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虚偽恋ごっこ  作者: 萌
4/22

好きって何ですか?(3)


水バスと言えば、水曜に唯一やる夜練。

どの部活でも、朝練はあるが、夜練はない。

次に来る試合のために数多く練習ができるという、大切な時間であると言うのに、男子バスケットボール部の1、2年生といえば・・・。



「さぁ!やって参りましたぁ!第1回『男子バスケットボール部の部員のメンバーの秘密を暴露しようぜ』大会!!!」

「イェーイ!!!」

皆は体育館の真ん中で円になり、拍手を交わした。今回はキャプテン不在という理由で俺たちははしゃぎまくりだ。(ちなみに顧問の先生は帰っているよ)

すると1人が口を開いた。

「では、第1章、この部の好きな人を暴露しよう!」

「はいはーい!!先輩!じゃあ俺、こいつの好きな奴言いまーす。」

1年生が立って相手のを暴露し始めた。

「え、ちょっ、、!」

「こいつの好きな人は4組の佐藤香織です!」

「へぇー。バレー部のあの子か。確かに可愛いよな。」

皆は、注目し、「何で何でー」とか、「告白しろよー」と口々におちょくっていると、顔を真っ赤にして

「だ・・だって、振られたらお終いじゃないですか。告白なんて・・・・勇気、ないです。」

手で顔を覆い隠してしまった。

「・・やべぇ。何なんだこいつ?」

「可愛いすぎんだろ。」

「これぞ青春。」

何となく皆んなで「大丈夫!」と励ましあったところで、次の好きな人の暴露が始まろうとしていた。


ーーーーーやばいな。

バレないように俺はこっそりトイレへと逃げようとした時、

「おいおい、椋。逃げるんじゃないよな?」

ガシッと。手首を掴まれたところで俺の脳内で、「終わった」という言葉がぐるぐると回っていた。

「いやいや・・・ちょっとトイレに。」

と言いかけたところで、こいつ、中原瞬は暴露をしてきやがった。

「みんなー。石田椋の好きな人はー、同じクラスの藤川 可蓮でーっす!」

「死ねえぇぇ!!! 」

瞬に飛びかかったところでメリットなんてものは無かった。

ただ、後ろにいた奴らに取り押さえられただけだった。

「・・・この野郎。暴露しやがって。」

「ヘヘッ 暴露大会なんだからいいじゃん。」

「くそっ。みんな、こいつの好きな人はー・・・っ!」

そう、誰でもいいから適当に女子の名前を言ってやろうとしたが、過去のことが蘇ってきた。

あれほど泣いた夏の夜。一生忘れることないあの時間、あの場所、そしてーーーーーーーーー


「雨谷 美玲ちゃんでーす!」

ハッと我にかえると、瞬は自分の好きなタレント女優の名前を言っていた。

「っておい!中原、ふざけんな、真面目に答えやがれ!」

ほかの奴らが瞬に対して、鋭い突っ込みを入れると、

「いゃあ、あの人を超える人しか俺は好きになれないかもね。」

「レベル高っ」

「ーーにしても、なんで椋は藤川のことを好きになったわけ?」

と、ずっと俺を取り押さえてた平川がそう聞いてきた。

「それは・・・」


そう、説明するにはとても簡単な恋の落ち方だった。

一目惚れ。

入学してから何日か経ち、校庭に咲いている桜の木の花弁が舞うようになった頃だった。

もともと桜が好きな俺は昼休憩に教室の窓から見える桜を眺めていた。

すると、何人かの女子が桜の木の下に来て、遊び始めた。

その中の1人の女子が、桜が霞むほど綺麗な笑顔で笑っているのが目に見えた。

何とも単純なものだが、それから、廊下ですれ違ったりする度に、その子を一生懸命目で追って、いろんなきっかけを探していたのだ。



「お、教えるわけないだろ。」

「えー椋 照れんなって。もう、可愛いなぁ。」

「照れてなんかないって・・・。」

何となく平川から目を逸らした。(やっと取り押さえるのをやめてくれた。)

「じゃあじゃあ、今同じクラスなんだろ?喋ったりする感じ?」

「え、あぁ、うん。一応、お互い学級委員はやってるから、放課後に2人で残ることはたまに・・」

視線を下げていた俺は前にあげると、何故だか皆が顔を伏せていた。

「えっ・・・えっ!?」

「・・・くそっ、好きな人と放課後に居残りだ!?なんだその青春感・・・俺も混ぜろ!!!」

「えっ?おい、平川?お前大丈夫か?登場早々早速キャラ崩壊してるぞ?いつものクールキャラは捨てて来たのか?」

「五月蝿いよ椋・・・もうお前らなんかくっついてしまえよ」

「えぇ、、、無理だって。・・・ってか、もう話変えるよ。」

これ以上俺のことを暴露されては困る。何故ならば、此処には中原瞬という者が存在しているからだ。

何故だかあいつは俺の初恋の相手まで知ってやがる。ちなみにいうと、この情報は今まで外部では一度も話したことがなかった。そのほか、多々俺の個人情報を知っている。何故あいつがこんなにも俺のこと(主に幼少期時代)を知っているかはともかくとして、ただあいつはいろんな人から情報を聞き出す手口が広いのだ。

簡単に言うと、顔が広い。

「だ、第2章!キャプテンに対して色々暴露しよう!」

無理矢理話を変えさせたところでキャプテンの話題に持ちきりになった。

・・・これでもう俺のこと話題に触れることはないだろう。

ホッと一息ついた。


「えーと、キャプテンって、とりあえず男らしいよな。」

「かっこいい!」

「彼女いるらしいぜ?」

「優しいしな。頼り甲斐のある人だよな。」

「今年の引退セレモニーはとびきり豪華なものにしようぜ。」

「そうだな。キャプテンもあと少しで引退か。」

「次の試合って、秋季大会だよな。あれで負けたら、もう終わりか。早いものだな。」

「あぁ。」

一瞬として、先程まで五月蝿かった体育館はシンと静まりかえった。

「・・・キャプテン、すごいよな。3年で、たった1人で、俺ら全員まとめて。」

「はい。3年、1人しかいませんしね。」

「そうだな。春季は惜しくも負けてしまったものの、秋季では勝とうぜ!絶対優勝するぞ!」

「おう!!」

「キャプテンに捧げる最高のプレゼントにしようぜ!」

「おう!!」

何とか部が一つ(?)になったところで、本日の水バスは終了した。

別にする気がなかったのに、何となく出したボールをしまいこんで、モップで体育館を綺麗にしたところで皆は帰って行った。

「・・・・。」

鍵当番の俺と瞬は2人、体育館に取り残された。



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