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武装石の脅威

 近衛司令部の屋上にムロを連れてきたカザト。

 まだ落ち込んでいるムロは、「もうダメだぁ、おしまいだぁ」と弱音を吐いている。


「そう落ち込むな。誰にだって、向き不向きはある。お前には拳があるじゃないか」


「んだよ! 励ましてくれるんじゃないのかよ!」


 だらっとしていた体を勢いよく起こし突っ込むムロ。突っ込んだ直後に表情を曇らせた。


「励ましてほしかったのかぁ? 悪い。俺、そこまで気を回せない」


「別に。こんなことで落ち込むオレが悪いんだ」


「やれやれ。お前、けっこう面倒だな」


 ムロに背を向けて頭を掻いて考える素振りを見せ、軽く息を吐いてから振り返るカザト。ポケットから武装石を取り出すと、真剣な表情で質問する。


「しっかり答えてほしい。この、武装石だっけか。これは天然物なのか? 人工物なのか?」


「それを知ってどうするつもりだ。壊そうってわけか?」


「魔法の増幅器になるのは魅力的だが、その条件に、人ひとりの血が必要となれば話は別だ」


「ったく。犠牲を増やしたくなくて追ってきたのに、また犠牲者を出しちまうなんてよ。オレの力不足だ」


「おい。勝手に落ち込んでくれるな。俺の質問に答えてくれ」


「天然物なら大問題だっての。武装石を作ったのは、ゴッツィズという組織だ。どんな素材をどんな風に加工してるのかは知らないが、オレの国だけでも百人死んでる」


「百人!? ぜ、全員……ち、血を!?」


「そうだ。老若男女無差別に。何人か実際に見たことがあるが、あれは引いた」


 顔を青ざめながら語るムロの、武装石を持つ手に力が入る。後悔の念がそうさせていた。


「いったい、武装石はどのくらい作られたんだ?」


「現状は五百個くらいかと思う。ゴッツィズのアジトに、武装石製造の犠牲者と思われる人たちが三百人以上いたんだ。水の大陸だけで四百人以上の犠牲だ。もう百人くらいの犠牲は覚悟しとかないといけない」


「じょ、冗談はよしてくれ。そんな大事になっているのか!?」


「火の大陸に武装石が流れているってのが痛い。風と土にも流れているかもしれないっことを考えると、百人じゃ済まないかもな」


「ゴッツィズの奴らは?」


「七人は片づけた。三人には逃げられた。今、一番有力なのがファルスなんだ」


「それでお前はファルスにきたのか。でも、なんでお前がゴッツィズを追っているんだ?」


 カザトの質問に顔を曇らせたムロだったが、目を閉じ言葉をまとめ、ゆっくりと語り始めた。


「オレの家族がゴッツィズに殺されたんだ。武装石の材料にされたんだ。それから師匠――兄貴って方がしっくりくるかも。オレたちに色々なことを教えてくれた人がいたんだけど、そう、いたんだ。過去形になっちまうなんて悔しいな」


「そうだったのか……悪かった。辛いことを思い出させてしまった」


「気にすんな。オレは火を、オレの三人の仲間が水、風、土の大陸でゴッツィズを追っているんだ」


「少数精鋭すぎないか」


「四人だけとは言ってないぞ。ゴッツィズは国際問題になっている。各国が水面下で動いているはずだ。だからオレ、近衛司令部に挨拶をと花束持参したってのに」


「あちゃー。そいつは重ね重ね悪かった。メトイークならゴッツィズのことを知っていても、クーゴは知らないかも。あいつはそういう奴だ。門番に情報がいってなくても不思議じゃない」


 カザトは頭を抱えるしかなかった。ゴッツィズのことは、ムロに聞かなければ知らなかったのだから。今一度、クーゴの近衛騎士の気質を疑ってしまう。


「なぁ、ファルスに奴隷はいるか? いるなら気を付けろ。ゴッツィズの奴らがきているかもしれない」


「その可能性は十分にある。警戒を強めるよう言っとく」


 色々と情報を整理するカザトだったが、ふと、義手の男性――ザンの顔が脳裏に過った。


「ザン――だったか。武装石を珍しいと言っていたが、武装石の存在は、どのくらい知られているんだ?」


「さぁな。ゴッツィズが何の目的で武装石を作ったのかもわからない。普通に暮らしていれば、ゴッツィズと接点なんかないしな」


「少なくとも……四百の犠牲と武装石は確実か。なんてことだ!」


「ザンが武装石を使っていた以上、四百人が武装石を手にしていると思っていいだろう。オレとカザトを含めてな」


「物騒なことになってきたな。のんびりと剣を振っている場合じゃないか」


「絶対に見つけてやる! 家族と師匠を殺したことを後悔させてやる!」


 カザトとムロ。二人の、戦いへの決意に呼応するように、武装石が眩しく輝きを増していく。

 その後、カザトがクーゴにゴッツィズのことを聞いてみると、「そんな危ねぇ奴らがいんのかぁ!? オラ、全く聞いてねぇぞぉ!」と驚いていた。メトイークの怒号と猫パンチが炸裂したのは言うまでもない。

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