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電動バイクの男
この話は三人称です。
いったいこの男は何者なのか?
砂塵を巻き上げ、一台のモトクロスバイクが標高千メートルの山を駆け上がっていた。
エンジン音は聞こえない。電動バイクのようだ。
やがて、山の頂に停止したバイクから、ライダーが降りてヘルメットを取る。
ヘルメットの下から現れたのは、短く刈り込まれた金髪の男。
歳は二十代後半ぐらいの西洋人だ。
男は双眼鏡を取り出して、下方を見下ろす。
「チッ」
舌打ちをするとトランシーバーを取り出した。
「俺だ。不味いことになった。奴は生きているかもしれない。援軍をよこしてくれ。ああ!? 分かっているのか? 奴がリトルトウキョウに入ったら、どうなるか? ああ!! 確かに俺のミスだ。VTOL機能さえ潰せば、もうシャトルが降りられる滑走路はないという判断をしたのは俺だ。まさか……」
男は再び双眼鏡を当てる。
男の目に映ったのは広大な塩の平原。
「こんな、天然の滑走路があったとはな」
次からは、海斗の一人称に戻ります。