第65話 倉庫満タン
私達3人は、3階のマスタールームに通された。
「無理を聞いてくださって、ありがとうございます。」
「いや、観光案内も楽しみだから、依頼内容を聞こうか?入り江の水龍か?」
「もう知ってらっしゃいますのね、話が早くて助かりますわ。タロウさんは、どこでSカードになったのでしょうか?」
「ロンレーンの町だ。ギルマスのアラハンさんが私の了承も無く勝手に付けたよ。」
「まぁ、アラハンでしたか。彼とは何度か本部で会っていますわ。そういう事しそうですわね、彼なら。」
「アラハンさんを知っているのか?本部ってどこにあるんだ?」
「本部は、中央のバンブレアム帝国にあります。彼は今でも武器好きでしたか?」
「そんなことも知っているのか?そんなに有名なのか?確かに武器には目が無いようだな。そのお陰で、ご機嫌取りが簡単だったよ。」
「一応、武器好きは隠しているつもりのようですけど、バレバレでしたわ。タロウさんとは、お互い様の関係のようですわね。」
「ま、迷惑もかけたからそうなるのかもな。それで?依頼の件とは?」
「お察しの通り、最優先事項は入り江の水龍ですが、これは軍でも手を付けられないほどの依頼です。無理にとは言いません。それよりも、別の件がありまして、できればそっちの方をお願いしたいのです。」
別件かぁ、水龍ならもう解決したから、すぐに観光案内させてやろうと思ったのに。
「水龍じゃないのか。じゃあ、どんな依頼なんだ?」
「水系魔物の討伐依頼です。ここ何年も、素材不足で非常に困っていまして、この町の活性化のためにも少しでも構いませんので討伐していただきたいのです。依頼書は下の掲示板にありますので、確認していただければと思いますが。」
「んー、そんなことか。じゃあ、もう解決してるんじゃないか?」
知らない魔物は死んだら【鑑定】してもわからないので、なんていう魔物かわからないが、あれだけ獲ったんだから大丈夫だろ。
「そんなことって、解決ってどういうことですか?私は真面目に話をしているのですが。」
「私も真面目なんだが。しかし、先に鍛冶屋と約束しているから、あっちがいらないものなら回せるし、大丈夫だと思うぞ?ちなみに水龍討伐の達成料はいくらなんだ?」
「どういうことかまったくわかりませんが、水龍討伐は金貨5000枚です。私の弟も、水龍討伐の犠牲者です。水龍の関係の話は私には冗談で済まされない話ですわ。」
メリアーナは少し苛立ってきた様子だった。
弟が犠牲者なら、水龍を仲間って飲めないだろうなぁ。どうしたものか。
「んー、冗談では無いんだが。見てもらう方がいいな。今から一緒に鍛冶屋に行こうか。そこで見て、判断してくれたらいい。」
「一緒に行けばわかるんですね。わかりました、一緒に行きますわ。」
大分怒っていたようで、すぐに席を立って鍛冶屋に向かった。
「やぁ、さっき振りだな。約束通り持って来てやったぞ。武器を作ってくれ。」
「あ、あなたはさっきの。約束通りって水系魔物の武器ってことですか?」
「そうだ、魔物の名前は知らないので、どんな姿の魔物か言ってくれたら出すぞ。サメとクジラみたいな奴、シャーガーとホエーラーだったか。それはわかるから、先にそれを出してやろう。デカいからな、倉庫はどこだ?」
鍛冶屋の弟子とメリアーナは、何を言ってるんだ?みたいな顔になっている。
よく見るよ、その手の顔。そして、その後の顔も。今回は、説明が面倒なので敢えて何も言ってないからな。初めにメリアーナに騙された分もあるし。
シャーガーとホエーラーを1体ずつ出してやった。デカい魔物だから、2体だけで倉庫が一杯になった。ホエーラーなんか倉庫から大分はみ出してしまっている。
「すまんな、解体はまだやってないんだ。海にいる水系魔物は、まだ解体をやったことがなくてな。どの部分が、どういう素材になるとか知らなくてな。」
2人共固まってしまって、こっちの話は聞いてなかった。
予想通りの反応だね。
「どうする?ここで解体まで、やってくれるのか?」
鍛冶屋はブンブン首を振り拒否を示すが、やっぱり声が出てない。
「じゃあ、メリアーナ。そっちでできないか?」
メリアーナは 魔物から目を離さずゆっくりと頷いた。
「じゃあ、後で素材だけ持ってまた来る。」
と言って魔物を収納した。
「メリアーナ、行こうか。」
目が開き過ぎて瞬きも忘れているメリアーナを連れて冒険者ギルドに戻った。
倉庫に行き、さっきのシャーガーとホエーラーを出した。
驚いている倉庫の係りの者に解体をお願いして、メリアーナを依頼掲示板まで連れて来た。
「さあ、教えてくれ。この依頼書の魔物はどんな姿をした魔物なんだ?」
「ちょ、ちょっと待ってね。まったく状況が飲み込めて無いの。少し整理させて。」
「ああ、わかった。どのぐらい待てばいい?明日にするか?」
「い、いえ大丈夫よ。少しだけ待って。」
アラハンもこんな感じだったなぁ。ココアに威圧でやられた後も頑張ってたもんなぁ。
その間に倉庫に戻って、まだ突っ立っている係りの男に、早くやれと催促しておく。
武器素材は、こちらで貰い受けるから後は買い取りでと伝えておく。
30分ぐらい待ったら、ようやくメリアーナがやって来た。
「ごめんなさい、流石はSカードということなんでしょうけど、未だに信じられないわ。どういうことか説明はしていただけるの?」
「初めに私の方がやられたからな。仕返しも少しあったから、説明ぐらいはしてやるか。」
「受付の件ね、それと比べるには余りにも差があり過ぎない?」
「はっはっは、私は負けず嫌いなんだ。」
「さっき報告が入ってたみたいなんだけど、入り江で落雷があった件と関係があるの?」
「報告が入ってたか。ちょっと試しただけなんだがな。ココアがやったんだ。」
と、ココアに向かって親指で示す。
「試しただけって、それでどうなったの?」
「言ってもいいのか?知らない方がいい事もあるぞ?」
「いいえ、私はギルマスです。お伺いしますわ。」
「わかった。私達は風魔法を使って入り江の奥まで飛んで行ったんだ。そこでココアが雷魔法を使った。そしたら威力が思ったより強くてな。500体以上の魔物をやっつけてしまったんだ。回収できた 魔物だけで500体ぐらい持ってるよ。直撃した魔物は形も残らなかったよ。」
「ご、ご、500・・・・・。」
葛藤してるなぁ。わかるよ、そういうの。何度も見て来たから。
しかし、水龍の件はどうやって誤魔化そう。これだけは言えないよな。
カインが仲間になったって言ったらメリアーナは絶対認めないだろうな。弟の仇だからな。
「で、どうする?全部出してやってもいが、場所が無いだろ?私達もいつまでもこの町に居る訳じゃ無いからな。」
「それなら 城で・・・・」
「却下。そういうのは面倒だからすべて断ってる。」
「でも・・・、そんな場所なんて無いわ。」
「じゃあ、まずは倉庫に入るだけ出そう。その後のことはまた考えよう。」
最悪、亜空間収納ボックスを渡してでも、城に行くのは避けたいよな。絶対面倒事に巻き込まれるよ。
「そうね、そうしましょうか。」
「それで、観光案内はいつやってくれるんだ?」
「あなたって・・・・・色んな意味で凄いわね。アラハンも苦労してるんでしょうね。」
「はっはっはっは。そうかもな。じゃあ、倉庫で出すから見てくれよ。素材に関して教えてほしい。」
「わかったわ。」
倉庫が満タンになるまで、魔物を出してやった。種類がダブらないように色んな種類を出して、メリアーナに解説させた。初めは驚いてばかりだったが、段々と嬉しくなって来て飛び上がったり、解説が早口になったり、最後の方は感激で涙ぐんでいた。
サービスで、武器素材に良い魔物の解体を優先させて、さっきの鍛冶屋に届けてくれるそうだ。
初めは動揺していた倉庫係りも、久し振りに腕を振るえるとあって、張り切って解体を始めた。非番の者も呼び出され、大急ぎで解体がされていく。
今日はもう大忙しになるだろうから、私達は宿に帰ることにした。
「明日、また来るけど、最後に一つだけ聞きたいんだがいいか?」
「なんですか?」
「水龍の討伐だが、何をもって討伐達成になるんだ?もう消滅してしまったかもしれないし。」
「もちろん、水龍の死体があれば一番いいけど、無くても牙があればいいわ。最悪、爪か鱗でもいいわね。爪か鱗なら、死んでない可能性もあるから認められるのに時間は掛かるけど、牙なら早いわよ。」
「わかった、ありがとう。明日また来るよ。観光案内、期待してるよ。」
「まだ言ってる。わかったわよ。」
「大分元気になったな。じゃあ。」
冒険者ギルドを後にした。
「まだ、時間は早いな。ココアは行きたいとこ無いか?」
「いいのですか?」
「ああ。」
「では、甘いものが食べたいです。」
「わかった。カインも付き合ってくれな。」
「御意。」
甘い物って何があるんだ?砂糖が無いのにどうやって甘味を取るんだろ?やっぱり果物か?
町で聞きながら探していると、蜂蜜と水飴を見つけた。
蜂蜜は、パンに付けて食べるのが主流のようで、私達もそれに倣ってパンに付けて食べた。
当然、甘かった。久しぶりの甘味は美味しかった。
ココアも十分満足できたようだ。そりゃ5回もお替わりすればね。
カインも3回お替わりしてたけどね。意外と甘党のようだ。
水飴は小さな壺に入ってるのが売っていたので、それを買って宿に戻った。




