第50話 メタルの刀
魔法陣から出て伯爵の庭に戻ったら、食事が終わりかけだった。
魔法陣を消しついでだから、私とノアも急いで食事を摂り、私は応接室に向かった。
ノアには仲間が増えたことを皆に伝えるように言っておく。
「いい退屈鎬になりましたわぁ」だって。こっちはいらない仲間が増えて困ってるよ。
向こうの方で、ココアとミルキーが睨んでる気がするが、気のせいだろ?
応接室に入った時にはもう二人は意見を出し合っていて、大分事態を飲み込めてきたようだ。
「すまん、ちょっと出掛けてた。」
「タロウさん、どこへ行ってたんですか?そんなには待っていませんが、呼びに行かせた者が困っていましたよ。」
「すまんすまん。で、今二人で話してたようだが、解決しそうか?」
「半分は聞いていた話でしたが、伯爵は初めて聞く話ですし、まずはさっき聞いた話を纏めていました。その何から手を付ければいいかを話し合っていました。」
「ああ、そんな話してたな。」
「そんな話って、完全に人ごとになっていますよ。今回の討伐にはタロウさんの力が必要になるっていうのに。悪魔ですからね。おそらくアークデーモンでは無いかと思われますし。」
「アークデーモンって言うのか、あいつら。」
だって漢字だったし。ルビ無かったし。すべて纏めてアークデーモンって言ってるのは人間だけの都合かもな。
「あいつらって?」
またなんかやらかした?的な目で見て来る。
「あー、その話をする前に、子供達のことを先にした方がいいんじゃないか?もう食事も終わってたぞ?」
「確かにそうですな。手配だけでも先にしておかなければなりませんな。その後で、お話を伺いましょう。」
一旦、話し合いは終わり、2時間後に再開をすることにした。
私も一旦、仲間たちと合流した。
「もう食事は終わったみたいだから、宿に帰ってゆっくりするといい。ミルキーだけ、ちょっとお願いがあるんだが・・・・。」
「その前に、タロウ様・・・・」
「すまん、ミルキー急ぎなんだ、アトムに変わってくれないか?」
何か言いかけてたミルキーだったが、渋々アトムに変わった。
「アトム、あそこに獣人の子供がいるな?」
「はい。」すぐに確認できた。
「あの子達の後を付けて、様子を見てもらいたいんだ。」
「わかりました。」
「あの二人だけ、カリファーン男爵の屋敷に連れて行かれるようなんで、ちょっと心配なんだよ。」
フラグが立ってたからね。
「もう出発するみたいですから、それでは行ってきます。」
「すまんな、頼むよ。私はここに用事があるけど、宿には戻るから報告は宿で聞くよ。」
アトムは【隠形】で伯爵の屋敷から出て行った。誰にも気づかれなかった。
じゃあ、あとは明日の朝までは自由でいいぞーって言ったら、ソラとノアはすぐにいなくなった。
「ココアも宿に戻っていいぞ?ん?」
「主様が、私とソラさんに食事を頼まれたのを覚えてますか?」
確か、出かける前に頼んだな。
「ああ、確か、頼んだな?」
「なぜソラさんだったのですか?」
「手が空いてると思ったからね」
「ソラさんの料理ですよ!」
「あ!でも。」
やらかした?
「しかし、今日はバーベキューって感じで焼くだけだから・・・。」
「主様、甘いです。大甘です。すぐにミルキーさんが気が付いて駆けつけてくれなかったら、どうなってたことか。ソラさんが、肉を何か得体の知れない液に付けて焼いたら、紫色の煙が出ていましたから。すぐに消したので、煙を被った木が1本魔物化しただけで済みました。その隣の木が花を咲かせて実まで付けましたけど。」
ソラは期待を裏切らないね。
「そうか、それは済まなかった。確かに甘かったみたいだ。あとでミルキーにも謝っておくよ。今日は宿に帰ってゆっくりしてくれ。」
これ以上別件を増やしたくない・・・。何を付けたんだよーソラさん。聞きたくはないけど・・・。
3人を帰らせ、伯爵の屋敷に入った。
2時間近くはヒマなんで、伯爵に休憩したいと言って、1室貸して貰うことにした。
61人の子供達を宿泊させるため、大きな部屋は埋まっているから狭いですが と言って通された部屋だが、それでも広かった。8畳以上はあると思う。
刀を作りたかったんだよねー
さっき鍛冶屋で受け取った ブルードラゴンソードを出す。
練習だから素材は何にしようかと悩んでいたら【那由多】がフルメタル系がお勧めです。
って言うもんだから、メタルバードを出した。
さらに【那由多】は 先にエアシザースで一度コピーした後がお勧めです。って言うので言われた通りにエアシザースの剣を作った。
右手に剣を持ち、左手で素材に触る。
すると素材がどんどん剣の形に変わって行き、30分程度で出来上がった。
コピー完了。と頭の中でいつもの【那由多】の声が響く。
中々の出来栄えだった。
やはりコピー元の出来栄えが良いのだろう。前に作って貰った剣より、素人の私が見ても出来が違った。同じエアシザースの剣なのに。
――技能(錬成)の熟練度がMaxになり、スキル【工匠】を獲得しました。
おいおい!すごくない?【工匠】ですか?武器屋の名職人的な?
じゃあ、刀作れるんじゃない?それで【那由多】は1回試させたのか?
――その通りです。あと1回【複製】をして(錬成)を使うことで、レベルアップすることが分かっていました。【工匠】獲得により刀のコピーも可能になりました。
すげー!やったよー!いい仕事するねーうちの【那由多】はー。【複製】もMaxにしていて正解だったんだな。
じゃあ、早速。
私は刀を出し、メタルバードに触った。
コピー完了。
素材のランクが高いからか、1時間ぐらいかかったが、すごく良い物ができたと思う。
たぶん虎刀牙の刀より上じゃないかな。
あと、鞘と柄が居るけど。刀身の部分しかコピーできなかったんだよなぁ。
【鑑定】
名称:虎刀牙の刀
種類:刀
攻撃力:550
守備力:0
付加効果:なし
【鑑定】
名称:メタルバードの刀身
種類:刀
攻撃力:1600
守備力:0
付加効果:メタルバード
「うぉぉーーー!すげぇーーー!やったぁーーー!」
つい声を出して飛び上がった。攻撃力1600って ありえねー
攻撃力1の人が持つだけで、攻撃力1600になるのか?
もちろん使いこなせなければならないけど。
もう絶対折れねーわ、この刀。切れまくりー!
タイミングが良いのか悪いのか、丁度アラハンが呼びに入ってきた。
「タロウさん、そろそろ・・・ん?」
!!!!!!!!!!
「なんですかー!!?その武器は!?」
いつも驚いてるよね。あ、驚かせているのか。ゴメンね、アラハンさん。
「どうだ!アラハンさん!今 完成した。現在の私の最高の刀だ!」
「い、い、い、い、今??な?え?刀?えええ?」
自慢も終わったことだし、片付けようか。
メタルバードってまぁまぁ大きかったけど、全部使ったなぁ。
刀の質量と合わないんだけどな。ま、いいか。
出していた剣も刀も収納し、アラハンに声を掛ける。
「さ、行こうか。呼びに来たんだろ?」
アラハンは口をパクパクさせながら、私に猛抗議をしている。
だから、声が出てねーって。
先に部屋から出る私に、アラハンは付いて来ながらまだ口をパクパクさせている。
「あれ?どっちだ?」
「こっちだー!!」と指を差し大声で答えてくれた。
「声が大きいよ。」
「あなたのせいです!」
アラハンは怒って 先にツカツカと歩き出した。
私もアラハンに付いて行った。




