第34話 狩りをした
魔物の肉が心許無くなってきたので、全員で狩をすることにした。
制限時間2時間で。そのぐらいで丁度いいだろう。
ここはノアの縄張りなので遠慮して、町が見えなくなったところで、少し早めの昼食を摂り、ロンレーンに向けてノアに飛んでもらい、ちょうど中間地点あたりの森に来た。
サーチすると沢山の赤い点が確認できた。この当たりの魔物は赤い点も大きめが多く、ランクの高い魔物が多そうだ。
2時間後、魔物の山が5つできていた。5人だからねーーっってーーー?
獲り過ぎーー!そりゃ私も獲ったさ、負けたくないもん。でも、みんなでそれをやったらダメでしょう!どうすんの?この魔物の山!
1人50匹以上って獲り過ぎでしょ!竜とかもいるし。
私は刀。ココアは薙刀。ソラは一度必殺技を出したが、魔物が全部粉々になったので、後は薙刀にしていた。火と雷と風の複合魔法で、技名も必殺技『壱号』だそうだ。強力過ぎー。
ノアも初めは竜化してブレスを放つと魔物が消し炭になったので、人型に変わり剣や槍で倒していた。剣や槍は扇子を変化させた物だった。式具ね。色んな武器に変化させ試しているみたいだった。
ミルキーはケルベロスになり魔法と牙とで魔物の山を築いていた。
今度武器を買ってやろう。
移動の時のための簡易家は5人では、もうちょっと狭くて全員で寝られないことも無いが、ロンレーンにはたどり着けなくも無かったので、今日は無理してでもロンレーンに辿り着きたかった。
魔物はすべて亜空間収納し、解体は明日全員でやろう。
もう少しノアに頑張ってもらって、町の方に飛んでもらった。町の5キロ前ぐらいで降りてもらい、ちょうど日が暮れたころにロンレーンに到着した。
まだ冒険者ギルドは開いてるから、先に寄ることにした。
ココアとソラに、前に泊まった宿を予約してもらうために、宿に向かわせた。
私とノアとミルキーで冒険者ギルドに入る。2人とも美人だから目立つ。その分私を見ているものはいないので、私は目立たない。目立ちたくない私にはありがたいことです。
受付は戻ってきた冒険者で混みあっていた。
受付の奥に秘書のマリオンさんを発見したので、また手を振り合図を送る。
今回は一発で気付いてくれた。マリオンさんがこちらに来てくれたので、ギルマスを呼んでもらう。
すぐに3階のマスタールームに通された。
「お帰りなさい、タロウさん。貴方との話はたくさんあります。今回は違う二人をお連れのようですが、お持てになりますね。」と嫌味から始まった。
「まぁ、だいたい言いたいことはわかるが、それぐらいで勘弁してくれ。」
「おや?少しは大人になられたようで、こちらの話も聞いていただけるようになったんでしょうかね。」
「わかったから、もうそれぐらいでいいだろ?」
「そうですね、これぐらいにしておきますか。」
秘書のマリオンさんがジュースを持ってきてくれる。
「まずはこっちから言おうか。報告の前にモヤモヤをすっきりさせたい。家のことだろう? やっぱり足が出てたか?」
「そちらからおっしゃっていただけるということは、足が出た分はお支払いいただけるということでいいんですね。」
「ああ、それでいい。いい買い物をさせてもらったからな。快適な家だった。」
「そうでしょう、そうでしょう、これだけかかった家ですからねぇ。」
「わかったから。で、いくら渡せばいいんだ?」
「それでは、金貨100枚いただけますか?」
「わかった。これでいいな。」とすぐに 金貨100枚を出して渡す。
ありがとうございます。とアラハンは金貨を仕舞った。
「ついでだから言うが、人数が増えたんで少し狭くなった。またあの工房に頼んでもいいな?もちろん自前だ。」
「それは結構です。ご自由になさってください。」
「ありがとう。では、報告に移ろう。」
「伺っておりますよ、ノーライザの町での活躍も。それにしても、もうここにいるってことは信じられない速さの乗り物をお持ちなんですか?」
「そこは秘密だ。しかし、情報が早いんだな。」
「おっと、そうでした。余計な詮索はこちらも本位ではありません。失礼いたしました。情報が早いのは、我々冒険者ギルド間では通信水晶を使ったり、使い魔や精霊を使役し、テレパスを使わせたりして情報のやり取りをしていますからね。」
情報が命ですから。と、自慢気に話している。
「他にもノーライザのギルマスより伺っているのですが、3件のうち2件が解決したとか?ちょっと信じられないのですが・・・・おっと、前回はこれで失敗しましたね。」
「そうなんだ、2件の依頼は完了しているんだが、証明するのがちょっと難しい。」
「どういうことなんです?討伐されたんではないんですか?」
「討伐はしたんだが・・・。」
仲間って言ったらこのギルマスどうなんのかな?内容の確認からだな。
「依頼の確認だが、ヴァルカン山の火竜については、付近の町や村を襲うから何とかしてほしい。だったか。」
「そうですね。」
「サントスの森のケルベロスは、鉱山を襲うから何とかしてほしい、だったな。」
「その通りです。」
「じゃあ、別に討伐では無いな?」
「その通りですが、討伐意外だと何があります? 奴らは縄張りを変えることはありませんよ。縄張りから出て行かせることは無理ですから、やはり討伐ということになりますね。」
「それが・・・・ね。」
「はい、それが?」
「言い難いんだが。」
「はい。おっしゃってください。」
「仲間にしたんだ。」
言っちゃったぜー。言い切ったよ、自分で自分を誉めてやりたい。
「何をおっしゃっているのか良くわかりませんが。」
「だからー仲間にしたんだよ、火竜と、今は神龍になったけど。と、ケルベロスを仲間にしたの。」
アラハンは口を開けたまま呆気に取られてる。この人大丈夫か? みたいな目で見てくる。
「そりゃ信じられないのはわかるが、どうやって信じさせるか困ってるんだよ。」
「・・・・・本気でおっしゃってます?」
「本気だよ。」
前のこともあるから信じたい気持ちもあるが、絶対に有り得ないとも思っている。
アラハンの葛藤する姿を見て、少しは信じてくれてるんだと少し嬉しくもある。
見せるのが一番なんだが、どうやって見せたもんか。町中だしな。
「タロウさんを信じたい気持ちはあるんです。今日も、今朝ノーライザを出発したはずなのに ここにいらっしゃる。凄い方だとはわかっています。ただ、今回の2件については人の命が掛かっていますから、確認もせずに依頼完了とは言えないんです。」
「タロウ様、見てもらえばいいんではないですか?」
「そうよねぇ見せるのが一番よねぇ。」
黙って聞いていた二人が口を開く。
「どこで見せるんだ? ここは町中だぞ?」
「おお、それはいい。見せていただけるのなら確認しますよ。」
アラハンまで同意する。
知らねぇぞ、町中大騒ぎになるぞ?
「わかった。見てもらおう。アラハンさん、火竜は神龍に覚醒して高さ10メートル程度になっている。そんな竜をどこで見せればいい?」
「じゅ10メートルですか・・・・。」
アラハンはしばらく考え込む。
「やはり町の外しかありませんねぇ。10メートルの竜を隠せるところはありません。」
「わかった。明日、私たちは魔物の解体のため、朝から町の外で作業することにしている。そこに一緒に来てもらえるか? 他にも報告はあるが、まずはそれからだ。」
「わかりました。では明日の朝、時間を空けてお待ちしております。」
馬車を用意しておきます。というアラハンと別れ、宿に向かう。




