第54話 晩餐会
「皆、ご苦労様。皆揃ったし、いい時間になったから先に夕食にしようか。夕食が終わったら、宿の裏の空き地で簡易家を出すから、そこで今日の収穫を貰おうか。」
ダメだ、こいつら放置できねーわ。今日は折角一人で楽しめたのになぁ。
確かに、私も木を伐り過ぎました!確かに500本もいりません。
こいつら、それを見てて合わせたんじゃないかと思えてしまうよ。
「今日は、晩餐会に呼ばれてましたよね?入ってくる時、迎えの馬車がいましたよ。」
あ、忘れてたわ。
「そう・・だったな、忘れてたよ。でも、3人増えたからなぁ。ショーンとアゲハとイロハは伯爵と面識も無いし、すまんが留守番だな。」
帰ってきてから獲って来たものは、帰って来てから貰うと言って、急いで宿を出た。
3人には、飯は宿で取っておくよう言っておいた。
迎えの馬車に乗り、伯爵の屋敷に向かった。
伯爵の家では、私達だけが招待されていた。
他には来客はいなかった。
まずは、挨拶を。
「本日は、お招きいただき感謝しております。私達は、こういった場所でのマナーも良く知りませんので、お目溢し頂ければ幸いです。」
「大丈夫、これでも私は冒険者ギルドにも関わりがある者だ。今日は、気にせず楽しんで行って欲しい。」
「ありがとうございます。そう言って頂ければ助かります。」
それは豪勢な料理だった。
味については私達はいつも高ランクの魔物の肉を食べているので、そんなに感動は無かった。調味料も十分使っているし、皆料理の腕も上がってきているからね。
ただ、綺麗な盛り付けやフルーツ、食後のデザートに飲み物に関しては、私達もまだまだだなと痛感させられた。
食事中は、「うわー綺麗だねー美味しいねー」ってソラや、ココアもミルキーもノアまでも盛り付け、飾り付けの豪華さに声を上げて楽しんでいた。
そのおかげで、賑やかで楽しい食事ができた。
途中、何気なくココアを見ていて気が付いたのだが、久しぶりに髪に櫛を差していた。
お招きに与ったので、ココアなりのお洒落なのだろう。
でも待てよ?あれって東の国で買った奴だよな?東の国の物って全部、何かあるよな?
「ココア?」
「なんでございますか?」
「その櫛って?」
「気付いていただけましたか?私も久しぶりに付けてみました。」
「ちょっと見せてもらえるか?」
どうぞと櫛を渡された。
【鑑定】
名称:東の国の櫛
種類:亜空間収納アイテム
攻撃力:0
守備力:0
効果:日本の大きさ分
これって、収納できるやつじゃん!やっぱり何かあると思った。
日本分って、収納仕切れる訳ないじゃん!無限と思ってもいいぐらいだよ。
「ココア、これ収納アイテムみたいだよ。ソラも持ってたよな?」
「持ってるよー。」
「貸してくれ。」
ソラの櫛も同じ収納アイテムだった。
「ソラのもだ。こっちも収納アイテムだったよ。大分収納できるみたいだ。」
「わー!やったー、うちも欲しかったんだ―。」
「ほぉ、収納アイテムですか、それは羨ましいな。一応 私も持ってはおりますがな。」
食事も終わり、一息ついたところで、伯爵が昨夜からの事を教えてくれた。
「タロウさん、昨日はよく知らせてくれました。お陰様で、大事に至らずに済みましたよ。」
「昨夜出て行く時、騎士達が準備していたようだが獣人の子供2人の為には大げさ過ぎないか?こっちとしては解決してもらってありがたいが。」
「やはり優しいお方ですな。そうですな。そこだけを見ますと、確かにタロウさんの言う通り大袈裟過ぎますな。」
「そうだろう?」
「しかし、経緯がありましたな、昨日少し話したと思いますが?」
「領主の前で男爵自ら申し出た。というやつか。」
「そうです。男爵が領主様に申し出て保護した子をです。普通なら厚遇するものを、虐待などあってはならないことだ。その行為は、領主様の顔に泥を塗る行為に他なりません。知ってしまったからには全力で止めなければなりませんからな。」
「伯爵も、私が思ってた通りの人で良かったよ。」
「それは誉め言葉ですかな?」ハッハッハー
伯爵は嬉しそうに笑っている。
「この件で、男爵は爵位を剥奪されるであろうな。それほど重い行為だ。しかし、昨夜の助言は助かりましたぞ。男爵は隠蔽を謀りましてな、初めは何を言っても はぐらかしましてな、敷地にも入れさせませんでしたからな。強引に押し通り、真っすぐに厩を目指したのが、功を奏しましてな。すぐに獣人の子を保護できたのだ。男爵の配下の者共が、厩を開けて隠蔽を謀ろうとしておりましたが、厩の扉が全く開かなかったのだ。私と騎士団長が行ったらすぐに扉は空いて、現場を確保できたという訳だったのだ。」
アトムに向けて親指を立てて、よくやったと合図を送った。今はミルキーだけどね。
「それでその子達は、ここで保護してくれるのか?」
「それが問題なのだ。」
「何が問題なんだ?まさか、ダメなんじゃないだろうな。」
「そのまさかだな。私の屋敷では泊められん。」
「じゃあ、どうするんだ?」
「本当は泊めてやりたいんだが、今回領主様との話の時に、獣人を泊めないという話になってしまっておる。その話をした時におった、男爵を今回粛清した私が、その言葉を覆せん。私も領主様に宣言してしまっておるからな。」
「困ったもんだな、貴族ってやつも。じゃあ、私が連れて行くよ。それならいいだろ?」
「な!」
「よく吃驚する人だなぁ。少しこの町にいてやりたい事もあるし、保護するだけなら私の所は安全だ。最悪送ってやっても構わない。それに、後の貴族も似たり寄ったりだろ?その獣人の子達を安心して預けられるところがあるのか?」
「確かに、言われる通りだが・・・・。」
「じゃあ、決まりだ。今日から連れて帰るよ。ところで相談だが。」
「なんだ?吃驚させないことなら聞くが。」
「そんなに警戒しなくてもいい。伯爵ならできると思ったから聞くだけだ。どこかに広い空き家は無いか?大きいほどいい。」
「それぐらいの事なら任せておけ。アラハンからも言われておったのだ。この町に留まらせたい冒険者が居るので、協力を言われておった。家があったら拠点にしてくれるかもしれないから、用意だけでもしていてほしいと。もう用意はできておるぞ。」
アラハン、中々の策士だな。
「やるな、アラハンさんも。今夜は宿に連れて帰るから、明日家を見せてくれよ。」
「わかった、明日使いの者に案内させよう。」
「皆、すまないな。そういうことになった。」
「あと、これは今回の件の報酬だ。」
と、伯爵が金貨3000枚出して来た。
「どういうことだ?金貨1000枚のはずだぞ?」
「それは、東の森の解決までの依頼だ。その後の、子供の解放やここまで送ってくれたこと。男爵の件もある。領主さまと儂とで2000枚用意した。どうぞ 収めてくれ。」
「お金はあっても困らないからな。くれるもんはありがたく頂いておこう。」
その日は獣人の子供達をつれて、宿まで戻った。
ララとロロという虎の獣人の姉弟だった。
ララとロロは風呂も飯も済ませていたようなので時間も遅かったし、紹介だけは済ませたし、今日はもう寝ることにして、明日ゆっくり話すことにしよう。
悪魔達からは今日収穫したものを回収した。飽きれるほどのメタルだらけだった。
見たことも無い、キラキラした綺麗なやつも混ざってたけど。




