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第90話 本部

それともう一つ。エースに頼もうか。

「エース、お願いがあるんだが。」

「なんでしょうか?」

「お前、分身にも変身させられるか?」

「できると思います。」

「声や口調も変えられるか?」

「問題ありません。」

「やってみてくれ。」


エースは分身の指輪を装着し、分身側の顔や髪の毛の長さや色、身長や目の色まで変えた。

完全に別人だった。しゃべらせてみても私の知っている中で似ている者すら居ないぐらいの変装振りだった。しかも男前である。


「よし!これで行こう。ココア頼めるか?」

「主様?どういうことでしょうか?」

「私が冒険者ギルドに行ってる間が都合が良いんだ。この分身の変装したエースでベッキーを口説きに行ってほしい。ベッキーに彼氏ができたと思わせれば我々の勝ちだ。噂になるだけでもいい。だからココアも絶対に見つかっちゃダメだぞ?指輪を装着してた方がいいな。エースに場所とターゲットの情報を教えてやってほしいんだ。」

「ギルマスと話してたSカード冒険者の件ですね。」

「そうだ、これで何とかなるとは思わないか?」

「確かにいい作戦だと思います。デルタさんにも相談して完璧な作戦を作って見せます。」

「そうか、頼むぞ。できれば私が冒険者ギルドを出るまでにやってほしい。だから少しぐらい行くのを遅らせてもいいぞ。」

「そうですね、デルタさん?相談してもいいですか?」

「大体の事はわかります。ベッキーをその分身体で口説くということですな。」


それから30分相談の上作戦が決まったようだ。

私は冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドに着くと倉庫が大騒ぎになっていた。兵士も出動してきている。

どうしたのかと聞いてみると昨夜高ランクの魔物が3体盗まれたそうだ。

職員は皆、事情聴取に呼ばれ冒険者の受付どころでは無いようだった。


ちょっとやり過ぎたな?この様子だとオーフェンが合ってくれないかもしれないぞ?そうなったらココアの方の作戦は延期にしないとな。すぐにオーフェンを呼び出してみよう。


オーフェンを呼び出すとすぐにマスタールームに通してくれた。助かったな、作戦は続行だな。

「オーフェン、下の騒ぎは何だ?兵士まで来ていたぞ?」

「昨日、タロウさんが出してくれたドラゴン3体が何者かに盗まれたんです。」

お!すぐに向こうから切り出してくれたぞ。後は慌てずに仕上げてやろう。


「そんなことってあるのか?私は冒険者になってまだ日は浅いが初めて聞くし、そんな噂も聞いたことが無いぞ?」

「他では過去にありましたが。もちろんこのギルドでも。しかしここまで高ランクの魔物は過去に例がありません。私は解雇でしょうね。」

ガックリと肩を落としている。クビはマズいな。


「それは大変だな。私にできることは無いか?折角ここまで知り合いになれたし、何よりオーフェンがギルマスだと私もやりやすい。話がスムーズに進むので助かっていたのだが。」

「ありがとうございます。盗難という事実はもう消せませんので、出来ることは限られます。私もまだまだここで働きたい。でもタロウさんなら、もしかしたら何とかできるかもしれません。」


「何をすればいい?」

「タロウさんから本部に行って私を弁護していただければ、もしかしてということもあります。貴方はSカードのウルフォックスのリーダーですから。」

「それぐらいのことでいいなら、させてもらうよ。じゃあ、今から行くか。場所はどこだ?オーフェンはここで兵士の対応などをしないといけないだろう。私一人で行って来るよ。」


「そこまでしていただけるんですか?ありがとうございます。これでもし解雇になっても思い残すことはありません。」

「そうならないように行って来るんだ。」


初めは芝居掛かった話し方だった私も、最後は本気でオーフェンを救わなければならないと思っていた。正に私のせいだから。誰も知らないけど。

しかし今も、最悪オーフェンもウルフォックスに入れてやればいいか、ぐらいに考えてるけどね。

ギルマスだけが人生じゃないしね。ウルフォックスにはオーフェンのような人材がいてくれると助かるし。いいなそれ、そっちに方向転換するか?イヤイヤやってみてからダメな時に考えよう。


冒険者ギルドの本部に着いた私は、オーフェンから聞いた担当上司のフューラックを呼び出した。今は会議中だということで待たされたが、10分で会議中の場に連れて来られた。当事者だからだろう。

会議をしていたのは4名だった。私にも椅子が用意され事情説明をさせられた。


と言っても討伐をして魔物を出して今日報酬を貰える予定だったというだけだ。

オーフェンがどうなるのか聞いてみたら良くて地方への移動。悪くて解雇だった。


「それは私としても非常に困るんだが。」

「冒険者の君がなぜ困る?」

担当上司のフューラックが答える。


「オーフェンはとても優秀なギルマスのようだな。私の進行を非常にスムーズに導いてくれるよ。こんなギルマスは初めてだ。」

「オーフェン程度のギルマスなら今までもおりましたぞ。」

「そんな事は無いぞ?アラハンやフェリードやメリアーナと比べると、非常に優秀なのが分かったぞ?」

「それぐらい、中央のギルマスなら当然だ。」


「そうか?じゃああんたは私が今からS級依頼の討伐に行って今日中に終わらせて帰ってきたら信じるか?今までのギルマスは全員信じなかったぞ?だが、オーフェンだけは信じたし私に合わせた予定を組んで来たぞ?」

「そ、それぐらいは当然のことだ。」


「ほぉ、じゃああんたにできるのか?初めて見る冒険者が明日、イクスプラン教の総本山に1日で往復しますっていうことを信じることが。しかも王族の依頼でだ。」

「そ、それは・・・。」

「できないだろ?オーフェンはできたから、私は出されたSランクの依頼を簡単に全部終わらせることができた。こんな優秀な人材をたかが窃盗事件だけでクビにするのか?」

「そうは言っても責任問題がのぉ。」


「何の責任なんだ?金か?信用か?」

「今回の場合は何と言っても金だな。出された魔物のランクが高すぎだ。たかがというレベルでは無い。」

一番奥の一番偉そうな奴が代わりに答えた。


「じゃあ、それを私が被ろうじゃないか。それでオーフェンを残してくれるんなら私にとってはプラスだからな。」

「貴方に支払われる素材だけでは無いんですぞ?相手側、購入側にも違約金が発生しておる。」

「じゃあ、こうしよう。まず、私に支払われる予定の魔物の代金はいらない。今回の討伐達成料は未払い分だけで、全部で金貨8000枚ある。これで賄えないか?」

「そこまでは必要ない。貴方が魔物の素材代を放棄してくれるのなら、金貨500枚もあれば十分だ。」

「わかった、それでいい。依頼達成の精算はこちらでもできるのか?」

「もちろん。本部だからな。」


「昨日の分が金貨6000枚。あとダンジョンの分だが、これはオーフェンにはまだ言ってない。言う前に出て来たからな。後で言うがこの魔石が50階層にいたマルコシアスの持っていた魔石だ。」

魔石を出して確認させる。


「これでダンジョンの件はの達成でいいな?」

「結構だ。」

「じゃあ、あとは分配だ。私の元には金貨5000枚でいい。残りの2500枚はあんた達で分けてくれ。もちろんオーフェンも含めてだ。その代りにオーフェンを守ってやってくれ。これは私からの依頼で、達成料の先払いだ。」


「依頼ということであれば断れませんなぁ。」「買収ではないですねぇ」

などと言っている。


「オーフェンに精算させるわけにもいかないから、ここでさっさとやってくれないか?」

「わかった、では早速。」

担当上司のフューラックが出て行った。


すぐに金貨5000枚が用意された。

「これでオーフェンは何のお咎めも無し。逆に迷惑料でボーナスが付いたという設定で頼むぞ。いくらボーナスが出たかはすぐにわかるんだからな。」

「わかっておる。儂らは1人金貨500枚で依頼を受けた。残った分がオーフェンの取り分だ。」

「じゃあ、頼むぜ。私は冒険者ギルドに戻ってダンジョン達成とその説明が残ってるから。」

「了解した。」


その足で私は冒険者ギルドまで戻った。



私が出て行った本部では

「宜しかったのですか?あんなことを引き受けてしまって。」

「ああ。あの冒険者がオーフェンを気に入ったのなら丁度いい楔になってくれそうだ。昨日もロンレーンのアラハンから報告が来てたな。また3人Sカード冒険者が追加されたそうだ。今日の勢いなら冒険者ギルドを脱退しそうな雰囲気も出ていただろう?Sカード19名の脱退は何としても避けたいからな。ザンガードのフェリードの報告では少し私も焦ったが、オーフェンはうまくやりそうじゃないか。今日の冒険者の分、全部オーフェンに付けてやれ。」

「い、いや総帥、私にも少しいただけたらと。」

「はっはっはっはー、良い冒険者じゃないか!冒険者は仲間想いが一番だ!」

「いや総帥?ちょっと総帥?総帥ー。」



冒険者ギルドに戻った私はすぐにマスタールームに通された。


「よぉ、オーフェン。話はうまくついたぞ。」

「本当ですか!ありがとうございます。それで上手く行ったとはどういうことですか?」

「オーフェンはお咎めなし、このままギルマス続けてくれ。ということだったよ。」

「本当に!?」

「ああ、おまけにボーナスも出るかもしれんと言ってたなぁ。」

「流石にそれはあり得ませんが、本部までご足労いただきありがとうございました。」

「それで先にこれだけ確認してくれ。もう本部で精算は済んでるんだ。あとはオーフェンに確認してもらうだけだ。」

ダンジョンの依頼である魔石を出した。


「これがマルコシアスの魔石ですね。この大きさなら魔石鑑定しなくても大丈夫でしょうが念のためしますか?」

「それはそっちの判断だろう?でも、本部でも確認してもらってるからいいだろう。」

「そうでした。まだ考えがうまく纏まってません。」

「今日は仕方が無いか。でも、この報告だけはしておく。」

ショーンから貰った布切れを出した。


「これはなんでしょう?」

「これはマルコシアスを召喚した者の衣服の切れ端だ。生贄の持ち物でもある。」

「召喚者が自分を生贄にしたっていうことですか。」

「そう言う事みたいだ。名前までは分からなかったが、証拠品としては最重要品だと思う。ここからは腕の見せ所だと思うぞ。」

「そうですね、任せてください。何とかしてみせましょう。」

「ああ、あとはそっちの仕事だ。達成料はもう貰ってるが依頼完了でいいな?」

「結構です。」



やっと終わったと思って冒険者ギルドを出たが、まだ昼を少し回った所だった。

朝一番からだったし、仕事終了みたいな感じになったのでもっと時間が経っていると思ってた。


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