序章
僕は、ごく普通の一般家庭で生まれて育って最近成人したばかりの男だ。特に、金持ちだとか、貧しいだとかそんなことはない。
まぁ、特質を挙げるとするならば、僕が同性愛者ってところだろうか。恋愛対象が男なだけで、そのほかには何もない。ただのゲイである。
罪を犯したこともなければ、巻き込まれたこともない。警察の厄介になったことも一度もない。普通、もしくは善良な一般人だ。
強いて何か言うとしたなら、警察に少し話を聞かれたことぐらいだろう。
話の内容というのが、神隠し事件について。
と、いうのも。
今、友達が誰一人いない僕でも。高校の時は、一人友人というか仲の親しい先輩がいた。
先輩の名前は神谷 慎仁。きれいな黒髪に、吸い込まれそうな真っ黒な瞳のイケメンな先輩。
僕のあこがれの人であり、片思い中の先輩だった。
そんな先輩が、高校の卒業式当日から行方不明になったのだ。
先輩だけではない。先輩の親族全員、忽然と姿を消した。
そこで、先輩と親しかった僕に話を持ち掛けられた、ということだった。しかし、僕はその神隠しにあったと聞いて恥ずかしながら取り乱してしまった記憶がある。
そして、その後のニュースで知ったのだが神谷一家は本当に神隠しにあったように、家の中も人が突然いなくなったような状態だったらしい。調理中の鍋や、切りかけの野菜や包丁までもがそのままだったとか。
ついでに言うと、神谷一家はまだ誰一人として見つかってない状態である。
先輩が消えて今日で3年目。
もう、帰ってくるっていう選択肢はないに等しい。
それでも、たまに先輩のことを思い出しては「ああ、もう会えないんだな」と思うと、つらくて仕方がなくなる。
それだけ、先輩のことを、僕は好いていた。
「さて、お仕事。行こうかな」
僕の仕事は、住んでいるアパートの近くにあるゲイバーのスタッフだ。一応、お小遣いくらいは自分で稼ごうと探した結果。近くにあったので、そこに面接に行ったら即採用だった。即採用だった理由は今でも謎なのだが…。
現在時刻、デジタル時計に表示されてる時刻は17:00。
僕は、仕事に向かうためベッドから起き上がり身支度を始めることにした。
身支度を終えて、そろそろ家を出ようとしたとき。一通のメールが届いた。
文字化けしたアドレスに、文字化けした内容。しかも、文字化けがノイズのようにパカパカと点滅したり形が変わっている。思わず「なにこれ、気色悪い」と思い、消そうと思ったがなぜか消えない。
ホラー系が全くもってダメな僕は、とりあえずメール画面を閉じてカバンの中にスマホを仕舞い、仕事場に向かうのだった。
カバンの中に放り込んだスマホの文字化けメールがちゃんとした文字のメールになり文が表示されたのを僕は知らない。
今から
貴方を守りに行きます
KAMIYA-08s