第94話 アメーリア保護
まだジャンの所で屋敷を住めるようにしたいし、他に必要な物があれば揃えたいのでお披露目式は3日後だが、ココアとユニコに代参を頼んでおいた。
仲間が増えてもいいように、屋敷もあと2軒作っておきたい。
浮遊大陸にも1軒は作っておきたい。
デルタに指揮を任せて何かわかったら知らせるように頼んで、一旦町から出てジャンの背中に転移した。
【錬金】で作った屋敷には大小合わせて30の部屋があった。
机やタンスなどの家具は【錬金】や【複製】で作り、布団や服など布製品はできなくはないのだが、バンブレアム帝国で購入した。
2日かけて住むのに必要な物を全部揃えて、2軒の屋敷を増やした。
まだまだ作りたいものはあったが3日目にココアからの念話の連絡で作業を中断することになった。
アメーリアのお披露目の式典で事件が起きた。
式典の途中で招待客や屋敷で働く使用人の何人かが魔物へと変身し式典はパニックになり何人かが犠牲になった。
アメーリアはココア達が守ったので無事だった。
報告を受けた私は、デルタ達と合流しアメーリアの住む宮殿へとやって来た。
「ココア、報告では人間が魔物に変身して暴れたという事だったが、詳しく話してくれ。」
「はい、式典はパーティ形式で行われていまして招待客は食事を楽しんでいました。途中に王族を代表して参加していた者が挨拶をしている時に、その者が急に魔物に変身したのです。それが合図になったのか、他の招待客や屋敷の使用人も何人かが同様に魔物に変身しました。」
「なぜ魔物に変身したんだ?」
「それは分かりませんが、パーティには誰も武器を持ち込めませんでしたので皆逃げ惑うばかりでした。アメーリアさんは私が駆けつけることが間に合いましたので無事でしたが、他の招待客や使用人は何人かが犠牲になりました。パーティ会場内の魔物はユニコさんが全部片付けましたが、屋敷内の他の所でも魔物に変身した者がいて、そちらでも犠牲者が出たようです。」
「デルタの方は、何かわかるか?」
「はい、こちらで掴んでいる情報ですと、フォルファクスが絡んでいることは間違いないようですな。ただ、奴は城のどこかに潜んでいるようなのですが中々居場所の特定ができません。今回魔物に変身したものは元々は人間で、人体改造により魔石を身体に埋め込まれて変身したようです。その施術を行ったと思われるのも城の中で間違いないでしょうな。」
「そこまでわかっているのにフォルファクスの居場所が特定できないのか?」
「はい、城は広いだけでなく要所には結界も使われていて中々入り込めません。カインが居れば何とかなるとは思いますがな。」
ミルキー班も呼ぶしかないか。丁度ジャンのアジトの事もあるし全員集合するか。
「よし、ミルキーに連絡を取って全員集合して、城を重点的に探索するか。」
「そうですな、今回の件はそうでもしないと難しいかもしれませんな。」
「わかった、そうしよう。あとアメーリアだが、このまま置いて行っても大丈夫かな?」
「まだ油断はできませんな。こちらで保護してやるか護衛を残した方がいいかもしれませんな。」
「わかった、アメーリアと話をしてみよう。」
アメーリアは自室に閉じ籠っており執事に頼んで会わせて貰えることになった。
「アメーリア、今回は大変だったな。大丈夫だったか?」
「あ、タロウ様。ありがとうございます。ココアさん達がいらしていたお陰で私は大丈夫です。」
「それは良かったな。アメーリアにも少し聞きたいことがあるんだが、その前に今後について相談したいんだが?」
「はい何でしょうか?」
「今回の件は大変だったと思うがまだ終わった訳では無い。またこういうことが起こるかもしれない。そこで、少しの間だけでも私の保護する場所で隠れておかないか?」
「それは有り難いお申し出ですが、私はこの宮殿に居るようにと言われておりまして。」
「誰に言われてるんだ?」
「王です。」
「それじゃ護衛を増やしてくれるんだな?今日見た感じじゃ増えてるとは思えないが。」
「はい、護衛は増えていません。これ以上城から護衛は出せないとも言われております。」
「どういうことだ?今回の事件は王も知っているんじゃないのか?」
「もちろん伝わっているはずです。今回の事件で始めに魔物に変身したのは第5位の王位継承権を持つ王子でしたから。貴族の方達の中にも犠牲になられた方もいらっしゃいましたし、こちらから王へは報告は致しました。」
なんだ?おかしいよな絶対。またアメーリアを襲撃するために手薄にしているようにしか思えない。でも、アメーリアは王族だから王からの通達では逆らえないか。
しかも王子が魔物化したっていうのもおかしい。やはり城はフォルファクスの操り人形になってしまっているのか?
「やはりここに置いておくことはできないな。護衛を付けるにしてもこの宮殿では危険過ぎる。前回の依頼の件での事もあるし、やはり私と来てもらう方がいいな。」
「しかし、王の命令に逆らうことはできません。」
「その命令は、ここにアメーリアが居ればいいんだろ?それなら考えがある。執事と共に来ればいい。」
名前が出たことで執事が口を挟んだ。
「それは有り難いお申し出です。お嬢様、是非タロウ様の保護下に入れていただきましょう。」
「じい、それでは王の命令に逆らうことになります。私にはできません。」
「タロウ様にお考えがあるご様子。ここはお任せいたしましょう。この方には前回の依頼の時にも信じられない力を見せていただきました。今回も何かあるのでしょう。このままではお嬢様の安全をお守りすることができません。」
「しかし・・・。」
「大丈夫だ。任せておけ。アメーリアは保護するが、アメーリアはこの宮殿から一歩も出ないことができるから。出発の用意をしてくれるか?着替えだけで良いが、何日になるかわからん。大目に用意してくれ。使用人も信用できないから準備は2人でやってくれるか?」
「わかりました。急いで私が用意いたします。」
執事は準備のために部屋から出て行った。
「もう一つ聞きたいんだが、洗礼の時にランクアップしたように感じた。何の洗礼を受けたんだ?」
「はい、イクスプラン教は聖なる精気をを司る魔法を授ける宗教でもあります。王家には代々イクスプラン教で聖女にクラスアップできる女性が何人かおります。今回の洗礼は聖女へのクラスアップの為でした。」
「聖女にクラスアップすると、どんなことができるようになるんだ?」
「悪魔返還です。私はまだクラスアップしたところなのでまだまだですが、歴代の聖女には高位の悪魔を追い返した者も居たそうです。」
つながったか。悪魔返還、フォルファクスがアメーリアを狙う理由だろう。
「他に聖女はいないのか?」
「今の王家にはおりません。私だけです。」
別に守ってやる義理は無いんだが、前の依頼で見知った訳で知ってる奴がやられるのを黙って見ているのも後味が悪いしフォルファクスにも繋がっているようだしな。利用させてもらおう。
執事も用意ができて部屋へと戻って来た。
「この前総本山で魔物に襲われていた時も、従者が魔物になったんではないのか?」
「はい、その通りです。今回の式典の時の様に急に魔物に変身しました。倒された後も元の人間に戻らなかったので、信じて貰えないと思い言い出せなかったのです。」
式典の時に変身した奴らも人間には戻って無かったみたいだし、同じ奴が絡んでるな。
急いだほうがいいだろう。
「アメーリア、この指輪を填めてくれ。」
分身の指輪を渡す。
アメーリアが指輪を填めると、もう一人のアメーリアが現れた。
「まあ!・・・」
「なんと!・・・」
2人共驚いているが、先に移動しよう。
戻って来れるように部屋に転送ポイントを登録し、短刀でアメーリアと執事と一緒にジャンの背中の屋敷の前に作った登録ポイントに転移した。
今回は魔法陣では無かったが、転送は前回も経験している2人なので少しは驚きが少なかったようだ。
「どうだ?これで問題無いだろ?アメーリア、分身の気配は分かるか?」
「・・・・今回も驚かされますね、タロウ様には。はい、もう一人の私とは繋がっているようです。何を見ているかどんなことをしているかがわかります。」
「操作もできるか?」
「はい、私の思い通りに動いてくれます。」
「大丈夫だな。少しの間だが、こっちの右の屋敷に住んでくれ。誰かいるようにはしておくが、何かあったら大きな声で呼んでくれればいい。ジャンには伝えておくから。」
真ん中は全部屋住めるようにしてあったが、左の屋敷の内装は手付かずで右の屋敷は半分ぐらいの部屋は完了していた。
「ジャン・・様?どちらにいらっしゃるのですか?」
「秘密だ。大声を呼べば私に伝えるようには言っておくから安心してくれ。」
「わかりました。ここは海の近くなのですね、潮の香りがします。」
「そうだな。」
海の真ん中を漂ってるんだがな。言うと面倒な説明がいるし、アジトだから知られない方がいい。
「タロウ様、私はお嬢様のお世話もしないといけませんので、こちらにご一緒させていただくことは問題ありませんが、宮殿のお嬢様に私が付いてないのはおかしくはありませんか?」
「それも少し狙いがあってな。手薄にしたいと相手が思ってるんなら、お前も居ない方が相手をおびき出せそうなんでな。」




