第41話 一斉攻撃
「さて、人攫い達の本部がダンジョン内にあることだけはわかってるんだけど、そのダンジョンがどこにあるんだろうなぁ」
「飛んで探しますわよぉ。」
「できれば見つかりたくないんだよな。」
見つかっても構わないんだけど、逃げられる恐れもあるしね。
「では、皆でバラバラで行きますか?」
「皆の実力は分かっているが、一緒に行動するのがいいと思うな。」
通信手段が無いからなぁ
「全部、燃やすー?」
無視でいいだろ。
丘の上で早めの昼食を摂り、周囲をサーチする。周辺に魔物が多すぎるため、絞り込めなかったので【那由多】に力の大きな魔物だけサーチできるように調整してもらった。
その結果、力の大きな魔物は7体いた。縄張りがあるだろうから全部バラバラではあったが、3体が同じ方向で比較的近くに居たからまずはその3体の方向に向かうことにした。
この石碑から祠がある方向は東だったが、向かったのは南の方向だった。
途中、出喰わす魔物もランクが高く最低でもBランクはありそうだった。
初めて祠から来た時に出会ったゴブリンなど、低ランクの魔物はまったく見当たらなくなっていた。
私たちは、周辺を探索しながらというのもあるので、歩いて行く事にした。
横一列に並んで、左からソラ、ノア、ミルキー、ココアの順に並んでいる。私は後方待機で仕留めた魔物を回収していく。回収できるほど原型を留めている魔物だけを。
一人一人の間隔は10メートル程度。森の中だから火系の攻撃はしないように注意した。
ソラは火を含まない複合魔法と、必殺技『弐号』とか言って、式具を大きくして飛ばしプロペラのように回したり、ドリルのように回したりして操っている。一度放つとなかなか戻さない。式具がいつまでも飛び回っている。
ノアは、メイン武器が剣で落ち着いたらしく、近くに来る魔物は剣で捌いていた。遠くの魔物はブレスで葬っていた。神聖系のブレスのようだった。『ホーリーブレス』って言ってたから。人型でもブレスできるのね。
ミルキーは、新しい武器を試していた。伸縮自在の槍を、一瞬で30メートル伸ばし一撃で絶命させる。時にはアトムに変わり、時にはドレミに変わり、それぞれの武器を確認している。ドレミは遠距離、アトムは近距離が得意なんだが、敢えてドレミは近接で弓剣術を、アトムも投擲用にと自分でジャイアントビーエッジの素材から加工した棒手裏剣で遠くの敵を仕留めていく。
ココアは、薙刀を振るうとソニックブームが出て、周りの木なども一緒に切り倒していく。
私の出番は全く無いように思えるが、私が一番大変だった。魔物の収納。
多すぎるわ!
また全員で解体だな。しかも、【鑑定】の熟練度を上げるために全部【鑑定】をしてからだから、皆歩いているのに私だけ走ったりしていた。収納ができるのは私だけだし。
丘の石碑を出発してから2時間、1匹目の力の大きな魔物に出会った。
歩いてきた割には早かった。
【鑑定】サウザンドニードル
名前: なし
年齢: 233
種族: 獣族
加護: なし
状態: 普通
性別: 男
レベル: 34
魔法: 土(8)・風(6)・雷(2)
技能: 牙(8)・針(7)・毒(3)・探知(3)・回避(4)・遮断(3)
耐性: 雷・毒・麻痺・腐食
スキル: 【威圧】2
ユニークスキル なし
称号: なし
巨大なヤマアラシという感じの魔物だった。5メートルはあるだろう。針を立てると倍はあるように感じる。
針ってあることは、飛ばしてくるかもしれないな。
「みんな!針を飛ばしてくるかもしれないから、気を付けるんだぞ!まずは遠距離・・攻・撃・・・。」
遠距離攻撃で様子を見てからって言おうとしたが、全部言えなかった。
全員の遠距離攻撃が一斉にサウザンドニードルを襲う。
ごめん、サウザンドニードル。ここまでやらなくてもいいのにな。
と、謝ってしまう程の攻撃だった。サウザンドニードルは耐えられるはずもなく粉々になってしまった。魔石も残ってない。
「みんなー、今度からは魔石ぐらい残してねー。」
「「「「はーい。」」」」
返事はいいねー。次は大丈夫かなー。
日が暮れるにはまだ時間があるので、次に向かって進む。全員暗闇でも問題ないんだけどね。
次の力の大きな魔物のところには、30分で着いた。
【鑑定】ビッグボールアメーバ
名前: なし
年齢: 480
種族: アメーバ
加護: なし
状態: 普通
性別: なし
レベル: 31
魔法: 水(8)・土(6)・雷(2)
技能: 牙(8)・・毒(3)・探知(3)・回避(4)・
耐性: 火・水・毒・麻痺・腐食
スキル: 【威圧】2【再生】9【分裂】9
ユニークスキル なし
称号: なし
緑色した大きなボールの形をしていた。ただ、形は一定ではなくペッタンコになったりボール型になったり色んな形に変化を続ける。中まで透けて見えるので、取り込まれた魔物の残骸や魔石まで見えた。非常に大きな魔石を持っているようだ。
「さっき言ったこと、覚えてるかー?」
「「「「はーい。」」」」
返事が終わると、やはり全員で一斉に遠距離攻撃。
わかってねーじゃねーか!
ただ、今回は一味違った。ソラの式具が一番初めに魔物に届き、魔石を結界で閉じ込めてしまった。と思ったら、全員が同じことを考えていたらしく、魔石が四重の結界で覆われた。強力過ぎるだろうー!そんな結界!
魔石を封じられたビッグボールアメーバは、身体が維持できなくなり崩れて地面に浸みていった。
魔石を回収し、今日はここまでにしようかと少し考えたが、もう1体の力の大きな魔物のところまで行くことにした。
更に30分歩いて遭遇した。
【鑑定】ゴーレム
名前: なし
年齢: なし
種族: 召喚
加護: ケンジの加護
状態: 普通
性別: なし
レベル: 14
魔法: 土(9)
技能: 体術(7)
耐性: 火・水・土・木・雷・毒・麻痺・腐食
スキル: 【鉄壁】8【再生】5
ユニークスキル なし
称号: 守護の盾役
なんだー!? 明らかに誰かが作ったもんじゃねーか。怪しすぎるぞ!
ケンジって誰だよ!
でっかく作り過ぎだ! 10メートルどころじゃねーぞ。
「みんなー、すっごくでっかいけど弱そうだ。だけど、防御力は非常に高そうだ。でも魔石は残してほしーなー。」
「「「「はーい。」」」」
お前たち絶対、悪乗りしてるだろ!なーにが「「「「はーい。」」」」だ!いつもそんなこと言わねぇし。
だ、だから、何で一斉攻撃なんだよーーー!
ゴーレムの、顔・右胸・左胸・腹に結界が現れた。直後、すぐにゴーレムの全身の崩壊が始まる。すると左胸部分だけを残し、あとは砂になってしまった。
少し時間を置いて、左胸部分も砂になっていき、最後は大きな魔石が残った。
今まで見た魔石の中で一番大きかった。
いつ打ち合わせしてたんだ!?そんな素振り無かったし!若干時間差はあったが、一つ目の結界から4つ目の結界まで1秒どころか、コンマ何秒の時差だぞ?
すげーよ、君たちは。しかも、魔素を完全に遮断する結界って、全員使えたんだ。
私は使えないぞ!
さっきのビッグボールアメーバで閃いたって?私は閃かなかったよ!
ゴーレムが崩れた後ろには洞穴が見えた。
ビンゴだ!
ダンジョンの入り口だった。こっちを選んで正解だったようだ。




