第33話 囮のドレミ
ソラの件で時間もかかったので少し駆け足で宿まで戻った。
ノアがもう待ちきれないでいることだろうし、ミルキーももう帰ってきているだろう。
宿に着くと、ミルキーではなくアトムがいた。部屋ではノアとアトムが待っていた。
アトムたちの帰りが遅くなった理由を聞こうと思ったが、もう時間も遅く、宿の人が早く食べてくれと催促に来ていたらしいので、先に食事を摂ることにした。
食事を摂り、部屋に戻るとアトムが説明してくれた。
町を散策していると、妙に怪しい連中がいるのにミルキーが気づいたらしい。
人攫いの話を聞いていたので、ドレミに変身して罠を張ったらしい。
人攫い共がまんまとドレミに食いついたので捕まった振りをしてアジトまで行って、アトムに変身してアジトを壊滅させてきたという。今、アジトは全員気絶させて縛られている状態らしい。
アジトの場所は、ソラの時の人攫いに聞いたところと同じのようだ。
一つの部屋に閉じ込めて、出入りができないようにしてきたから、他のメンバーが帰ってきてもどうすることもできない状態にしてきたそうだ。入り口も偽装していて見つからないだろうとのこと。ボスらしい奴もいたらしいので、雑魚が逃げても問題とはならないでしょうだとさ。それはいい。それはいいが。
「ちょっとアトム。そこに座りなさい。」
アトムが座る。
「正座!」慌ててアトムが正座する。
「アジトを壊滅させたことは誉めてやろう。」
「ありがとございます。」
「その後の対処もまぁいいだろう。大したもんだ。」
「あ、ありがとうございます。」
「だがな、うちのドレミちゃんに何させてやがんだ!お前らは!もしもドレミちゃんに何かあったらどうするんだ!これは誰が考えたんだ?お前か!ミルキーか!?」
「い、いえ。どちらがというか、ドレミも強くなっておりますし、その・・・。」
「わかってるよ!一応ケルベロスだしな!だが、ダメだろう!ドレミちゃんだぞ!お前たちのやったことは犯罪だぞ!オレのいた世界じゃれっきとした犯罪だ!私が許すと思ってんのか!」
「最近ではドレミの弓剣術の腕も良いもの持っておりますし、人間程度にはまず負けない程度にも・・・。」
「そんなことは知ってんだよ!だからと言って・・・」
「知ってるんですか?タロウ様。」
「いや・・・そんなことはどうでもいいんだ!お前たちがドレミを囮に使ったことを言ってんだよ!」
知ってるよ、弓が得意なものは剣も習った方がいい。矢が無くなった時には弓を剣のように使う武術もあるそうで、隠れて弓剣術の稽古をしてるドレミを見て 凄腕だと驚いたもんだ。しかーし!
説教は延々と続く、途中ミルキーに変わらせ、ミルキーにも説教をする。
途中、気が付いた時には私とミルキーだけになっていた。
説教が終わったのは夜中12時を回っていた。まだまだ説教が続きそうだったのでミルキーがドレミに変身させたのだ。
ドレミちゃんは怒れないよねー。
次の日の朝食はドレミだった。ミルキーもアトムも出てきませんでした。
誰が食っても一緒だけど、ドレミの場合は食べる量が少ないのにね。
ドレミを抱っこしたまま、ギルドに到着。私は上機嫌だった。
ギルド登録はミルキーでしているので、入る前に泣く泣くミルキーに変身させる。
言っておくが、私はロリコンではない。誰だって可愛いと思うよ、うちのドレミは。
親馬鹿と呼ばれてもいい、本望だ!!
ギルマスを呼び出してもらい、マスタールームに通される。
昨夜のソラとアトムのアジトでの説明をする。
捕えてはいるが、人質の解放はしていないので、付いて来てもらおうと思ったのだ。
結構な人数がいるようなので、私たちだけでは運べないから。
運ぼうと思えば運べるのだが、それぐらいはやってもらってもいいだろう。
「もう解決か!早すぎるぞ!」
「解決かどうかはわからんが、一度アジトまで一緒に行ってほしい。依頼者の子供がいるかどうかもわからんからな。」
「ではすぐに出よう、幸い朝だから冒険者も多い。手が空いてるものは全員連れて行こう。役員には誰かを伝言に出すことにする。馬車もいるな、すぐに手配する。」
全員でアジトに行くから、誰もいなくなるんで受付の者でも問題ないからと、受付のお姉さんに役所へ伝言役を頼むと、冒険者全員でアジトに向かった。帰ってきていた雑魚が何人かいたが、冒険者の前では問題にならず、すぐに捕まった。グループの者を捕えて押し込めていた部屋は扉をアトムがうまく偽装していて、全員まだ気絶しているから声も出してないし、戻っていた連中も今日は人が少ないなぁと思ってたぐらいだったそうだ。
いい仕事してるんだけどねぇ、アトムは。ドレミを囮に使わなければ。
知ってるよ、ドレミだって人間のアジトを壊滅できるぐらいの力を持っていることは。でもねー。
アジト壊滅、全員捕縛、人質解放完了。
全員で役所に行き、そのまま冒険者ギルドに戻ってきた。
「タロウさん、ありがとう。」マスタールームでギルマスが頭を下げる。
「今回は偶々だ。いい情報も手に入ったからこっちも満足している。」
「それは良かったな、では報酬だ。討伐報酬と指定の人質解放で金貨500枚と+500枚だ。」
「多いんだな、たかがこれぐらいで。」
「そんなことはないんだがタロウさんに掛かれば、たかがなんだろうな。ま、受け取ってくれ。」
「ではありがたく。」
「それでこれからどうするんだ?まだ頼みたい仕事はあるが、優先度から行けば、そっちの抱えてる仕事が先だろうがな。」
「ああ、一度ロンレーンに戻ってからになるだろう。」
別に荷物も無いので、その足で町の外に出た。
冒険者ギルドを出る時には、冒険者たちにお礼を言われた。全員、臨時ボーナスが入ったようだった。
もうほとんどの連中が飲み始めていた。
私たちも誘われたが、何とか断り、町を出た。
ちょっと修正しました。




