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武装石、発動

 シルフにどうにか異空間に行けないのか聞くシロであったが、シルフだけでは無理との回答に落ち込む。

 魔術によって行くことは可能だと教えられるものの、そんな魔術は持っていない。どう考えても不可能だということに行き着いてしまう。


「こうしている間にもフィリウスが……!」


 魔法も魔術も碌に使えないことが悔しくてたまらないことは何度もあったが、今回ほど悔しいことはなかった。なんだかんだ行なっている剣術は役に立たない。奥歯を噛み締めていることしかできない自分に対し、はらわたが煮えくり返るばかり。


「どうしたんだ? 今にも壊れちゃいそうな顔して」


「ムロ……さん!?」


「そんなに驚かれても困るんだけど。カザトと絶賛見回り中なんだ。そんなところに王子がいるもんで、こっちが驚いた」


 シロはムロに事情を話した。誰かに話さなければ気が済まなかった。

 ムロは黙って聞いて頷く。そして武装石をポケットから取り出すと、子どものように笑ってみせた。


「何が可笑しいんだよ! 俺は本気で追い込まれてるってのに!」


「悪いが王子。王子の幼馴染を助けに行くのはオレみたいだ。ちょいと任してくれないか」


「はぁ!? 俺の話を聞いてたのか! フィリウスは異空間にいるんだ」


「ちゃんと聞いてたぜ。だからこそ俺が適任なんじゃないか。武装石を持っている俺がな」


 ムロが得意げに武装石を掲げる。

 武装石が眩い光を放つと、ムロの体を光が包み込んでいく。光には少し温もりがあった。


「どうする気だよ。ムロさん、異空間に行く魔術使えるのか?」


「残念ながら使えない。けど、オレに任せれば大丈夫だ。それとできれば、さん付けはやめてくれないか。呼び捨てで構わない。さぁ、大人しく王城に帰った帰った」


「俺も一緒に」


「ダメだ。無事にとは言ってない。自分がファルスの王子だってのを忘れちゃダメだ。そんじゃ行ってくる」


「ムロさん――ムロ兄ちゃん!」


 シロに軽く手を振りながら消えていくムロは、完全に戦闘態勢に入っていた。

 光に身を任せて進んでいく。体感時間は数秒。あっという間に異空間に辿り着いた。


「アッシの世界にネズミが侵入したようだな」


 ムロの存在に気付いたナティは、裸の上から直にローブを着ている。ローブの前は大胆にも開いており、誰かに見られることを想定していなかったと思われる。

 そんなナティの側には、オレンジ色の髪が綺麗に咲いているフィリウス。しかし、フィリウスの瞳は枯れていた。髪と同じ綺麗なオレンジ色のはずなのに、その瞳から輝きは失われていた。


「そのローブはゴッツィズの。てめぇがボランを」


「あの小国のこと? 武装石を作るのにちょうど良かった。で、何をそんなに怒っちゃってるわけ?」


「てめぇ、どれだけ命を奪えば気が済むんだ。水の大陸だけじゃ飽き足らず、火の大陸にまで手を出しやがって!」


「たまたま水で活動していただーけ。そこに利用価値のある材料があっただーけ。それと、アッシだけの仕業じゃない」


「たまたま、だと。たまたまで大勢の命を……オレの大事な人たちの命を奪いやがったってのかああ!」


 ムロは武装石を取り出し構える。武装石を握る手には力が入る。怒りが無尽蔵に湧いて沸く。


「ここにこれた理由はそれか。武装石同士の干渉ってわけ。アッシたちが撒いた中の一個を持っているだなんて、なかなかの幸運じゃない」


「幸運だと? ふざけんじゃねぇ! オレの目の前で家族を殺しといてふざけんな! こんなものに頼りたくはなかった。だが、今にも壊れちまいそうな奴を見たらそうも言ってられなくなっただけだ。家族の血を宿した武装石こいつでてめぇを倒す」


「ふっ、あはは! そんなザコで何ができるわけ? 透明の武装石なんか目じゃないっての。もはやゴミさ!」


「てめぇにとっちゃゴミかもしれないが、オレにとっちゃ形見なんだ」


「馬鹿な奴。これだから男は嫌い。だから、痛い目に遭わせてあげる」


 ナティは、赤い武装石を自慢げに取り出し笑う。

 血で染められたように赤い武装石を見たムロは怒りを露わにした。眉間に皺を寄せ、今にも飛び掛かりそうだ。

 だが、沸き立つ怒りをグッと抑える。堪える。ナティの側にいるフィリウスのことを考えてのことである。


「彼女を解放しろ。それとも、人質がいなきゃ戦えないってか」


「なんか勘違いしちゃってる? この子は人質じゃない。アッシのお・も・ちゃ。もっともーっとアッシ色に染めてあげるんだから」


 恍惚な表情を浮かべながらフィリウスに触るナティ。目の前のムロを気にすることなく、耳を甘噛みし始める。


「ちっ。他人の趣味に口出しする気はないが、彼女は同意しているのか?」


「愛に言葉はいらないのさ」


「じゃあダメだ。ましてや、命を奪っといての恋愛なんざ認めてやらねぇ。その恋心ごと倒してやるよ」


「やってみなよ。アッシは負けない。アッシには、この赤い武装石があるんだから」


「命を弄びやがって。永遠に黙らせてやる」


「「武装石、発動!」」


 二人の武装石が光を放つ。

 命を奪った者と奪われた者による戦いが幕を開けた。

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