第5話 那由多
準備運動がてら軽く走ってみた。
身体が軽い!
嬉しくなってどんどんとスピードを上げていく。
山の中の森、道などあるわけもなく、自分の背丈ぐらいの雑草生い茂る中、雑草にも邪魔されずどんどんスピードは上がっていく。
山は大きな森っていう感じで、巨大な木ばかりだった。
その分、木々の間隔も広く雑草さえ踏み倒せば問題なく走れた。
途中、何かを何度か踏みつけたような気もするが、雑草と区別も付かないし人間がいるわけでもないし、いいだろう。
山頂にたどり着くまで10分もかかっていない。
ソラはというと、少し遅れで付いてきている。なんだかんだ言ってもやっぱり姫か。
身体能力は高そうだ。狐モードにはなっているようだが。
やっぱ狐になれるんだ。
あとで聞いてみると、私が踏み倒した後を通ってきたので楽だったと言ってた。
山頂の木のてっぺんに登りソラと少し休憩を取ることにした。
疲れ加減からして休憩を取る必要も無いのだが、自分の体調を確認しておこう。
装備に関しては、バットも含め すべて亜空間収納の中。今は長袖Tシャツに薄手のブルゾン、カーゴパンツにスニーカーという、この季節の街中で見かける日本人のおじさんの格好をしている。ステータスの確認をしてみる。
名前: 佐藤 太郎
年齢: 18
種族: 人族
加護: なし
状態: 普通
性別: 男
レベル:25
魔法: 火・水・土・風・氷・雷・闇・光
技能: 刀・剣・槍・弓・料理・採集
耐性: 熱・風・木・水・毒・麻痺・腐食
スキル: 【亜空間収納】【鑑定】【複製】【仲間】【超速再生】【痛覚無効】
ユニークスキル:【那由多】
称号: 異空間の住人
従者: ソラ
レベルが上がってる?なんで?耐性も増えてる。スキルも。
「ご主人様?たくさん倒してたよねー。やっぱり強いねー。」
え?いつ?どこで?何を?・・・倒した?
「途中、仲間にして―ってのもいたよー」
だから、どこで?
身体が軽くて嬉しすぎて周りが見えて無かったようだ。
半端なくチートだ。だからチートって言うんだっけ?
・・・・・忘れよう。
「ソラ?方向はこっちで合ってる?」
「合ってるよー、もうご主人様ならサーチできるんじゃない?」
「サーチ」
最大まで広げてみる。
半径20キロと出てる。魔物もたくさん反応はあるが、赤い点で出されるようで大きさがマチマチだ。予想するに、強いやつが大きい点なのかな?
そういえば、【那由多】ってサポートもあったんではないか?
――カチッ キュイーン
と、かすかに起動音が聞こえた。
――サーチ結果をお知らせします。
『チョーっと待った―』
『その前に今から登場なのか?ずっとなんでって思っていることが多かったが何にも回答が無かったぞー!』
――どちらの回答が優先でしょうか?
『今まで回答が無い方だ』
――【那由多】というキーワードがございませんでしたので、起動していませんでした。
『なっ! 自動じゃないのか?』
――起動時にのみ、キーワードが必要です。今後は自動でサポートを行います。
『納得いかないが、今後はよろしく。ではサーチ結果については?』
――検索【オオカミのおじさん】の特定情報がありません。もし、そのオオカミが一番強い種ということであれば、一番大きな赤い点になります。
『それはわかった。今オオカミを探している要因として、元の世界に戻る方法を探している。それはわからないか?』
――検索【元の世界に戻る方法】該当ありません。この世界の情報が少なすぎます。
それもそうだな、まだこの世界に来て1時間も経ってないしな。
まずはやっぱりオオカミおじさんだな。