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第72話 依頼

2階のマスタールームに通された。

「初めまして、タロウさん。ギルマスのフェリードと申します。」

40前ぐらいの中肉中背で、170センチぐらいの浅黒い肌をした男だった。


「ああ、私はタロウだ。で、依頼か?」

「さすがはSカード。こういうことはよくあるようですね。話が早くて助かります。」

「ああ、100% 呼ばれるな。Sカードなんて面倒なもんを付けられて。これって返すことはできないもんかね?」

「いやいや、そう言わずに。返すなんて事はできませんよ。冒険者ギルドを脱退すれば別ですがね。」

「ふーむ、脱退かぁ・・・・。」


それは考えて無かったな。冒険者ギルドのメリットってなんだ?

入国、これは他のギルドでもいい。解体、これはできる。買取、面倒だが買い取り先を探せば売ることもできる。情報、確かにアラハンには良い情報をたくさん貰ったが、今はデルタが仲間になったしなぁ。あとは、ダンジョンぐらいか。人間が管理しているダンジョンは、冒険者カードが無いと入れないからな。でも、カインとアトムがいれば隠れて入ることができるような気もするし。逆に隠れて入ればダンジョン核を持って出ても何も言われないんじゃないか?ふーむ・・・。


「いやいや、まさか本気で考えているのでは無いでしょうね?」

「今、本気で考えていた。私達のメリットが、あまり無い。こういう風に呼び出される面倒を考えると脱退もアリだと思える。」

ギルマスの顔が青くなって行く。自分が呼び出したせいで、Sカード冒険者を脱退なんてことになると、責任問題では済まされない。目の前に居るSカード冒険者が演技では無く本気で考えているように見えたからだ。実際、本気で考えてたしね。


「ま、今の所うちはダンジョン好きが多いから脱退はしないけど、そのうち本気でするかもしれんぞ。」

「わかりました。思い留まってもらって助かりました。他の町の冒険者ギルドにも、あまり呼び出さないように連絡をしておきます。」

「そうしてくれると助かる。機嫌が良ければ私の方から声を掛けるし、町に出れば大きな依頼なら噂になっているからわかるだろ?その時、必要だと思えば声を掛けるよ。」

「機嫌・・・ですか。わかりました。そのように通達しておまきしょう。それで、今日の機嫌はどうでしょうか?」


めげないね、なんか重大な依頼があるのかもな。

「普通だ。呼び出しが無ければ良かったんだがね。今は普通になった。」

「では、申し上げてもいいでしょうか?」


おぉ!頑張るねぇ。

「ははは、流石はギルマスだ。今の一言で非常に気分が良くなった。頑張る人は私も好きだからな。そこまで、折れない所を見ると相当な依頼と見ていいな。」

「褒め言葉と取っておきましょう。では、早速依頼ですが、この町で困っている件が3件あります。これが、それぞれの依頼書です。」

3枚の紙を取り出した。


「3件の依頼なんですが、1件目は、この国内のダンジョンです。この国のダンジョンは、最近50年制覇されたことが無く、どんどんと魔物も強力なものになってきまして、一度ダンジョンマスターを倒していただきたい。そうすることで、一旦魔物のレベルも落ち着きますから。今では、地下2階にもランクBの魔物が出回るようになってしまって、挑戦者が激減してしまい、魔物を排除しないから更に魔物が強力になりと悪循環になっています。それと断っておきますが、ダンジョン核は そのままにしておいてください。」

「わかった。何階層のダンジョンなんだ?」

「50階層です。」


これは大丈夫だろ。たぶん。しかし

「この連邦には勇者がいるんじゃなかったか?そいつにやらせればいいんじゃないか?」

「確かに勇者様たちはゴーレーン国にいらっしゃいますが、こんな危険なことをさせる訳ありませんよ。」

「え?どういうことだ?勇者って強いんじゃないのか?それに達って、一人じゃないのか?」

「今回、勇者様たちは16名召喚されましたが、勇者召喚されてまだ5年しか経ってないんですよ。まだまだ危ない仕事はさせられません。」


多いな!そんなにいるのになのか?しかし5年もあったら強くなってるだろ?

「え?勇者って弱いの?レベルいくつ?」

「弱い訳ないです。勇者様ですよ!レベルも60は過ぎたと聞いてます。もっと安全な仕事をして、もっとレベルを上げていただいてからです。」


意味がわからん。あとで、デルタに聞いてみよう。

「わからんがわかった、次の依頼は?」


「2件目は、薬の素材の採取です。北側の金の産出国であるゴーランドの西にあるバーベラス山に生息するユニコーンの角の採取が依頼内容です。」

「ユニコーンに関する情報はあるか?」

「ユニコーンは一角獣とも呼ばれており、馬のような姿の大きな魔物で、頭に1本角を生やしています。群れでいることが多く、普段は大人しいのですが、人間が狩り目的で近づくと途端に襲われます。普通に通る分には、襲われた報告は入っていません。」


これも勇者には危ないのか?ゴーレーンって勇者の居る国だろ?別にいいけどな。

こっちは最悪、討伐でもいいよな?大丈夫だろ。

「わかった。次は?」


「3件目は、木です。」

「木?木なら、どんなに大きくても燃やせるだろう?」

「それが、昔 世界樹の接木をして育てられた妖精樹と言う樹で、本家には及びませんが直径30メートルはある大木なのです。火耐性も持っているようで、火攻撃は効きません。ここ数年、聖属性のはずの世界樹がなぜか魔属性の魔素を漂わせるようになり、ランクの高い魔物も棲みつくようになってしまい、困っております。」


「勇者の事は置いておいたとして、2件目は兎も角、1件目と3件目については軍は何をしているんだ?」

「ダンジョンは、ご存じの通り数の有利はありません。高ランクの兵士がパーティを組んで行きましたが、5階層が精一杯でした。世界樹については、軍は敗れております。木まで辿り着けなかったようです。」

「いつも思うけど、そういうのを一介の冒険者に依頼するってどうかと思うがな。まだメリアーナはマシな方だったよ。」

「メリアーナというと、マーメライのギルマスですな。女性ということで珍しいので名前だけは知っています。」


「ああ、彼女は軍が破れた水龍討伐は、依頼してこなかったぞ?」

「しかし、討伐完了されていますね。そう報告が入っていますよ。伯爵にもなられたとか。」

「あー、伯爵の件は忘れるように。私は受けるとは言っていないから。」

「では、忘れましょう。依頼の件は受けて貰えますか?」

「色々思うところはあるが、受けよう。でも準備がいるから、準備出来次第の出発になるぞ?」

「それはもちろんです。こちらでも協力できることは惜しみませんので。」


「じゃあ、腕の良い工房と鍛冶屋と服屋と魔法屋がいたら紹介してくれ。あと、14人が泊まれる宿だ。」

「わかりました。」

「ここはダムダライド王国かマーメライメント王国と通貨は同じなのか?」

「いえ、貨幣価値は同じですが、通貨は違います。」

「じゃあ、換金も頼む。マーメライメント王国の通貨で金貨3000枚換金してくれ。」

「わかりました、準備いたしましょう。」


1階に降りると、皆 依頼書を持っていた。

「あれ?何で依頼書を持ってるんだ?」

確かに行きたいものがあれば、選んでおけとは言ったけど。珍しいな。


「近場で、高ランクで好みの依頼がありまして。」とイロハが言ってきた。

ソラは薬草採取。デルタは遺跡調査。ノアは果実採取。ララとロロとヒマワリとヒナタのチビッ子4人組はダンジョン。残りのココア、ミルキー、ショーン、アゲハ、イロハ、カインは砂糖採取。

砂糖!?あるのか?報酬がケーキ10年分って。

皆 ケーキに食いついたんだな?あるんだ、ケーキ。やっぱりカインは入ってるんだ?

隠れ甘党か?


砂糖あったよ【那由多】!

――私の情報にはありませんでした。最近できたのでしょう。


「砂糖ってあるんだな。しかも依頼ランクAって。あ、ギルマス?私達は一応Cランクだが、Aの依頼でもいいよな?」

「もちろん結構です、こちらも助かります。さっき、依頼に入っていた妖精樹の近くに砂糖の鉱山がありまして、高ランクの魔物が多く棲みついたので、取りに行けなくなりました。3年前に勇者様のお力でできた鉱山で、まだ他国には知れ渡っていない鉱山です。他には無い鉱山ですので、箝口令が布かれています。タロウさん達も、他国で話すと厳罰が待っていますので、ご注意ください。」

換金のために付いて来てくれたギルマスが説明してくれた。


どこを突っ込んでいいかわからん。勇者の力?砂糖?討伐?

妖精樹の魔物も勇者の力とか砂糖が絡んでるなじゃ無いのか?


砂糖に付いては【那由多】の言う通り、最近の話だったな。

「砂糖の鉱石って・・・・。」

さすがファンタジー。あればいいなとは思ってましたが。勇者の力とは・・・。


「ダンジョンって・・・?」

「あ、それは3階に降りたところに必ずある宝箱に入っているアイテムです。入っている物はランダムですが、以前からその宝箱には必ず良い物が入ってるんです。」


ソラは分かるが、ノアの果実採取って・・・あ、報酬が果実酒10年分だ。

なるほどね。


「わかった。まずは、宿に入ってからそれぞれ行けばいい。私は、依頼を受けたから、今夜にでも相談する。それまでに、私も準備をしないといけないから、まずは夕食までは自由でいいぞ。」


「やったー、わたしダンジョン行ってみたかったんだ。」

「僕も!ロロ兄ちゃんが連れてってくれるって言ったから楽しみだよ。」

ヒマワリとヒナタが嬉しそうに(はしゃ)ぐ。

しかし、ダンジョンってそんなにいいもんか?


「ララ、ロロ、3階層までだからいいけど、無理するなよ?」

「わかってるよ!何個ダンジョン制覇したと思ってるの?」

「そうよ、私達これでもダンジョンマスターキラーの称号を持ってるんだから。」

そんな称号付いてたんだ。あ、ホントだ。付いてるよ。


「ここは50階層らしいからな、準備してからだな。」

「「はーい・・・」」

メタル系武器も渡してあるし、耐性も大分付いてるから大丈夫だとは思うがな。



宿に入り、いつも通りこの町に合わせた服に変身してもらい、キチンと準備をするんだぞと言って 金貨100枚ずつ渡した。


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