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第51話 フラグ回収

部屋に入った時、伯爵はもう来て待っていた。

アラハンは、あとでもう1回見せてくださいねと小声で言って席に座った。

私も挨拶をして座った。


「お待たせしました伯爵。続きの話をする前に、整理させてもらってもいいか?」

「一番事情に詳しいのは貴方だ。よろしく頼む。」

「まず、3番目の案件に関することでの話だったな。1件目と2件目も関わっていたということも理解してもらえたと思う。」

2人を確認する。話を進めても大丈夫なようだ。


「そこで今、問題になってるのは、ダンジョンだ。これが今回のすべての元凶と言ってもいい。ダンジョンで捕らわれていた子供達は解放し、今このロンレーンの町で保護されている。ダンジョンをアジトにして居た奴らはまだ最下層に残っている。ダンジョンで召喚された悪魔が3体、東の森にいる。ダンジョンから濃い魔素が溢れている。これが、すぐに対処しない件だと思う。どうだ?ただ、この中でダンジョン最下層にいる悪者共は、これは後でもいいだろう。」

2人共真剣な表情で頷いている。


「それがなぁ。」

「はい。」アラハンが何か閃いた感じだ。

「それが。」

「はい、こういうの、前にもありましたね。嫌な予感しかしませんが。」

「そうなんだ、結果は良いものだと思うが、アラハンさんには良いものじゃないかもしれないな。」

「わかりました。覚悟を決めました。おっしゃってください。」

アラハンが身構える。


「わかった、アラハンさん。私が嘘を付かないことは分かってるよね?」

「・・・・はい。」

「今言ったダンジョンの件は、たぶん解決した。いや、もうすぐ解決する。残っている問題は最下層の奴らの件だけだろう。」

「おっしゃる意味がわかりません。はい、まったく。」


「今日、話し合いの後、ちょっと抜けたよね?」

「・・・はい。」

「その時にダンジョン前に置いて来た、簡易家をノアと取りに行ったんだよ。」

「・・・・・・・はい。」

「そこで悪魔共が待っていて、あ、アークデーモンって言ってた奴らだ。家来にしてくれって言うから従者にした、いや無理やり私の従者になりやがったんだよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」

「それで奴らに仕事をやったんだ。もう1匹強い魔物が居るから、皆でやっつけて来いって。ダンジョンから出る濃い魔素の件は、子供達の解放の時に終わってるから、これで多分解決だよ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

最期は返事もくれないのね。いいけどー。


10分待った。

「それを証明するものは?」

やっとのことでアラハンが口を開いた。ちょっとは免疫が付いてきたかな?


「今は無い。けど、近いうちにアークデーモンが来るはずだから、それでわかるはずだ。」

あ、伯爵、白目剝いてね?


「それと、アラハンさん。そいつらが来たらSカード発行も頼むよ。」

あ、アラハンも白目剝いちゃった。

どうするかねー、この状況。


『タロウ様、今いいでしょうか?』

アトムから念話が来た。ナイスタイミングですアトムさん。


『いいよ、どうした?』

『カリファーン男爵の屋敷に来ているのですが、これは酷いです。手を出してもいいですか?』

『それはちょっと待ってくれ。何がどう酷いんだ?』

『まず、連れて来られた獣人の子供ですが、厩に入れられております。』

『なんでだ?男爵はわざわざ立候補したと聞いたが』

『聞こえてくる内容からしますと、領主様の前で良い所を見せて点数稼ぎをしたかったようです。でも、獣人を屋敷の中には入れたくないので厩に入れられたようです。』


酷いなぁ、やっぱりフラグだったか。じゃあ、回収しないとな。

『他に何か酷いことはされてないのか?』

『手枷をされております。足枷も片足されており、鎖で繋がれて逃げられないようにされています。さっき厩から出て行く時に、明日からは鞭で調教と言っておりました。』


これはなんとかしてやらないとな。やっぱりフラグ回収だ。

幸いレムンドン伯爵がいるから、そっちでなんとかしてもらおうか。

『アトム、今日の所は悪いが見張っててやってくれ。体罰を受けそうになったら、その時は手を出しても構わない。こっちも伯爵に動いてもらって早めに対処できるようにするから。』

『わかりました。』


貴族ってこういう奴が多いってイメージがあったけど、(もちろんテレビですけど)やっぱり居んのな。


時間も惜しいし、二人を起こす。

覚醒するのをゆっくり待つ。その間に暖かい紅茶を用意してもらい、皆で飲んで落ち着く。


「そろそろいいか?」

2人はなんとか、苦々しくではあるが頷く。


「よく考えてくれよ、私が人や町に対して害を成した事があるか?なぁ、アラハンさん。」

「それは、無いですね・・・。」

「信じられないこともあるかと思うが、そこは信じてくれ。」

「わかりました。」

「今回、戻って来るアークデーモンも私の従者だし、町や人に対しての注意は十分にしているし、町に入るときは人の姿になるようにも言ってあるから大丈夫だ。信用してくれ。」

「わかりました。でもカード発行とは!」

「もうノアもミルキーも持ってるじゃないか。」

「それは・・・・。」

「実力は保証するぞ?」

「それとこれとは・・・。」

「まあいい。この問題は、あいつらが戻って来ないとわからないからな。それからにしよう。ダンジョンに行くにしても、魔物の弱体化までもう少し時間が掛かると思うしな。それより、別問題が発生した。これはレムンドン伯爵に協力してほしい。」


伯爵が虚ろな目で見て来る。アラハンは「まだあるんですか。」と肩を落としている。

「2人共、今日一日で10歳ぐらい老けたように見えるぞ。」

「「それはあなたのせいでしょ!」」

おお、ダブル突っ込み!ハモってたよ。


「おぉ、元気じゃないか。」

「あなたにだけは言われたくありませんがね。」

「ははは、まぁいいけど。それより別件だ。こっちは本当に急ぐ。伯爵いいか?」


やれやれ、もう解放してほしいという感じで

「仕方がありませんな、なんですかな?」

「もうあとひと踏ん張り頑張ってくれ。別件というのは、カリファーン男爵の屋敷に行った獣人の子供の事なんだ。」

「カリファーン男爵が何か?」

「獣人の子供達が、今厩に閉じ込められて監禁されている。」

「なんと!本当ですか!?」


やっとギリギリ付いて来れる話になったからか、元気が出てきた。


「ああ、今私の従者が見張っている。明日には調教という名の拷問が始まりそうな気配なので、子供に手を出すようなことがあったら、手助けするようには言ってあるが、そうなる前に伯爵に動いてもらって、子供達を助けてやってほしい。」

「うーむ、カリファーン男爵が・・・・・。わかりました、今すぐ動きましょう。どうやって知ったかなど、もうどうでもいい。貴方が、信用が置ける信じられない人ということがわかりましたので。」


誉められた?貶された?まぁ、動いてくれるんならいいか。

「じゃあ、頼んだよ伯爵。一介の冒険者が絡んでも良いことは無いだろうから、私は宿に戻るよ。従者には引き続きサポートする用に言っておくから。」

「わかりました。この件は借りということで。」

「別に貸しじゃないけどな。カリファーン男爵の屋敷に行ったら真っすぐに厩に行くんだぞ、でないと はぐらかされるぞ!」

「わかりました、心得ておきましょう。」

「アラハンさんはどうする?」

「私もこの件ではお邪魔でしょうから、退散することにしましょう。」

「じゃあ、宿まで送ってくれないか?さっきの刀も見たいだろ?」


アラハンの目が輝いた。やっと生き返ったみたいだ。


私達が屋敷を出る頃には、レムンドン伯爵の私兵が慌ただしく準備を始めていた。


帰りの馬車の中で、アラハンは目を輝かせ、無言で刀に魅入ってた。

その気持ちはわかるけど、ちょっと怖い。

今度、観賞用に1本プレゼントしてやるか。いつも世話になってるしね。


次の日の朝、皆で朝食を食べていると、伯爵からの使いの者が来てカリファーン男爵の粛清と子供の保護の完了の報告を受けた。

もうアトムから聞いてて知ってるけどね。ミルキーにも謝っておいたし。


同時に晩餐に招待したいことも言っており、招待状も渡された。


朝食を終え、部屋に戻るとすぐにショーンから念話が来た。

もう町に辿り着いたらしい。早すぎないか?私もいつも同じことを言われてる気はするが。


仮入門も面倒だったので、冒険者ギルドに行ってアラハンを拉致し、門まで行ってギルマスの顔で3人を入れて貰うようにした。入門させる前に自分で確認した方がいいんじゃないか?って言ったらすぐに来てくれた。

その足で冒険者ギルドに戻り、Sカード発行。そして今は宿に戻っている。


マスタールームで、悪魔の正体を確認したアラハンは、目を開けたまま気絶してしまったので、放置してきた。受付には話が通っていたみたいなので、カード発行はすぐにしてもらった。

本来は、できる男なのにね、アラハンさん。



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