第44話 手詰まり
レベルも3上がった。パーティで経験値を共有だから皆も上がってるんだろうな。
でも、勇者を倒して経験値って何か嫌だな。苦労して倒したわけでもないしね。
「結局、なんで人攫いをしてたのかわからなかったな。他にも聞きたいこともあったのに、何も聞けなかったな。」
ダンジョンに吸収されない、ケンジとシューラッドは亜空間収納した。
このまま放置するのは、なんか嫌だった。
少し家を調べてみるか。
全員で一緒に家の中を探すことにする。
半分壊れてるし、あと半分ならそんなに広くない。瓦礫の下はどうしようか。
魂に関する研究と、悪魔に関する研究資料があったが、何のことかわからない。が、資料には全部目を通しておく。【那由多】が解析して後で教えてくれるだろう。だから見ておかないとね。
その間に、ノアに命じて村の制圧と攫われた者の解放を頼む。
もちろん、ミルキーとココアに全力でサポート(制御)するように命令する。
「殺すな!」だ。
ソラには瓦礫の下に何か無いか調べさせる。ノアとミルキーの出番を奪って、しかも家を壊した罰だ。
資料も一通り目を通し、(ホントに見ただけ。内容は全く読んでない。【那由多】任せた。)周りの施設も確認する。
魔法陣があった。
――悪魔召喚 獲得しました。
え?なんで?
あ、さっきのケンジから頂いた中に召喚魔法があったな。それと魔法陣で獲得か。
獲得したけど、使う時があるのか?悪魔召喚って。怖そうだし。
あと一回りしてから、玄関を出た。
全員整列させられていた。なかなか手際がいいじゃん。
もう、村の制圧は終わっていて玄関を出たところで、右側にココアの尻尾を巻きつけられたここの悪者たち。盗賊なのか、チンピラなのか、なんなのかわからないが、悪いことはしてるだろうから悪者たち。
左側は攫われてきた者達だった。
ノーライザの町で聞いた通り、10代の子供達だった。
放って置くわけにも行かないが、どうすればいいのか・・・。
このダンジョンから出ることはできるが、歩いて町まで行くには大変だ。
70人いるし。
どうやってここまで連れて来たんだろう。しかもダンジョンの最深部まで。
右側の悪者達に向かって尋ねる。
「この悪者共の中で、一番話が分かるものはどいつだ?」
全員が一人の男に目を向ける。
・・・・・全員から売られた?
その悪者達に売られた男に尋ねる。
「おい、お前!この攫ってきた子供らをどうやってここまで運んだんだ?」
「馬車で運びました。」
「はぁ!? お前らのレベルでこの森を馬車で抜けられるわけないだろ!嘘をつくと命は無いぞ!お前らのボスももうやっつけたからな!レッドワイバーンもオーガロードももういないぞ!」
「いや、本当なんでさぁ。初めの頃は、この森もこんなにランクの高い魔物も少なくて、オーガロードかレッドワイバーンを護衛に付けとけば、簡単に通り抜けられてたんでさ。それが、最近森の魔物が強力になって、オレ達もこのダンジョンから出られなくなってたんでさ。」
「なんで魔物が強力になったのか知らないのか?」
「それはボスが、攫った奴らの魂を使って強力な悪魔を召喚したからじゃねーかなぁ。」
もうすでに何人かは犠牲になったんだな。
「そんな奴はいなかったし、ケンジの従者にも付いて無かったぞ?」
「そいつらは、召喚されたらすぐに逃げて行きましたから。」
「逃げる?逃げられるのか?逃げてもいいのか?召喚魔法は契約じゃなかったか?」
「詳しいことはわかりやせんがね、なんでも従者にしたいから契約をせずに呼び出して、そのまま逃げられたそうでさ。魂を代償としていた分、殺されずに済んだって言ってましたからねー。」
間抜けすぎるー、そして弱すぎるー。
「そいつらは、ん?そいつ・ら?」
「はい、3回とも逃げられましたから。」
「・・・・・・・・。」
3回ってことは3体の悪魔がいるって事か。間抜けを通り超えると何て言うんだ?
森の強力な赤い点は7つだったな。3つはやっつけて来たから残りは4つ。
こいつらがいるから魔物が活発になったっていうことか?
【那由多】?
――その可能性は否定しませんが、他の可能性もあります。
(なんだ?)
――このダンジョンです。
(続けて。)
――このダンジョンのフロアボスはケンジの従者でした。ですので、長い間倒されること無く魔素を出し続けていました。しかも本来30階層のフロアボスを29階に置き、最終フロアの30階層に強力なレッドワイバーンとオーガロードを置き続けたためにダンジョン周辺の魔物が強力になり、森全域に広がって行きそれを手伝うように悪魔が散らばったことによるためだと思われます。
(じゃあ、どうしたら解決できる?)
――ダンジョンの最深部にはダンジョン核がありますので、それを破壊すること。
散らばっている強力な魔物を排除することで、すぐには収まりませんが魔物の活性化は無くなって行くでしょう。
ダンジョンを壊し、魔物を排除してもしばらくは森の魔物たちは強力なままってことか。
そうは言っても、このまま連れ去られた者達をここに置いておくのもなぁ。
ここまで関わって、サヨナラって訳にも行かないわなぁ。それじゃあ、ケンジと一緒になってしまうわ。
まずはこいつらを“今”どうするかだ。
「こいつらは・・・・。」
と言ったとたん、うちの娘達の気配が変わる。
ヤバい!
「先に言っておくが、斬るなよ。」
そんなにがっかりすることかよー 4人共ー。
「この悪者共はここに置いて行こう。ダンジョン核を壊して行くから、もう魔物が湧いてくることは無いだろう。問題はこっちの子供達だ。置いて行って人数を連れて戻って来るにしても、まだ森の魔物は強力だ。私達以外の者で安全に運べるとも思えない。強力な魔物はやっつけるとして、そいつらを倒したとしても、しばらくは森の魔物も今のままだろうし。私達で子供たちを運ぶと言っても何日掛かるか・・・。ちょっと 手詰まりだ。」
4人の方を見てみる。
「ご主人様ー、みんなで走れば早く行けるよー」
「却下。」
「主様?こういうのはどうでしょうか。」
「お?ココア、何か良い案があるか?」
「簡易家でしたら、50~60人ぐらい入るのではないでしょうか。その家を皆で担ぐか・・・風魔法で飛ばすというのはどうでしょう?残りは馬車でノアさんに運んでもらうことで、全員を運べるのではないかと思いますが。」
「採用!」
ココアさん、最近調子いいじゃん!どうしたのよー。
できるかどうかは微妙なラインだけど、一度やってみよう。




