第55話 ララとロロ
翌朝
朝食は宿では無く、裏に簡易家を出して、私が朝飯を作ってやった。
ララとロロも不安だろうから、全員で朝食を摂りながら、話もして気持ちを解してもらおうと思ったからだ。
この案は良かったみたいだ。
ソラやココアもそうだが、以外にもアゲハとイロハが面倒をよく見てくれたので、子供達の緊張も解れるのが早かった。(保育)が目覚めたか?
「タロウ様?この子達からお話があるそうです。」
ララとロロをアゲハが私の前まで連れて来た。
「どうした?」ララに声を掛ける。
「ありがとうございました。まだ一度もお礼を言えてなくて。」
「そんな事か。気にしなくていいんだ、守ってやれなかった大人達が悪いんだ。お前達は何も気にしなくてもいい。気兼ねなく、ゆっくりしてくれたらいいんだよ。」
大分 落ち着いて来たんだな。今日は誰かを付けて、ゆっくり町の散策でもさせてあげようか。
「それで!!!」いきなり大声を出した。
「おっ!? どうした? いきなり。」
「お願いがあります。聞いていただけますか?」
「うん。なんだ?」
「今、うんって言ってくれましたよね!」
「ああ。」
ま、子供の言う事ぐらいは何でも聞けるだろ?
「タロウさんは 冒険者なんですよね。」
「うん、そうだよ。」
「じゃあ私を・・・私達を弟子にしてください!!」
「へ?」
「「お願いします!!」」
どゆこと?
「いや、ちょっと待て、弟子ってなんだ?」
「私達は冒険者になりたいんです。さっき、いいって言ってくれましたよね。」
「いや・・でも・・・まさか弟子って・・・・親にはどう言うんだよ?」
「親は、二人とも・・・亡くなりました。私達の村がレッドワイバーンに襲われたときに。村の人は全員亡くなりました。村に虎の獣人は私たち家族だけで、父さんも母さんも先頭に立って戦ったんですが・・・・。」
あー、あったなぁ、レッドワイバーンが町や村を襲ってたっていう。その被害者の生き残りだったか。さっき守れなかった大人が悪いとか、悪い事言ってしまったなぁ。
「でもなぁー。」
「もう、帰るところも無いんです。」
こういうの、弱いなぁ。どうするかぁ。
「何で冒険者なんだ? 他にもあるだろ?」
「父さんも母さんも元冒険者でした。だから、私達も冒険者になろうと修業はしてきたつもりです。初めは足手まといになるかもしれませんが、お役に立ちますので、お願いします。」
私としては、別に構わないんだけどなぁ。今更2人ぐらい増えたって。こいつらぐらい養えるだろうし。悪魔3人から押しかけが増えてそうな気がするなぁ。
「よし、わかった。いいだろう。私の所に居ればいい。」
「「ありがとうございます。」」二人は嬉しそうだ。
こういう笑顔っていいよねー。
「が、一つだけ、条件がある。」
「・・・・なんでしょうか。」
恐る恐るララが尋ねる。
「レムンドン伯爵に説明してくれないか?レムンドン伯爵から許可を貰えれば ここに置いてやる。」
「なぜですか?伯爵には関係ないのではないですか?」
「私は私自信の事はよくわからない。他人が私を見て、お前らを預けてもいいって思える奴なら、私も自信を持ってお前らの面倒が見れる。一番正しい判断をしてくれそうなのが、私の周りではレムンドン伯爵が適任だと思う。」
「わかりました!絶対に許可を貰ってきます!」
即答? 頭の回転が早いのかもな。
「よし、じゃあ今日、伯爵の使いの者が新たな家に連れて行ってくれるようだから、そのまま馬車に乗って行ってこい。本来なら誰かを付けてやりたいが、冒険者になるんならそれぐらいは自分達で解決できないとな。」
「「はい!」」
ん、いい返事だ。
それからすぐに伯爵の使いが来た。全員乗れなかったので、乗れなかったものは馬車を出してそっちに乗って付いて来て貰った。
本当に大きな家だった。伯爵の家には及ばないが、2階建てで庭も広かった。
家の中も一通り見せてもらった。
「大きいなぁ。こんなに大きいとは思わなかった。」
「お気に召しましたでしょうか。」
「ああ、気に入った。気に入ったが、いいのか?本当に。」
「はい、ここが伯爵の用意された屋敷でございますから。」
「高いんだろうなぁ。」
どのぐらいするんだろう?多分手持ちのお金では足らないだろうなぁこれから借金生活かな。魔物の素材を売ればなんとかなるかなぁ。
「いえ、ただで。と伺っております。」
「え? なんで?」
「ここを拠点にしていただくことが条件だと申されていました。」
「拠点か・・・。拠点にしておけば、しばらく出て行っても構わないよな?」
「ええ、何か月かに一度でも戻っていただければ結構ではないかと。貴方様は冒険者ですから。」
「それならありがたく頂こう。伯爵にも礼を言っておいてほしい。非常に喜んでいたと。それから・・・。」
ララとロロを促す。
「すみません、今日は伯爵様はご在宅ですか?」
「ええ、今はいらっしゃると思いますよ。」
「では 私達を伯爵様の所に連れて行ってもらえますか?」
「あなたたちを?二人だけですか?」
「そうです。」
私が ニコニコと何にも言わないので使いの者も、何か話ができているんだと察したようだ。
「わかりました。今から行きますか?」
「お願いします。」
そのままララとロロは馬車に乗せてもらい、伯爵の所へ連れて行ってもらった。
私たちは、もう一度屋敷の中を見て回った。
「綺麗にはしてくれてるみたいだな。」
「はい、あまり掃除する必要も無いかとは思いますが、初めて入る所なんで一通りはしますか?」
「それなんだがな、クリーンって魔法があるよね?」
「はい、ですが家が大きすぎませんか?」
「そこで、小判。」
じゃーんと取り出した。
まぁまぁ溜まったと思うんだ。
「一度ぐらい使ってみたいと思ってね。」
「タロウ様! 勿体ないです!」
小判フェチのミルキーが言う。
「いいじゃないか、また溜めればいいし。こういうものは一度使って試さないと本番で困るんだよ。」
「そうですか?わかりました。」
使うところも見てみたいからすぐに折れた。
「次からは考えがあるんだ。最初だけね。」
小判にクリーンを込めて魔力を一斉開放した。
家中どころか、庭も、両隣の家までピカピカになった。
スッゲー威力だ。皆も驚いている。
「ご主人様ー、ピッカピカになったねー、嬉しいねー。」
「そうだな、中に入って部屋割りを決めようか。」
ちょっとやり過ぎたな。
やっと一人部屋か?一人部屋だよな?部屋ぐらいは一人でいいよな。
家具やベッドももう用意してくれていた。至れり尽くせりだった。
伯爵にも何かお礼をしないとな。
あ、櫛。コピーできないか?
「ソラ?櫛貸してくれる?」
「いいよー」
素材はわからないかなぁ?いや、素材は違っても、それなり物ができるってことだったよな。収納と言えば・・・ネズミとかリスかな?ネズミには頬袋無かったっけ?魔物だしなぁ。イメージだイメージ。イメージは大事だ。
メタルラットを出す。【複製】してみた。
できた!
【鑑定】すると、日本の大きさ分×5ってなってた。
メタル系素材は最強だなー、ネズミが良かったか?今度他でも試してみよ。
あとで、これをコピーすればいいな。ソラには櫛を返した。
「今日の予定は自由にと思ったが、ララとロロが伯爵をうまく説得できた時に、お祝いをしてやりたいな。」
「それはいいですね。では私は料理を致します。」
「わらわは、飲み物でも買って来ますわねぇ。」
「うちはー」・・・・・・
皆が口々に、ララとロロために何か考えてくれたようだ。
「じゃあ、私はちょっと部屋に籠るぞ。ララとロロが帰ってきたら教えてくれ。」
ソラとココアとミルキーには武器を貸りて、自室に入った。
私に一番大きな部屋を当てがってくれたみたいだな。
・・・・・広すぎて落ち着かない。慣れだろうな。
あ、ここじゃ無理だわ。ニンフが出せない。庭でやるか。折角の一人部屋なのになぁ。
庭に試作家を出し、【複製】を始めた。
ソラの薙刀の刀身ができたころで、ララとロロが帰って来た。
40分かかった。
ララとロロは試作家に入ってくると
「タロウさん、伯爵から了解をもらってきました。これで弟子にしてもらえますか?」
「そうか、わかった。これからはよろしくな。」
「「はい、よろしくお願いします。」」
いい子達だ。
「冒険者になるんだったら、私から一つ提案がある。私の従者のなる気はないか?」
「従者ですか?」
「そうだ、私の従者になったら私の加護が付く。多分、ソラとココアしか知らないが、私は異世界から来た人間なんだ。だから、私の従者になると加護が付き、成長速度など、色んなメリットがあるんだ。従者と言っても別に家来に成れと言ってる訳じゃないからな。でも、そういう気になるかもしれん。よく考えて決めればいい。」
「そんなの決まってるよ!ボクはタロウ兄ちゃんの従者になる!」
「じゃ、私もなる!に、兄ちゃん?ってしっくりくるわね。そう呼んでもいいですか?」
「兄ちゃんって、別にいいが、そんなに簡単に決めてもいいのか?大事なことなんだぞ?」
「大丈夫!」
「私も大丈夫です!タロウ兄ちゃん。」
そういえば、どうやったらなれるんだ?相手からの一方通行だから、こっちからやったこと無いぞ?いつも通りやってみるか。
「お前達、私の仲間になるか?」
「「はい!」」
すると 私の額が2回光った。
これで良かったんだ。簡単じゃん!
名付けはできないのかな?結構能力アップするし、スキルも付けてあげたいんだけどな。
一度やってみるか。
「ララと名付ける。」
・・・・・・・・。何も起こらない。
「何言ってるの?ララだよ?」
知ってます・・・
「・・・・・じゃあ、佐藤ララと名付ける。」
ララが淡く光った。成功だ。あ、考えるの忘れてた。
あ、私の技能と魔法と耐性が全部付いてる。逆に良かったのか?
「成功だ。では、佐藤ロロと名付ける。」
ロロも淡く光った。
名前: 佐藤 ララ
年齢: 14
種族: 獣人族(虎)
加護: 佐藤太郎の加護
状態: 普通
性別: 女
レベル:6
HP 100/100 MP:89/89
攻撃力:80 防御力:70 素早さ:81
魔法: 火(1)・水(1)・土(1)・風(1)・氷(1)・雷(1)・闇(1)・光(1)・召喚(1)・転送(1)・空間(1)
技能: 刀(1)・剣(1)・槍(1)・弓(1)・料理(2)・採集(3)・解体(1)・回避(1)・遮断(1)・錬成(1)・研究(1)
耐性: 熱・風・木・水・雷・身体異常
スキル:【変身】1
ユニークスキル:なし
称号: なし
名前: 佐藤 ロロ
年齢: 11
種族: 獣人族(虎)
加護: 佐藤太郎の加護
状態: 普通
性別: 男
レベル:3
HP 73/73 MP:54/54
攻撃力:57 防御力:41 素早さ:30
魔法: 火(1)・水(1)・土(1)・風(1)・氷(1)・雷(1)・闇(1)・光(1)・召喚(1)・転送(1)・空間(1)
技能: 刀(1)・剣(1)・槍(1)・弓(1)・料理(1)・採集(2)・解体(1)・回避(1)・遮断(1)・錬成(1)・研究(1)
耐性: 熱・風・木・水・雷・身体異常
スキル:【変身】1
ユニークスキル:なし
称号: なし
名付けでもこんなものか。レベルが低いからな。これでも上がったのかもな。伸び率に期待だな。
少し背も伸びたか?
ララが140センチぐらいか、ロロは130センチぐらいだな。こんなもんか?人間と比較すると、年齢の割には少し低めかもな。見た目もちょっと年齢より幼く見えるな。
顔は人間に近いが鼻が微妙、耳は虎だし尻尾あるしね。手足は人間みたいだけど獣化はできるんだろうな、変身ってあるし。人間と違うとこってあんまり無いよな。
「一度、皆の所へ行こうか。」
ララとロロの部屋も決まり、皆で集まった。初めは一緒の部屋にするんだって。
それでもまだまだ部屋は余っていた。広い家だ。
「新たに従者になったララとロロだ。これから仲良くしてやってくれ。」
ララとロロは皆の祝福を受けた。
「それで、ララとロロはレベルが超低いので、鍛えないといけない。経験値はパーティで入るから、誰かが連れて行ってまずはレベル上げをした方がいいと思う。誰か行ってやってくれないか?」
「「「「「「「「はーい」」」」」」」」
全員手を上げた。このノリ、不安しかないわ。
全員で行ってもいいんだけどね
「全員でもいいんだ。明日は装備も間に合わないかもしれないから。2人の守り役もいるからね。なんとか間に合わせるつもりではいるけど。私は明日から、いや今から試作家に籠るから、明日は2人のレベル上げをやってくれるか?」
全員の同意を得た。明日からはレベル上げだな。




