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虚偽恋ごっこ  作者: 萌
7/22

それぞれの想い(1)


6月の中旬。梅雨の季節がやって来た。

梅雨といえば、行きとかは部活のジャージの裾が濡れて気持ち悪いだの、髪の毛が湿気で綺麗に纏まらないだの、いつ雨が降ってくるとか分からないだの、とりあえず誰もが苛つくこの時期。

そんな中、1人はっちゃける馬鹿がここにいた。

「ひゃっほー!雨だ雨。ねえ、椋、雨だよ雨。」

「知ってるよ!とりあえず走るぞ!瞬!」

「ちょっと待って。靴紐ほどけそう。」

「五月蝿い!!」


現在、俺と瞬は、雨に打たれながら帰っている。

今日は部活が休みのため、学校帰りにこのまま瞬の家で遊ぼうという話になり、2人で瞬の家へ向かっている最中の時に、このザマだ。

「ちょっと、椋 速いって。第一、椋が傘持ってたら良いだけのことで。」

「俺だけの所為!?」


そんな口喧嘩を交わしながらも俺らは無事、瞬の家へ辿り着くことができた。

「はい、瞬、入りなよ。」

「・・・おじゃまします。」

相変わらず綺麗な家。豪華だし、広いし。

恵まれてるよな。こいつ。

辺りを見渡していると、正面からタオルが飛んできた。

「何してんだよ。突っ立って。はい、これタオル。」

「サンキュ。・・・なんか、お前の家に来るの、久々だな。って、思って。」

「ん?そうだっけ?まぁいいや。とりあえず俺の部屋来いよ。」

「あぁ。」


予想通り。こちらの部屋も綺麗に整えられていることで、居心地の良さそうな部屋だった。

「綺麗だな。」

俺の部屋とは違って。

「ん?俺のことが?」

「んなわけあるか。阿保。」

何という珍回答だよこれ。

「・・・っていうか、何する?ゲームとか?・・だったら、俺の家の方がゲームの種類多いし。・・・にしても、瞬、俺を家に呼ぶって、何かすることがあったからか?」

そんなことを瞬に聞いてみると、瞬は自分のベッドの上に座って、ちょいちょい、と、あたかもこっちへ来いという仕草をしてきた。

俺は素直に瞬の方へと近づくと、グイッと腕を引っ張られ、ベッドへ倒された。

「・・って、これが目的かよ。」

「正解。今日 母親仕事で帰るの遅いし。・・まぁ、中学2年生ですからこの時期の男子の欲情は誰にも止められないんだよ。観念するんだな。」

「・・・・あー、もう。」

こいつって奴は。しょうがねぇな。

「一回100円な。」

「 えぇ〜。椋にそこまで価値な〜い。」

「瞬、短い付き合いだったな。」

「ちょっとww」

そんな茶番も終わり、瞬は俺にキスをしてきた。

「、、、っ、、ん・・・・っ。」

雨の音が瞬の部屋中に響き渡る。

先程濡れた制服がまだ乾いてなく、互いに体が密着して少し冷たい。

「、、相変わらずエロイ声出すね。濡れた椋最高。」

「ばか。」

「・・・・にしてもさぁ、制服濡れてて気持ち悪いんだよな。ほら、キスするときに密着して。冷たいし、脱がせていい?」

俺は軽く目を逸らした。

「別に。一線越えなきゃいいよ。」

「そっか。」

瞬は俺の制服のボタンに指をかけ、ひとつひとつと外していく。制服を脱がされ、その下に着ていたシャツも濡れており、瞬の手により、脱がされた。

外に瞬は俺を脱がせる前に、先に脱いでおり、つまりは2人とも今は上半身は何も布を纏っていない。

・・・・ここまでは来たことがなかったな。

雨で冷え切った体が瞬と抱き合うことで、温もりに満ちてゆく。

瞬は俺の薄い肩を持ち、様々な部分へ口付けを落とす。キスされた部分だけが妙に熱い。

「ははっ。 椋、体 あつっ。そろそろ慣れろよな。体も。」

「・・・・。」

にやにやと笑いながら瞬は、俺の指に指を絡ませてくる。そして顔を近づけて、俺の唇を自分の舌で軽く舐めた。

「んっ・・・・。」

こんなのに慣れろという瞬はやはりおかしいと思う。

キスだけでも過剰に意識してしまう。

・・・・ これじゃあまるで、瞬に意識しているみたいじゃないか。

第一俺には好きな人がいるし、向こうだって、別に好んで俺とこんなことをしているわけではない。

あいつとやっている時、あいつの目には、俺は映っていないのだから。

あいつには別のやつがいる。

「椋・・・・・っ。」

・・・・しかし、今日はやけに俺の名を呼び、キスをしてくる。

「・・・今日見えているのは、俺なんだな。」

自分の右手を瞬の後頭部に回してそう言った。

「うん。今日は 椋、濡れてるから、なんかいいな。って思っちゃってね。水も滴るいい男。」

「何を言ってんだよ。この浮気ものが。」

「そうだな。でも浮気とかしたら化けて出てこられそうだからな。今日限りでやめておくよ。椋だって藤川がいるし。」

「な、何で、そこで藤川が出てくるんだよ。」

急にその人の名前を出され、戸惑いを隠そうと、ムキになって起き上がった、その拍子に俺は瞬と額をぶつけてしまった。

「いっ、、て。でもさ、好きだろ?」

「ん・・・まぁ、好き、だけどさ、この事と藤川は別に関係ないだろ?」

「関係・・・つうか、藤川とはやんないのかなって。俺とするみたいなこういう事を。」

「ばっ・・・!誰がするか!そもそも、まだ告白だって、してないんだぞ?」

「じゃあ、告白は?」

「・・・・。」

俺は右手の甲を目元にあて、

「するつもりはないよ。」

と言った。

こっちは入学して間もない頃から、想い続けているが、向こうなんて見向きもしていない。

告白したところで振られる運命なんだよ。

「それってさぁ・・・。」と瞬は続ける。

「恋していて楽しいか?」

まさか。楽しいわけがない。永遠の片思いなんて。叶わない恋なんて。

「別に。」

短く、そう答えた。

「ふぅん。俺なら無理ってわかっていても絶対告白するのにな。」

「お前と俺とじゃ思考回路は別々のものだろ。」

「そうだけど・・・切ないな。」

何となく、その言葉が胸を打った気がした。



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