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第75話 ユニコ

次の日は、ココアから昨日の魔物の収穫と妖精樹と砂糖の鉱石を半分受け取り、ノアからも少し果実も貰って皆を送り出した。

ソラは依頼の薬草素材は、もう持っていたそうだ。


果実と砂糖を依頼を受けた者達でそれぞれの依頼先に届けに行き、ノアとついでにソラは果実酒を、世界樹組はケーキを、それぞれ報酬を楽しんでいた。

ララとロロとヒマワリとヒナタには少し宿で待っているように言う。


私は、先に工房へ行き、ココアから受け取った妖精樹の枝をノースベルに渡した。

空間を広げるのは自分でできるから、家を作って貰うだけにした。

ノースベルは、今日中に仕上げてやると息巻いていた。今度は小さめでも良さそうなんで、2メートルのサイコロの様な形にしてもらって杭を打てるようにしてもらった。

丁度、試作家が良い見本になった。大きさも同じぐらいだし。


冒険者ギルドに入ると、ギルマスのフェリードを呼び出して貰った。

マスタールームに通される。

「おはようございます。わざわざ来てもらえたということは、今日出発するんですか?」

「んー、それが、言い難いんだが。アラハンさんの時もこんな事があったんだがね。」

「はい、なんでしょうか?」

「依頼の件ね。」

「はい。」

「3件あったよね。」

「はい。」

「もう終わっちゃった。」

「いや、いくら受けたくないからと言って、そんな嘘は通りませんよ?」

「わかる。わかるよ。そう言いたい気持ちは。私が同じ立場ならそう言うだろう。だから、誰も連れて来なかったんだ。そんなこと言うと怒って何するかわからんからな。」

「証明するものは、あるんですか?」


ユニコーンの角を1本出した。

「1本で良かったのかな?」

「・・・・・・・。」

おーーい、帰って来いよーー。


「フェリード?フェリード?フェリード!!」

「あ!は、はい!」

「ユニコーンの角だが、1本でいいのか?」

「は、はい・・・、この大きさなら1本で十分かと・・・。」

「じゃあ、1件達成だな。」

「は、はい・・・。」

「続けていいか?」

「ちょっと、待ってください。」


フェリードは一度席を立ち、顔を洗って頬を摘み、気付けに目覚まし草を嗅いで席に戻って来た。

今度はユニコーンの角を手に持って見ていた。


「幻術では無いようですね。驚きました。」

「続けてもいいか?」

「お願いします。」

「ダンジョンだが、うちの坊主共が3階の宝箱の件を受けてたよな。」

「はい。」

「そのままクリアしたんだ。50階まで。」

「・・・・・・・。」

おーーい、今度はどこ行ったーー。


目をパチパチして、両手で頬をバシバシ叩いてる。

「そ、それを証明するものは?」

「無いな。でも、私にはわかったから報告するしかなくてな。」

「確かに、ダンジョン核はそのままで、という依頼ですから。証明は難しいですね。」

「今なら、ダンジョンマスターを排除してすぐだから、確認に行けるんじゃないのか?フロアマスターもやっつけてたみたいだし。」

「そうですね、すぐに手配します。」

「今なら、クリアした連中を宿で待たせているから、心配なら付けてやるぞ?」

「そうですね、お願いします。」

「じゃあ、先に手配してやってくれ。」

わかりましたと、ギルマスはふら付いた足取りで1階に降りて手配してくれた。


フェリードは首を振りながら席へと戻る。目の焦点が合って無い。まだ足もふら付いていた。

「続けていいか?」

「お、お願いします。」


「世界樹の分家の木な。解決した。」

「・・・・・・・。」

フェリードが必死で堪えているのがわかる。

少しだけ待ってやろう。

「そそそそれをしょしょ証明するももものは?」

「行けば分かるんだろうけどな。もう魔物もいないし。妖精樹の枝ならすぐに出せるぞ。今、工房にも1本置いて来たから。」


残念。フェリードさん。堪えきれませんでした。

KOです。


気絶はしなかったみたいだけど、変なことを小声でブツブツ呟いてたよ。

ドラゴンに乗ったら気持ちいいだろうなぁとか、アンデッド系の弱点は火の攻撃だ!とか。

なかなか戻って来れない様子だ。


見てないのにこれだ。私の依頼達成の情報を持ってて、ある程度予想してたんだろうね。その予想を大幅に超えたものだから、耐えきれなかったのかな?

初めにユニコーンの角も見たからね。


待ってるもの退屈なんで、受付にフェリードを介抱してくれと頼んで、依頼ボードを見る。

C以上の依頼書を全部はがす。そのまま倉庫係りの所へ行った。

「すまんが、説明を頼みたい。」

「なんでしょう?」

「この依頼書の魔物の姿がどんな形なのか教えて欲しいんだ。魔物名がわからなくてね。」


なんだ?こいつ新人か?みたいな顔で倉庫の係りは見て来る。

「これでも、一応Cランクの冒険者なんだぞ?まずはこれは?」


1枚目を見せる。

「これはヘルビーと言って、蜂の様な魔物です。Bランクですが、巣があった場合はAから下手をすればSになる場合もあります。」

「じゃあ、これだな。」

ヘルビーを出してやる。

係りの者が口を大きく開けて固まる。


「ん?違ったか?じゃあ、こっちか?」

と、別の魔物を出してやる。

係りの者はまだ動かない。少しプルプルしてきたようだ。

「そ、そ、それは・・え、A・・・」


「あ、これって1体じゃなかったか。依頼書には5体ってなってるな。サービスだ。」

10体出してやった。


倉庫係りは石化したように固まった。

大体こうなるよな。わかっててやったんだけどね。さ、回復するまで待つか。

だけど、魔物なんか毎日見てるんじゃねーの?解体係りなんだからさ。


名前で予想できそうなものを出してやっとくか。知ってるものもあるし。

だいたいの予想で、出しておいた。多めに。

依頼書は、係りの者に貼り付けておいた。


そろそろフェリードは回復してないかなぁ。

マスタールームに行ってみる。フェリードが秘書に介抱されていた。

大分戻ってきているみたいだ。


「お、戻って来たか?依頼完了でいいよな?それと秘書さん、今度は倉庫の人も介抱してやってくれ。」

フェリードが大丈夫そうな気配を確認して、秘書は倉庫へ向かった。


「フェリード?」

「はい、依頼達成で結構です。達成料を用意しましょう。」

バタン・バタンと人が倒れる音が2回した。


あ、秘書もかな?

「あー、フェリード。ちょーっと一緒に倉庫まで付いて来てくれないか?嫌な予感がするんだ。」

「さっき、介抱って言った・・・」


倉庫に着いたら2人共倒れていた。

バタン

後ろでフェリードも倒れた。


ええ?そんなにか?そこまででは無いと思ってた私の感覚がおかしくなってきたのだろうか?マーメライでは皆喜んでたぞ?


3人を受付前の長椅子に運んで寝かせて、回復魔法を使ってやる。

自分達では使ったことは無いが、覚えてはいる。使うことが無いからね。

熟練度は上げているから、効き目はあったようだ。


3人は気が付いた。


「フェリード?大丈夫か?」

「ああ、タロウさんか。酷い夢を見ていたよ。」

「酷い夢?どんな夢だ?」

「倉庫が高ランクの魔物で一杯になっていた。」

「え?それ、私も見ました。」

「お、オレも見た。」

3人共 大きな目になり見合わせる。


「ちょーっと待て!もー気絶すんなよー。話が進まなくなるからなー。」

「気絶?」

「そうだ、お前達3人は気絶したんだ。倉庫の魔物の山も現実だ。だから、もう気絶しないでくれよー。」

「う~ん」パタン。秘書がまた気絶した。


魔物の山ぐらいあるだろ!ここは冒険者ギルドだろ?お前達、免疫無さすぎじゃねーか?


「今日はもう帰って、明日また来る。精算はやっといてくれよ?」

ダメだこりゃ、返事も無-わ。


さぁて、何もすることが無くなったなぁ。ココア達はケーキだろうし、ノアは飲んでるだろ?ソラも付き合って飲んでるのかな?坊主達はダンジョンだし。偶には1人で町の外を散歩してみるか?


「そんな装備で行くのか?」という門兵を横目に町から出てみた。

あああ、何か開放感があるなぁ。ソラの気持ちが少しわかるような気がする。


1時間ぐらい歩いただろうか?突然声を掛けられた。

「お前か!我々の物を盗んだのは!」


誰だ?見てみると大きな大きな馬がいた。

頭に角が1本生えていた。ユニコーンだ。ユニコーンってこんなに大きかったの?

【那由多】?

――警告する必要性がありませんでした。

・・・・・はいはい。あなたもブレないね。


あっ!しゃべれる魔物だ!


いやいや、いかんいかん。また、仲間にしてしまうところだった。


「盗んだって何をだ?」

「惚けるな!我らの物を盗んだであろう!貴様からプンプン匂ってくるぞ!惚けても無駄だ!」

「だから、何を盗んだって言うんだ?」

「まだ惚けおるか!我らの角を盗んだであろう!さっさと返すのだ!」

「角って、私が盗った訳じゃ無いし、貰ったって言ってたぞ?ユニコーンから分けて貰ったって。」

「貰っただと?どこまでも惚けおる。貴様らに渡すわけがなかろう!」


端から疑って来る奴ってこっちが頭に来るね。逆らってやろう。

「うちの仲間が貰ったって言ってるんだ。貰ったものは返せないぞ。」

「何をー!力ずくでも奪い返してやるわ!」

「お前程度で私に勝てると思ってんのか?馬鹿だろ?お前。」

「ぐぬう、覚悟しろ!」

ユニコーンが私に突っ込んできた。

軽くかわす。


「走って突撃するだけか?芸が無いな。」

「何をーーー!!」

角に電気が帯電し、纏わり付く様にビリビリ電気が走ってる。

「これでも食らえー!!」

雷魔法が飛んで来た。


雷耐性があるんだけどね、軽くかわす。

「それだけか?もう無いのか?芸がないねぇ。」

「ぐぬぬぬぬー!」

「それだけしか無いんだな?わかった、今度は受けてやろう。」

「ぐがあああがあ!」

ユニコーンは、怒りを通り超え、言葉にもなってなかった。


ユニコーンがもの凄い速さで突っ込んでくる。

私はその場を動かず右手をユニコーンの方へ差し出す。

ユニコーンがそのまま突っ込んでくる。ドーーーン!!私は片手で止めてやった。


ズーーーン。ユニコーンが倒れた。


壁に自ら突っ込んで自爆するのと同じだった。いや、私はまったく動いていないから、もっと衝撃があったかもしれない。壁だと壊れたり穴が開いたりするが、私はまったく動いていないのだ。衝撃は全部ユニコーンに跳ね返って行く。

ユニコーンは自分で自分をやっつけた事と同じになった。


回復魔法をかけてやる。


「気が付いたか?まだやるのか?」

「ぐむむ。」

「本当に貰ったって言ってたんだ、うちの仲間はな。九尾の狐が人間に化けてるんだが。」

「確かに、狐と竜は見たが人間にはやれぬ。」

「なぜだ?私も今日は前回の反省もあり、仲間にならないかって言ってないんだよ?そうすれば簡単に・・・・」

「御意!」

私の額が光った。


「え?・・・・・」

いや、今の会話だし。えーーー!?


「もしかして、従者に・・・なってるよ。もう当分いらないんだけど。もう名前も無いし。」

「名前を授けてはくださらんのか!?」

「わかったよ、今考えるよ。」

「お願いいたす。」

「あ、先に聞くけど、お前変身って何になれる?」

「大きさを変えられるだけでござる。」

もう、ござるって言っちゃってるし。武士かよ。


「うちは、人間に変身するのと、料理と解体は必須なんだ。強めに願ってやるから、お前も願えよ!」

「御意。」


ホントもうキラキラを覚えてないんだよ。なんか武士みたいだから武士系でタケシとか安直すぎるか?馬だし武士だし、ウマザエモンは可哀相か。当て字なんかもあるから、読むと結構普通だったりするもんなキラキラって。よし!今、キラキラネームを編み出してやる。

んー、ユニコーンだしユニコなんか行けそうじゃね?あ、でも女の名前か。こいつは男だろうし。


「お前って男だよな?」

「女だ!」

「えええ!そのしゃべり方で女ー!?」

「そうだ、女だ!しゃべり方などどうでもいいであろう、早く決定いたせ!」

「でもござるって。まぁいいか。じゃあ、ユニコだ。」

ユニコは淡く光って覚醒した。


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