第36話 簡易家改造
簡易家は非常に住み心地が良くて嬉しいんだが、生活空間が5人では少し狭い。しかも寝るスペースが足りない。それで増築するための相談に来たんだが、これ以上大きくするのは得策ではない。
いつも簡易家を置けるスペースがあるわけでもない。ダンジョンだと今の大きさでギリギリだと聞いていた。
それならばどうしたらいいかの相談に来たのだ。あと、馬車も作る予定だ。ノアが馬に変身できるし、偽装のためにはあった方がいいだろう。いらなければ売るか亜空間収納で封印にすればいい。今回の依頼達成で金貨は2000枚は入ってくるし、あとはアイデアだな。空間魔法なんかでなんとかできないものか・・・。
工房の親父が出てきた。前回もお世話になったニーベルトさんだ。まずはこっちの悩みを聞いてもらおう。
「こんにちは、先日はどうも。」
「やぁ、いらっしゃい。家の方はどうですかな?」
「すごく快適で、すごく満足してますよ。宿屋に泊まるより快適なぐらいだよ。」
「それは頑張った甲斐がありますな。嬉しい報告ですじゃ。して今日は何用ですかな?」
工房の親父であるニーベルトさんもドワーフだった。鍛冶屋など工作物をつくるのはドワーフが一番上手いらしく、武器屋・防具屋にもドワーフが多い。
ただ、この町には何人もいないそうだ。
「実は困ってるんだ。メンバーが5人になってね。もしかしたら今後も増えることになるかもしれん。せめて寝るスペースだけでもなんとかしたい。」
「5人ですかぁ、あの大きさでもゆっくりするには4人が限界でしょうな。寝る場所ねぇー・・・。」
「増築ができないかと考えてるんだが。」
「前回も話したと思うんじゃが、これ以上はお勧めできませんな。家を大きくすることだけなら可能なんじゃが、野営やダンジョンを考えますとな、これがギリギリの大きさですな。」
「確かにそうなんだが・・・、2階建てとか空間魔法とか・・・何か無いものか。」
「・・・魔法、魔法か、空間魔法か! 忘れておりましたぞ。魔石も必要にはなるが、何とかできるかもしれませんぞ!」
「おっ? 何か閃いたか? 魔石はたくさん持ってるぞ!」
ほれ、と昨日解体した魔物から出た魔石の一部を見せた。
「ほぉ、これだけあれば・・・。」
ちょっと待ってくだされ。と親父は工房の奥へと入っていく。
用意ができたのか、私たちも奥へと呼ばれた。
「以前にわしが開発していたものなんじゃが、採算が合わずに放って置いたものなんじゃ。一つ魔石を貸してもらえんかな?」
一つ魔石を渡す。
「ここに魔石をセットしてっと。」2メートル角ぐらいのサイコロのような形の箱だった。
「さぁ、入ってみてくだされ。」
ココアと一緒に入ってみる。
「おお!広いぞー!」
「本当ですね、いつもの簡易家以上の広さがございますね。」
「そうじゃろそうじゃろ。広さだけは作れるんじゃ。」
本当に広かった。幻覚かと疑ったので、歩測をして測ったりココアと手をつないで思いっきり伸ばしてみたが、中の空間の広さは本物だった。
「いいじゃないか! なんでこれがお蔵入りになっているんだ?」
「採算が取れませんのじゃ。家で使うということは、家の中にも家具などの物も入りますな。ということはじゃ魔力をずっと使い続けておかないと空間が狭くなってしまって家の中の物が潰れてしまうんじゃ。」
なるほどー。
「例えば、今使ったぐらいの魔石で何日ぐらい保てるんだ?」
「このぐらいの大きさじゃと、この箱で2か月ぐらいかの?タロウさんの持って行った簡易家じゃと広げる大きさにもよるんじゃが、1か月持つか持たないかぐらいかのぅ。」
「いいじゃないか、それで行こう。予算はどれぐらい見ればいいんだ?」
「新たに作るんなら金貨500枚は欲しいのぉ。この前の簡易家の改造にするんなら、金貨200枚ってところか。どうせまた、色々と注文を付けるんじゃろ?」
「わかった親父、いやニーベルトさん。お金の方は、無いことも無いんだが 明日まで待ってくれると確実なんだ。明日、返事するということでいいか?」
もし、報酬を貰えないと困るから返事は明日にしてもらう。ギルドの信用にも関わるから貰えないことは無いとは思うが、まだ貰っていないお金で約束はできない。念のためだ。
金貨200枚なら あるし、魔物を解体した素材で何とでもなりそうだけどね。内装の追加も考えると、今回の報酬が出てからの方が話しやすい。
「期間はどれぐらいでできる?」
「そおじゃのぉ、5日。大急ぎで4日は欲しいのぉ。」
「わかった。これはいいものができるぞー」
「良ろしゅうございましたね、主様。」
「ああ」
私の嬉しそうな顔を見ながらココアも喜んでくれた。
「次は馬車なんだが、ここでも馬車は作れるのか?」
「作れないことも無いんじゃが、馬車は馬車屋の方が専門じゃのぉ。」
「馬車もこの仕様で作って欲しいんだ。」
「わかりましたじゃ。では馬車の方は、うちの職人に作らせるとして、わしが加工をすれば簡易家の合間にできるじゃろう。簡易家の改造と合わせて金貨700枚でどうじゃ?」
「わかった、それで手を打とう。じゃあ明日また来る!」
簡易家は置いておいても邪魔だろうから、明日一緒に持ってくると言ってるのに、適合確認の検査もあるからと置いていかされた。
仕方が無いので、金貨200枚は払っておいた。




