第64話 水龍
店を出て、海に向かう途中の人目に付かない所で、メタル系の魔物を出し、ブレスレットを作りさっき水龍の刀から解析した水中呼吸をブレスレットに付加効果として付けた。
2個作り、ココアと装備した。
水系だから雷魔法なんかが効くのかな?私もココアも雷系はあまり得意じゃないんだよなぁ。などと考えつつ、海に来てみたら港は閉鎖されていた。
検問の人に聞いてみた。
「ここは通れないのかい?」
「なんだ?お前たちは。ここは閉鎖中で、冒険者以外は通行禁止だ。」
あ、ラッキーか?
「冒険者ならいいのか?」
「Cランク以上の冒険者なら構わないが、通ってどこに行くんだ?」
「最近、この町に来たところで、水系の魔物をあまり知らなくてね。ちょっと見てみたいと思ってるんだ。通っていいかい?」
と、冒険者カードを見せた。私もココアもCランクなので、通してもらえた。
私達が軽装なので、ホントに様子を見に来ただけだと思ったのだろう、それ以上特に注意はされなかった。「見れないだろうがな。」とは言われたが。
海辺にまで来てみた。防衛線はここより後ろの方で、海に近づく者はいなかった。
「ココア、飛んで行って入り江辺りの様子を見てみよう。さっきのブレスレットには、付加効果として水中呼吸が付いているが、海に落ちれば魔物に取り囲まれるかもしれないから、落ちないようにしてくれよ?」
「かしこまりました。どのように水龍を排除しますか?」
「いや、様子を見に行くだけだよ。雷魔法なんか効果はあると思うんだが、私達はあんまり得意じゃないだろ?だから、他にどんな攻撃が有効なのかも調べておきたいと思ってね。」
「わかりました。それでは私は小判で攻撃してみます。」
「あぁ、それはいいかもな。じゃあ、行くか。」
風魔法を利用して2人とも飛んで、入り江に向かった。
魔物を警戒して、少し高めを飛んだので入り江の入り口まで難なく到着した。
「この辺りかな?下に見えるのが、シャーガーって奴じゃない?背びれなんかサメって感じだし。」
全長が10メートルは 優に超える魔物だった。
「私はサメを見たことがありませんのでわかりませんが、小判を試してみてもいいでしょうか?」
「ああ、やってみよう。」
ココアが小判を出し、雷魔法を1発。
グァララドララバッキーン!ゴロゴロドッカーーーーン!!!!ビリビリビリビリーーーー!!!
ものすごい雷鳴で巨大な稲妻が真下の海へ落ちた。
500体では利かない魔物が海面に浮かんでいる。
やっちゃった? 小判、凄っげーわ。半端ないね。さっきのシャーガーって、完全に消滅しちゃってるよな。別の所に同じ魔物も浮かんでるけど、さっきの奴じゃないよなぁ。
凄い威力だな、小判。ココアの雷魔法って、ホント大したことないんだけどなぁ。
どんだけ魔力を溜め込んでたんだ?
「何奴じゃー!!我の眠りを妨げる愚かなものはー!」
あ?あれが水龍かな?しゃべれる龍だ!
「おい!お前!私の仲間にならないか?」
「御意!」
私の額が光った。
あ、
しまった。しゃべれる魔物だったから、つい。
従者になっちゃった。ココアが少し削ってるし、100%だったよね。
仲間になったんだから、連れて行くしかないよなぁ。
でも、こいつってもう10年以上ここで人間を相手にしてたんだろ?変身は必須だな。このままじゃ連れて行けないよな。
名付けで変身を強めに付けてみよう。
「お前って雄?雌?」
「雄だ。」
「じゃあ名前は、海だしカインだな。」
わかってましたよ、ココアさん。キラキラですよね。
水龍は淡く光って 覚醒した。
名前: カイン
年齢: 1007
種族: 竜族(青龍)
加護: 佐藤 太郎の加護
状態: 普通
性別: 男
レベル:37
HP 2256/2256 MP:2896/2896
攻撃力:2441 防御力:3002 素早さ:2287
魔法: 火(1)・水Max・土(2)・風(6)・雷(1)・神聖(1)
技能: 牙(8)・鱗Max・剣(1)・槍(7)・弓(3)・ブレス8・料理(3)・遮断(3)・回避(2)・解体(3)・保育(1)
耐性: 風・木・水・雷・毒・麻痺
スキル:【変身】6【痛覚無効】5【超速水中移動】4【再生】5【水操作】9
ユニークスキル: 【結界】
称号: マーメライ入り江の主
覚醒してこれって、ララやロロより弱かったのかもな。海の中じゃ手出しできないけど。
よしよし、変身付いてるな。青龍に進化しちゃったようだけど。青龍って、東を司る神の名前じゃなかった?
結界って何でユニークスキル?
――カインの【結界】は余程強力な結界では無い限り、自由に操作できる能力です。
それは便利?なのか?無いよりはいいけど。
――非常に便利です。
そうなんだ。
「ココア、先に魔物の収納をしよう。生きている魔物は収集できないからわかるだろ。主が居なくなって、どうせ弱体化するから、生きていたら止めを刺して回収しようか。」
「かしこまりました。」
「カインは、人間に変身して浜辺に行って待ってろ。」
「御意。」
30分と掛からずに、私達は浜辺で合流した。
人間の姿をしたカインの髪は青かった。明るい青では無く、海の色の様に濃い青だった。
逆に目は明るい青だ。背も175センチぐらいで 私とあまり変わらなかった。細身で 凄くモテそうな色男だった。魔物って変身だからか、みんな美男美女になる。反則だな、腹が立つよ。
晴れているのに凄い雷だったので、魔物だと思った軍が出動してきていた。
飛んで来たとこは見られなかったようだ。
「おい!そこの奴!ここは危険だからすぐに非難するんだ!」
「は、はぁー。わかりました。」
何の装備もしていない私達を見て、野次馬か遊びに来ていた冒険者と思ったのだろう。
私達3人は、海岸を離れ町へと戻って行った。
このままではカインの出門ができないので、仕方なく冒険者ギルドに行くことにした。
「仕方が無い、冒険者ギルドに行ってカインの登録をするか。」
この町の冒険者ギルドも3階建てだった。ただ、幅はロンレーンの冒険者ギルドより遥に大きかった。
「登録したいが、いいか?」
受付で尋ねる。
「はい、こちらにご記入ください。」
私が代筆して書いてやる。申請書を受付に渡した。
カインは水晶に手を翳したが反応は無く問題なかった。
どういうことなんだろうな。絶対討伐に来た人間を倒しているはずなんだがな。
「登録はこいつだけだ。私とそっちの娘はもう登録してあるんだ。」
「かしこまりました。パーティ名はありますか?」
今回の報告もあるし、仕方が無いか。
「ウルフォックスで頼む。」
「かしこまりました。パーティ名ウルフォックスで登録完了しました。」
「ありがとう。」
そのまま出て行こうとすると、さっきの受付に呼び止められた。
「少しお待ちください。こちらでお話しさせていただいても宜しいですか?」
「なんだ?別に用事は無いぞ?依頼の件は、また見に来ようと思ってたが、今日はどんなところか見に来ただけだから。」
「お見受けしたところ、あなたがパーティリーダーのタロウさんですね。初めまして。」
「なんでわかる?」
「申し遅れました、私はこの冒険者ギルドのマスター、メリアーナと申します。」
「え?受付だったよな?ギルマス?しかも女?」
ギルマスのメリアーナは普段から偶に受付をしているそうだ。
ここの冒険者ギルドは規模も大きく、他所からの冒険者が来ることも多いそうで、揉め事もよく起こるらしく、その抑制にたまに受付に出て様子を見ているそうだ。
規模が大きいと言う事は、従業員の数も多いからギルマスが受付にいることで、従業員の監視や指導もできるという相乗効果もあるそうだ。
でも、そんなことをしているギルマスはこのメリアーナだけらしいが。
しかし・・・・、油断していた。っていうか、汚ねー。
「すごく騙された感じがして気分が悪いんで、帰らせてもらっていいか。」
「気分を害されたのなら謝ります。申し訳ありませんでした。でも、Sカード所持者なんて私がギルマスになってから初めての訪問なので、つい声をかけてしまいました。少し、お話ししていただけませんか?」
へぇ、えらく腰が低いギルマスだな。計算高いのか、本心なのか。謝ってもらったし、少し話を聞いてやるか。
「わかった。少しだけなら話を聞こう。依頼の話なら、明日改めて来るからその時にしてほしいが。」
「先に言われてしまいましたね。依頼内容だけでも聞いてもらえませんか?」
「だから来たくなかったんだがな。今日、この町に着いたところなんで、まだ観光もしてないんだ。せめて今日ぐらいはゆっくりしたかったんだが。」
「わかりました。お話を聞いていただければ、私が観光案内をいたしましょう。」
「ほぉ、ギルマス自ら観光案内をしてくれるのか。よし、わかった。話を聞こうか。」
「ありがとうございます。」




