好きって何ですか?(5)
「すいませーん。塾遅れましたー。」
「石田、中原、お前ら今日は部活だったのか?」
「はい。」
「うむ。勉強も運動も文武両道にしてやっていきなさい。・・・・そしたら俺のようには後悔しないから。」
「先生!?」
ーーーー先程のことなんて全くなかったかのように、瞬は平然と授業を受けていた。
俺も別に変わりなく、平然としていた。
こんな事は2人きりになればいつものことだ。瞬とああいうことをするのは慣れている(体はなかなか慣れてくれない)。
・・・・そういえば、こういうことをし始めたはいつだっけ?
「あぁ。」
あの事件以来か。
・・・・にしても、あれからもう2年近く経つのか。早いものだ。
あいつの時間は止まっても、俺らの時間は止まらない。
「会いたいな・・。」
ふと、口からそんな言葉がポツリと出た。
「ん?石田。誰に会いたいのか?」
そんな声がし、前を向くと、先生が教科書を持って俺の前に立っていた。
「あ・・!いえ、ただ、この教科書に出てくる人に会いたいな。って、ほら!先生、この人です!これ!!」
と、一生懸命 教科書に指を差し、何とか先生を納得させた。
「そうか。前向きな勉強の取り組みだ。」
「・・・・はい。」
後ろでかすかに瞬の笑い声が聞こえた。
なぜこんなにも運が悪いのだろうか。
ここのところ、先生に注意されてばかりな気がする。(半分以上は瞬の所為)
やばいなぁ・・。今、中学2年の6月だろ?あんまり内申に響くような事はしないように心がけないとな。
よし。と、ネガティブ思考を無理矢理ポジティブ思考に換えたところで、グッと顔を上げた。
「なんだ石田。やる気満々じゃないか。部活の後で疲れているのに、偉いぞ。」
「・・・・。」
わーい、褒められた。