第29話 長と主
一度家に入り、ミルキーから少し話を聞く。
「ケルベロスが鉱山を襲うとの依頼でここにいるわけだが、なぜ鉱山を襲うんだ? それも最近になってということで聞いてきたが。」
「それは・・・、最近森の中に妙な人間たちが現れまして、それがこの鉱山から来た者たちではないかと思い、ここの人間たちを懲らしめようと・・・。この辺りで人間がいるのはここしかありませんから。」
「何が妙なんだ?」
「それがハッキリとは確認できてないのですが、竜を連れていると思われるのです。」
「竜?? ハッキリ確認できていないのになぜわかるんだ?」
「はい、私はこの森の長です。もちろん配下もたくさんおります。・・・その質問からしますと、タロウ様はエリアボスについて詳しくはご存じないのですね。私はサントスの森の長です。そちらにいらっしゃるのはヴァルカン山の主と見受けられますが・・・。」
「あらぁ、よくわかったわねぇ。」
「ええ、以前に殺されかけましたから。」
「あらぁ、あの時のケルベロスはあなただったのぉ?」
「はい、当時のアトムが空間潜りを使い難を逃れました。あのブレスが直撃されてたら私たちはこの場にいなかったでしょう。話が少し逸れましたね。私たち エリアボスには腹心がおります。腹心たちもそれぞれ配下を連れております。腹心が最期を迎えるとき、そこで見たことは私に映像として送られます。腹心も同様に配下の映像が見れます。腹心が配下から送られた映像を私に送ってきたため、映像が鮮明ではなかったのです。その映像で確認したものの中に、赤いドラゴンが映っていたのです。」
赤いドラゴン、火竜ってことか?
「その映像を私が見ることはできないか?」
「ではこちらで。」とミルキーは両手を胸の前で合唱をし、手の隙間を広げていき10センチぐらい広げたところで止める。すると両手の間の隙間が光り水晶を現れた。
その水晶を机に置き、ミルキーが目を閉じ集中すると水晶の中に映像が映し出された。
確かに赤い竜がいるように見える。人間も確認できる限り5~6人いるようだ。
しかし、ぼやけていて男か女かも確認できない。最後は竜からのブレスで映像が終わった。
死んだのだろう。
映像を見終わると、ノアが口を開いた。
「これはぁ、火竜ではありませんねぇ。」
「わかるのか?ノア。」
「えぇ、レッドワイバーンで間違いないと思いますわぁ。」
「レッドワイバーン・・・、強いのか?人間の言うことを聞いてたみたいだが。」
「いいえぇ、強くなんかありませんわぁ、こんな雑魚ぉ。」
扇子を扇ぎながら興味無さそうに答える。
「そうですね、レッドワイバーンであれば、私でも倒せると思います。が、人間が5~6人では余程の者でも無い限りレッドワイバーンには敵わないと思います。そうですねぇ、Aランクパーティが2組以上が妥当なところでしょうか、しかも生け捕りにするとなるとそれ以上の実力が必要ではないかと思います。それに従わせるとなると、特殊な術者かアイテムも必要です。」
おっ、いいじゃないですかミルキーさん。話し合いになってますよー。これこれ、こういうのを待ってたんですよー。以前はココアもこんな感じだったと思ったんだけどなぁ。ノアさんは残念です。レッドワイバーンは見破ったけど、同じドラゴン系だしね。
「これはいつ頃のことだ?」
「1か月程前です。それで、この鉱山から人間を排除するために暴れていたわけです。この鉱山を拠点としていたと思っていましたから。」
辻褄は合うな。それとレッドワイバーンなら火竜と間違うこともありえるな。火竜が暴れた報告もレッドワイバーンじゃないのか?
ノアはやってないと言うし、その可能性が高いな。
どんどんパズルのピースがはまっていく感じはあるが、目的がわからない。
町を襲ってメリットはあるのか?魔物まで襲っているようだし。もう少し情報がほしい。
ここではこれ以上わからないだろうし、襲われた町にでも行ってみるか。
「ノア、ヴァルカン山の周辺で襲われた町ってわかるか?」
「山の者に聞けば、分かると思いますわぁ。わらわは興味ありませんでしたからぁ。ただぁ、縄張り内に戻らないと聞けませんのぉ。」
まずはヴァルカン山に戻るか。
「よし、ヴァルカン山に戻ろうか。ノア、また頼むぞ。」
「わかりましたわぁ。」
家の片づけも終わり、周りを確認する。
「ミルキー?ノアに聞くのも忘れていたが、お前たちが縄張りから出て行ったあとはどうなるんだ?」
「私には配下にダークウルフがおりますので、私が不在の時にはそのものが取り仕切るようになっています。」
「わらわは、君臨しているだけでそんな面倒なことはしませんわぁ、逆らう者や山を荒らす者は排除するだけですからぁ。ですのでぇ、山に戻れば誰でも詳しく教えてくれますのぉ。」
この辺が 長と主の違いなのかな?性格通りだな。
ノアに聞かれた奴は必死なんだろうな。間違ってたりしたら命にかかわりそうだもんな。
またノアに乗り、ヴァルカン山を目指す。ノアの負担を減らすため、ココアはブレスレットにソラはスライムになって私の懐の中にいる。
私とミルキーを乗せて、ノアがヴァルカン山に向けて飛び立つ。
隣にいるミルキーを眺めながら、どうやってドレミに変身させようかと考えていたらもう町の近くまで来てしまっていた。
「ノア、一番大きな町の近くに降りてくれ。町から見つかりにくいように少し離れたところがいい。」
「わかりましたわぁ。」
町から5キロぐらい離れた山の中に降り立った。最後は低空飛行で目立たないようにしてくれた。
今は全員が人型になっている。
家を出す程ではないが、あるんだから出しておこう。
「ノア、疲れているところ悪いが、まずは情報収集だ。レッドワイバーンについて山の魔物に聞いてくれないか?」
「わかりましたわぁ、でも、全然疲れてはいませんわよぉ。」
そう言うと、すぐにノアは扇子を広げ、扇子で口元を隠すようにして目を閉じて集中している。
その間、私たちは食事の用意だ。今回はミルキーにも参加してもらい、解体や料理を教えながらなので余裕をもってゆっくり作っている。ソラは採集に行ってしまった。
食事の支度も終わり、ある程度情報も集まったようなので、全員で食事にする。
ソラもいつの間にか戻っていた。どうやら近くに居たようだ。
食事の最中も情報が集まっているようで、その度にノアが扇子を広げるので、話は食事が終わってから聞くことにした。




