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それぞれの想い(2)
あれから俺は家に帰り、1人でバスケットボールを持って、庭にある小さなバスケットゴールの下で てんてんとボールをついていた。
夏の夜は涼しく、月の光を浴びながら夜風に当たっていた。
「・・・・。」
ーーーー報われない恋、切ない恋、自分自身がいざ 体験してみると それほど価値なく、美しくは見えないけれども、人が自分と同じことをしているのを見たら、とても美しく見えてしまう。
例えば藤川可蓮とか。
彼女には好きな人がいる事を俺は知っている。
いや、気づいてしまった。
俺の視線の先に彼女がいて、彼女の視線の先には中原瞬がいる。
・・・何であいつなんだよ。
瞬は無理だ。あいつには好きな人がいる。
どんな人だって、ダメなんだ。そんなことは俺が一番知っている。
あいつには、とても、とても大切な人がいる。
到底 叶いっこない恋に恋する彼女はとても美しく、俺の心をいつも揺らつかせる。
「・・・何で好きになったんだろ。」
ははっと俺は微笑した。
夜風が頬を掠めた。