第47話 子供達保護
10分後、アラハンが馬車を出してくれてレムンドン伯爵邸へ辿り着いた。
急な訪問であったが、レムンドン伯爵は在宅しておりすぐに面会が叶った。
レムンドン伯爵は、50歳は過ぎているように見えるが、背はあまり高くなく、165センチぐらいだろうか、中肉中背よりはちょっとメタボになってきた感じの金髪だった。
アラハンは、レムンドン伯爵に事情を説明しているが、うまく伝わっていないようだ。
自分も信じられないものを人に信じさせることは難しい。しかも、内密の相談だ。
面倒だが、一度見せてやることにした。
「アラハンさん、一度見せるから、これで信じてもらえるように説得してくれないか?」
「何を見せるのです?」
「あー、その方が話が早いだろう。その前に、この3人だけの状態を作って欲しいが。」
アラハンが交渉し、10分だけ護衛を外して庭に出てもらった。大きな庭だった。
サーチで周囲を確認。大丈夫なようだ。
庭に出た所で待ってもらう。そこに入り口の魔法陣を構築する。合図をしたら魔法陣に入ってもらうように言って私は庭の一番奥に行き、出口の魔法陣を作った。
そして、合図を送る。
まずはアラハンが。遅れずにレムンドンが。2人でほぼ同時に魔法陣に入った。
魔法陣に入った瞬間、私の所まで二人は転送されてきた。
護衛が来るまで2人は我を取り戻すことはできなかった。
待つしかないので待ったが、無駄な時間である。
「わかってもらえただろうか?アラハンさんも。」
まだ、二人とも考え込んでいる。
「あー、時間が無いんだ。」
「そうでしたね、レムンドン伯如何でしょうか、理解はできなくとも私達が嘘を言ってなくて時間が無いことはわかっていただけますか?」
レムンドン伯が頷く。
「では、広い場所の提供と絶対に人が入ってこれない環境をお願いできませんか?」
「・・・・・わかった。この庭ではどうだ。ここなら広さも十分だし、意外と周囲からも死角になっている場所だと思うが。」
「そうだなぁ。」と周囲を見渡す。「大丈夫か。ま、私としてはバレてもいいんだから。」
大騒ぎになるのが嫌なだけで、ここなら伯爵が何かやったんだろうって思われるだけだろう。
「!!また、なんてことを!見つからないようにここまで来たんですからお願いしますよ!では、レムンドン伯、お人払いをお願いできますでしょうか。急いでおりますので。」
「わかりました。」とレムンドン伯爵は護衛を連れて庭から出て行った。
私は塀と木の間の見えにくい場所を選び、魔法陣を作った。
出てきた子供達はアラハンの方に誘導するので、少し離れた所で待機してもらうようにお願いした。一応サーチで確認。本当に周りには誰もいないようだ、レムンドン伯爵は信用の置ける人物だというのは本当だな。
ココアに連絡を取る。大丈夫、これぐらいの距離なら念話も届くはず。
『ココア?ココア?聞こえるか?』
『はい、主様 聞こえております。お待ちしておりました。』
『よかった。そっちの準備はいいか?』
『はい。』
『こっちも準備ができた。順番に送ってくれるか。』
『かしこました。』
順番に子供達が送られてくる。私は出てきた順にアラハンの所へ行くように誘導する。
全員が無事転送された。最後はココアだった。
「主様、簡易家を置いて来てしまいました。どうしましょうか。強めに私達3人で三重に結界は張って来ましたが。」
「仕方がないだろ、転送魔法もまだ覚えたばかりで一方通行だからな。あっち方面にはまだ用事があるから、その時にでも回収しよう。危ないからこっちの魔法陣は消しておこう。」
それまで簡易家の結界が残ってればいいんだけどな。
子供達も、無事保護されたからいいか。またニーベルトさんに作ってもらおう。
「アラハンさん!全員完了だ。」
「わかりました。では、伯爵を連れてきます。ここはお願いします。」
そう言って、アラハンは伯爵を呼びに行った。
アラハンに連れられて戻ってきた伯爵は、いきなり現れた子供達の多さに、まだ信じられずに大きな目をしていた。
あーゆー目、最近よく見ている気がする。
「アラハンさん、まだ報告は続くんだが、今日はもうアラハンさんには無理だろう?伯爵も、あの調子だともう少し掛かるだろう。宿も取らないといけないし寄りたいところもあるんだ。一応、後でもう一度顔を出すけど、ここを任せてもう行ってもいいか?」
「この状況を私に丸投げですか?ダメに決まってるでしょう!」
「この娘達を置いて行くからさ、頼むよ。」
「どのぐらいで戻って来れるんですか?」
「2~3時間で戻れると思う。」
「わかりました。なるべく早く戻ってきてくださいよ。」
「わかった、すまない。事情を聞きたい時はココアかミルキーならわかるから。」
全員わかるんだけどね。他は、何言っているかがわからないから。
と頼んで、急いで工房に向かった。
「こんにちわー」工房へ入って行く。もう慣れたもんだ。
すぐにニーベルトさんを見つける。
「おや、今日はどうしましたかな。」
「また家を作ってもらいに来たんだ。念のためなんだけどね。」
なんで?みたいな顔してるな。
「簡易家なんだけどさ、ちょっと事情があって東の森の中に置いてきたまんまなんだ、それを取りに行くまでの間の家が欲しいんだ。すぐに取りにいけないかも知れなくって。」
「おやおや、それは大変じゃわい。もう壊されてるかもしれんのぉ。」
「しばらくは大丈夫だと思うんだけど、念のためにね。」
そうかいそうかいと言いながら、奥へ来いと言う。
「前に見せた試作品じゃが、これを持って行きなされ。少し強化も施したでな。」
「え?いいのかい?」
「前に馬車でええアイデアを貰ったからのぉ。魔石の数は多く使うようになるんじゃが。下位魔法にして数を増やせば消費も下がる、会心のアイデアじゃった。こっちにも応用したんじゃ。しかもこれは試作品じゃから、金はいらん。持って行け。」
「それは親父のアイデアじゃないか!だから、金は払うよ。」
「ええてええて、馬車も売れ行きは好調じゃし、独占販売じゃ。馬車など元々やっとらんし、馬車のアイデアはもらったしのぉ。」ほぉっほぉっほぉっと、上機嫌だ。
「この試作家も調子に乗り過ぎてのぉ、魔石を20個使うんじゃ。その代り、広さは簡易家と同じくらいになったし、魔石消費もAクラスの魔石で30年は持つ。どうじゃ?」
大きさは簡易家の1/3ぐらいだよな、それで同じぐらいの広さって。でも魔石20個って、ホント調子に乗り過ぎてるわ。
「わかった、ありがたく貰っていくよ。魔石20個って私ぐらいしか使う奴もいないだろうしね。」
早速言われた位置に魔石をセットしていく。
中に入ってみると、本当に簡易家ぐらいの広さがあった。
ただ、間仕切りが無いので、大きな大きなワンフロアになっていた。
魔石はこのままセットして置いて、せめてキッチンと浴室とトイレを作って貰うことにする。四角に杭を打ち付けられる加工も合わせてお願いする。
その分は支払うと言って、金貨100枚を置いてきた。気持ちだよ気持ち。
明日の昼までには仕上げておくと言っていた。
宿に寄って予約をし、家具屋に寄ってテーブルや椅子、ベッドを買って、寝具や食器や調理器具を揃えて、鍛冶屋にドラゴン素材の剣ができていないか確認のため少し立ち寄った。剣が1本だけできていたので、貰ってきた。
素晴らしい出来栄えであることは初見で分かった。鍛冶屋の親父もドヤ顔である。後は、できる限り色んな武器・防具にしてくれと頼んで店を出て、伯爵の家に戻った。
ちょっと修正




