中ではちゃんと王子としての成長も認めている。簡単に認めないのは、本当にさらなる成長をすると信じているからだ。

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