第62話 旅の準備
皆で夕食を摂っていた時、東の国話になりララがココアに聞いていた。
「ココアさんの武器って、東の国ものなんですか?」
「そうですよ。薙刀って言うんです。」
「へぇ、私今、ココアさんの薙刀と、ミルキーさんの槍のどちらにしようか悩んでるんです。」
ミルキーの槍か。丁度話に出たな。
「ミルキー?」
「はい、なんでしょう。」
「お前のやってる槍の伸縮って、誰でも出来るものなの?」
「たぶん無理なんじゃないでしょうか。武器を縮めたりするのはスキルの【変身】の応用ですから、私やソラさんのようなスキルの使い方ができないとダメだと思います。」
「一度、ダメでもいいから伸縮しているところを解析させてくれないか?」
「ええ、結構ですよ。」
ダメな気はするなぁ。
「ミルキーは収納を持って無かったよな?」
「はい。」
「ソラとココアはもう持ってるから、皆に亜空間収納ボックスを作ろうと思ってるんだけど、箱っていうのも味気ないと言うか、何か違う形にしたいと考えてるんだけど、何がいい?」
「好きな形にできるんですか?」
「できると思うよ。皆、武器や防具を普段から持って無いし、手ぶらって感じがいいと思うんだよね?だったらお洒落な方が良くないか?」
「そうですね。でしたら私は、指輪でしょうか。アトムもドレミも共同で使うことになりますので、派手では無い感じがいいですね。」
「指輪かぁ。いいな、それ。他もリクエストがあったら受けるけど、指輪でいいんじゃないか?」
「わらわはぁ、ネックレスがいいですわぁ」
「それもいいな。他は無いか?」
「ボクはブレスレットがいい!」
「おぉ、ブレスレットか、ロロなら細めのバングルが似合いそうだなぁ。」
「バングル?」
「お前に似合いそうな奴だよ。手甲をしても邪魔にならないだろうし好きな色だけ決めておけ。ララは?」
「私は、この前にいただいた櫛が気に入ってます。」
悪魔3人は指輪だった。
その後もココアとロロとララは、まだ話を続けていて、私の出してやった缶詰の話までしていた。
また日本の飯が食べたいなぁ。こいつらといると、魔物の肉を食う事が多いんで米と味噌と醤油はまだまだあるけど、そのうち無くなるから補充したいしなぁ。
酒は飲んでないから残ってるけど。
そういや缶詰って食べた後、収納してたよな。
別に入れてても邪魔にはならないけど、捨てるとこないかなぁ。その前に、味の再現ってできないもんかなぁ。
今日、寝る時に試してみよ。
部屋に入り、机の上に収納していた缶詰の空を出す。
いくつかには缶の底にタレがまだ残っていたので、一つの缶に纏める。
ソラもココアもあの時は美味しい!と言って 缶を最後まで舐めていたから、残っているのは私の食べた分だけだろう。亜空間収納だから、時間も経過してないし。
とは言え、念のため缶を火で炙って消毒。
少し冷まして舐めてみた。
懐かしい~。(【那由多】解析できないか?)
――解析は済んでいます。
(じゃあ、再現できるのか!)
――素材が足りませんのでできません。
(そうなのか、残念だ。あと何が足りないんだ?)
――砂糖、味醂です。
(砂糖はこの世界に無いの?)これは前から気になっていた。見たことが無いんだよ、この世界で砂糖を。
――ありません。
やっぱり無いんだ。味は【那由多】が解析してるから、素材だな。砂糖マウンテンとか無いものか?無いよなぁ。
なんだっけ?サトウキビとテンサイだっけ?どっちかだけでも無いかなぁ。
また、今度舐めよ。と集めたタレは収納。残った空き缶を見て、
あれ?これって・・・・・・刀 作れない?
まずは、コピーで作ってみた。
出来た。
【鑑定】
名称:異世界の金属の刀
種類:刀
攻撃力:5000
守備力:0
効果: 結界無効
うおおおおおおおおおお!!!!
でーーきーーたーーー!!!
最強―――!!!
声を出さないように堪えるのに必死だった。
これは絶対秘密だ。
攻撃力5000って、ダメだろ。無敵すぎる。メタルでもダメなのに、これは・・・・
でも嬉しいーーー!!!鍛治神金山彦様ありがとーーーーー。
少し経ってやっと落ち着いた。
冷静になって考えよう。
この刀は封印だ。私が持ってるだけで、皆欲しがるし、強すぎて怖い。
ただ、効果に結界無効ってあるし、しかも付加効果じゃなくて効果だし。何かの時には使おうかと思う。バレないように。
結局、今の所味わったことは無いが、絶体絶命のピンチになったら必ず使おう。
戦闘で傷を負ったのは虎刀牙の時ぐらいだからな。あの時は碌な武器も無かったしな。
【再生】の熟練度も、戦いではなく自分で走った時に身体に負荷が掛かり耐えられなくて上がったり、後は料理や解体の時に自分を傷つけて上がったものだからな。
ピンチの時の為に、皆の専用武器は念のため作っておこう。絶対に出さないが。
全員の武器を作っても、空き缶は20個余った。
ララとロロの鎖帷子だけ作っといてやろう。過保護でもいい、傷つかれる方が嫌だ。
インナーだし、見えないだろ。防御力は3000だった。これで、頭をやられない限り死ぬことはないだろ。メタルでも十分だったけど。
残りの空き缶は、封印だ。
空き缶を作っている時に思い出したが、私の最初の武器って金属バットだよなぁ。
調べてみるか。
【鑑定】
名称:異世界の金属のバット
種類:金棒
攻撃力:5000
守備力:0
効果:形態変化
何なんだよ、異世界の物って。攻撃力5000なんか、手加減できねーよ。でも、形態変化ってあるのなら、虎刀牙の刀にしておけば、バレないかもな。
いや、怖いんで今は辞めとこ。
もう、無かったか?あ、服。なんとなく見たく無いから、今日は辞めておこう。
まだあった、短刀だ。
見るだけ見ておこうか。
【鑑定】
名称:東の国の短刀
種類:短刀
攻撃力:1000
守備力:0
効果:転送99
なんだ?転送99って。
目の前に出ている鑑定結果の転送99の所を押してみる。
効果
転送アイテムです。99か所転送ポイントを登録することができます。
半径10メートル以内で、自分の指定した者であれば全員同時に転送可能。
短刀を持っている人と一緒に転送します。
非常にいいんだけど、一緒に転送っていいんだか。
念のため魔法陣も作っておこう。
転送魔法もレベルが上がり、往復通行ができるようになった。
もちろん、錬成者の私が定めるものだけが通れるように、フィルターもかけてあるので、他の者が勝手に転送されることは無い。出し続けていても安全になった。
次の日から、ララとロロの武器の熟練度上げには私も付き合った。
ミルキーの槍の伸縮も解析はしてみたが、再現が難しかった。
私にもできるようになったのだが、武器に頼るのではなく、ミルキーの言う通り【スキル】によるところが大きかった。
ララは槍、ロロは長刀で落ち着いた。
もうSカードの冒険者としても恥ずかしくないぐらいの実力にはなった。
うちの連中の中では一番格下だけどね。あとは経験かな。
魔法陣は町を出て、目立たない所に作った。入門もしていないのに町の中にいるのはおかしいと思ったからだ。魔法陣は、魔力を全部使って錬成した。
アトムに闇魔法と【隠蔽】で魔法陣は見えないように隠して貰った。
短刀で転送ポイントも登録しておく。魔法陣の傍で短刀を地面に突き刺し登録完了。
先に、家の庭にも登録はしたので、これで2か所目だ。
マーメライは遠いだろうから、できる限りのことはしておきたい。
これでも、中身は50歳。大人ですから。
そして出発の日を迎えた。
「さぁ、ノア頼むぞ!」
「出発しますわよぉ。一気にマーメライを目指しますわぁ。」
「ああ、マーメライ方面に向かって、行ける所まで行こうか。」
そして昼前に、マーメライに着いていた。
「え? もう? なあ、ノア?」
「言って無かったかしらぁ、我が主が、熟練度をMaxにしろって言うからぁ、Maxにしたらぁ【超高速移動】がぁ【神速移動】に進化したのよぉ。」
はい?聞いてませんけど。すっごく準備もしましたけど。日帰りオッケーなんですか?




