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第84話 急ぎの依頼

「ありがとうございます。こちらをご覧ください。」

オーフェンは5枚の依頼書を出した。


「まず1件目。これが一番急を要しております。王族の護衛依頼です。」

「王族か、そういうのは断りたいんだが。しかも護衛なら国軍が何とかしないのか?この国には勇者もいるんだろうし。」

「いえいえ、王族と言っても王位継承権は第17位で、国軍や勇者様が護衛に当たるほどのお方では無いのです。護衛に当たれるのは50名程度の騎士団で、今回遠征されるイクスプラン教の総本山である霊峰ピューリー山は、険しい道も多く今は100年に一度の活発期に入りましたので、その護衛を依頼されております。」

「活発期?」

聞きなれない言葉だ。活性化とは違うのか?


「霊峰ピューリー山は、神聖なる力の根源となる神精気を放出する神霊樹の群生地で、普段は神精気を放出してくれる神霊樹なのですが100年に一度、一番大きな神聖樹にバーミリオンという聖なる鳥の魔物が繁殖のために一番大きな神聖樹で、神樹に指定されている木に巣を作るのです。その繁殖期には神精気をバーミリオンがすべて吸収してしまい、他の魔物が活発になりだすのです。活発期は3か月程度で終わるのですが、今回の王位継承者アメーリア様は今月中に総本山まで行って洗礼を受けないと王位継承権を失うことになるのです。」


やっぱり面倒くさそうな話だな。辿り着くことを邪魔する奴も出てきそうな話だ。

「それって、私の馬車を使って行く事は出来ないのか?騎士団の護衛無しにして。」

「そんな事は認められないでしょうね。」

「その方が安全で早いのだがな。1日で終わる仕事なのに。」

「え?そんなことが可能なのですか?」

お?珍しく食いついて来たぞ?他のとこでは「何を馬鹿な」と信じてはもらえないんだが。


「見どころがあるねぇ、オーフェンは。普通は信じないぞ?」

「でも、できるんですよね?」

「ああ、できるよ。」

「それならこの話は解決です。次の依頼に移ります。」

「そんな簡単に信じてくれていいのか?オーフェンは信じても王族は信じてくれるのか?」

「大丈夫です。この冒険者ギルドはSカードを5人も所属させておりましたので、依頼達成の質も高く、国への信頼度は非常に高いのです。しかも今回の依頼者の王位継承権は低いですから、問題ないでしょう。」


流石大きな冒険者ギルドだけあるな。発言権も相当高いんだな。

「この冒険者ギルドが優秀なのは分かった。そこで疑問が一つで来た。」

「なんでしょうか?」

「そこまで力のある冒険者ギルドなのに、なぜ私に声を掛けなかった?一介の冒険者など取るに足らん存在だろ?」


オーフェンは首を振りながら

「そんなことはありません。タロウさん達ウルフォックスはSカード冒険者が16人もおられます。そのSカード全員の冒険者ギルド脱退が私のせいだとしたら、私の解雇はまず間違いありません。左遷や降格では無く解雇になるでしょう。下手をすれば、私に関わった職員も全員解雇になる可能性すらあります。このバンブレアム帝国には、冒険者ギルドの本部もありますので、すぐに知れることになるでしょう。そんな危ない橋は渡れません。」


Sカードにして損をしたと思ってたが、得をすることもあるんだな。今回は知らずに警戒してしまったが。

「しかもタロウさん達は実績も素晴らしい。火竜に始まりケルベロス、アークデーモン、誘拐事件での活躍、水龍の件では伯爵にもなられたとか。あ、伯爵の件は削除されておりました。ただ、国王からの評価が非常に高い。あと、ツンザンブレーン連邦での活躍も報告で入っております。これだけの事を1年以内にされておられる事実。これはバンブレアム帝国の軍でも出来ないでしょう。しかも先日にもベッキーを軽く一蹴されておりますしね。」


「すごい情報網だなぁ。感心するよ。これは期待が持てるかもな。」

「冒険者ギルドは情報が命です。しかもここの冒険者ギルドは大陸中一番大きな冒険者ギルドです。情報網には絶対の自信を持っております。初めに私が若い事を感心されておりましたが、体力と機転の速さがここの冒険者ギルドのギルマスになれる条件ですので、歴代のギルマスは全員若いですよ。体力的にキツくなってくると、他の国へ移動したり他のギルドに移ったり、引退して冒険者になったりする者もおりますね。」


ここまで確認の上で、納得して次の依頼か。オーフェンはかなり優秀で柔軟性が利くようだ。

「では、2件目を申し上げてもよろしいですか?」

「ああ、頼む。」

「2件目の依頼ですが、これも急いでます。この国にはダンジョンが3つありまして、そのすべてが町中にあります。それが、この国を大きくした要因でもあるんですが、そのダンジョンの中でも一番人気の一番難易度の高いダンジョンで強い魔物が1体現れて困っております。」


ダンジョンか、急いでいるんならダンジョン班のショーン達を呼ぶか?

「ダンジョンの詳細はわかるか?」

「はい、100階層のダンジョンで、今までに3チームのパーティが制覇したことがあります。そのうちの1つは、うちのSガードのところのパーティなんです。」

オーフェンは少し自慢げに話す。

「じゃあ、そいつらに行かせればいいじゃないのか?」


「それが、ベッキーにやられて回復できてない冒険者なんです。」

「でも、他にもいるんだろ?Sカード。」


「はい、おりますし、たぶん2チームで組ませればダンジョン制覇もできる実力はあると思っています。しかし、今回はちょうど中間の50階層にマルコシアスというアークデーモンの上位に当たる狼の悪魔が確認されまして、この討伐依頼をお願いしたいのです。このダンジョンのダンジョンマスターはデュポンという魔物ですが、マルコシアスはデュポンの2ランクは上の実力を持っていると言われています。デュポンはAランクの最上位に対して、マルコシアスはSクラス中位というところでしょうか。うちの手持ちでは太刀打ちできません。」


「確認した奴は戻って来れたのか?」

「はい、なぜかマルコシアスは50階層から動けないようなのです。そのことからも召喚したものが掴めれば、追い返すこともできるのではないかと調査中です。マルコシアスのような上位種を召喚できるものが居るとも思えないのですが。」

「わかった。どちらも急いで対処しよう。」


「はい、まずは急ぎの2件を片付けてから後の3件もお願いします。」

「わかった、今からでもいいのか?」

「どちらも今日中に話を付けますので、明日の朝からお願いします。達成報酬はどちらも高額設定の金貨2000枚です。ダンジョンの方は、マルコシアスの排除ですから召喚者を排除してマルコシアスが居なくなれば、それでも結構です。但しどちらも経費は認められません。すべて自費でお願いします。」

「結構だ。それで行こう。」


オーフェンに地図をもらい、そのまま私達は国の外に出た。

行って地点登録して来れば、明日は楽勝だからそのままダンジョンに行けるだろうと思ったからである。

今回はリクに【超高速移動】で馬車を引っ張ってもらうことにする。リクの【超高速移動】ももうすぐMaxになりそうだったし、リクは飛べるから。

町を出ると偽装+隠蔽の指輪を2個填めて、空を飛んで【超高速移動】で霊峰ピューリー山を目指した。


ショーン達と念話で連絡を取ってみたが、取れなかった。ダンジョンに入っているのだろう。


イクスプラン教の本部前にはスムーズに到着で来た。登録ポイントを登録して短刀で戻って来た。

依頼者たちへの偽装のために転送の魔法陣も作っておく。もちろん本物のやつを。

短刀と転送魔法陣、やはりバレたくないのは短刀だ。隠しておきたい。


戻って来た私達はベッキーの店に行った。

今日の店番はボイドだった。あの時は偶々ベッキーが居ただけで、本来はこのボイドが店番なのだ。

私以外の者に服は必要ないのだが、見ればその服装になれるのだからバリエーションは多い方がいい。


ここの服のデザインは気に入っているので、服を買い足しておく。


「あ~らぁ、いらっしゃい~。今日はなーにぃ?私に御用かしら~?」

「お前に用は断じて無い!今日は服を買いに来ただけだ。」

居ないと思って安心してたら、奥からベッキーが出て来た。


「あら連れないわねぇ。その服も私のデザインなのに~。」

マジ?そういえば調理と裁縫と掃除がMaxになってたよな。その道まっしぐらだな。


「そういえば一つだけ用事があったな。」

「やっぱりあるんじゃない~。で、いつ?」

「いつ?じゃねーし。この町の冒険者の事だよ!」

「デ~トのことじゃないのぉ?」

「するわけねーっつーの!別に聞きたい事があるんだよ!」

「ま~た照れちゃって~。私って女も罪よね~。」

女じゃねーし!全然話が進まねーわ!

「話にならんから帰るぞ!ココア行こう。」

「待って待って、ちゃんと聞・く・か・ら~。」

「・・・・・・ココア、帰るぞ。」


ボイドが助け舟を出してくれる。

「お待ちください、タロウ様。私でもわかる事なら聞かせていただいて宜しいでしょうか。」

「ボイドか、早く出て来てくれよ。あいつ、私と話をする気ないし、話にならないんだよ。」

「いえいえ、ママは大変タロウ様の事を気に入ってらっしゃいますよ。今日も・・・」


「ちょーーーっと待て。ママって誰の事だ?」

「ベッキー様ですが?」

何をサラーっと普通ですが?みたいな雰囲気で言うんじゃない!もう話が進まないから流してやるよ。もうそのことには触れませんよ。


「捕獲に来た冒険者について聞きたいんだ。そいつらがまだ再起不能のようでね。」

「ああ、来ましたね3回も。相手にもなりませんでしたが、何人かママの毒牙にかかってましたね。キスマークだらけになってましたよ。」


やっぱり毒牙なんだ。天使のキスでは無いんだ。

「たぶんそいつらだな。そいつらが、まだ精神的に回復してないようなんだ。なにか方法は無いもんかな?」

「それは簡単でしょう。ママに恋人ができたとわかれば、そいつらも安心するでしょう。ね、タロウ様。」

「私に振るんじゃない!断固断る!」


ベッキーの恋人役を私に振るんじゃない!私は女が好きなんです!


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