第28話 ミルキー アトム ドレミ
「う、動けぬ。これはどうしたことだ。」
ケルベロスが気が付いたようだった。
「オレ達は敗れて、捕らわれた。あなたは死にかけていたが、今回復してもらって意識を取り戻したところだ。」
右の首が説明する。
「そうか、敗れたのか。ではなぜ我々は生きているんだ?」
「それはオレにもわからない。あちらさんに聞いてくれ。」
右の首がこっちに向いた後に続いて、真ん中の首もこちらに向く。
見つめ合ったまま沈黙が続く。話しかけるタイミングを逃してしまった。
「ご主人様ー、この子もう回復してるよー。まだ何か困ってるのー?」
ナイスですソラさん。その空気を読まないところ。切っ掛けをありがとう。
「いや、もう大丈夫だ。ソラ、ありがとう。」
「えへへー、ほめられちゃったー。」
一旦ソラに向けた視線をケルベロスに戻す。
「お前、私の仲間になる気はないか?」
真ん中の首は少し考え 答える。
「そういうことでしたか。敗れはしたが生きている。しかも回復も施されはしたが拘束もされている。その上で、配下になる要請。断れば、即 死を意味しますね。分かりました。敗れた私には断るだけの力もありませんし、私も命は惜しい。貴方様の配下に下りましょう。」
そう言うと目を閉じた。そして私の額が光る。
おぉ?論理的に考えてたぞ! これは私の参謀候補ではないか? 期待できるんじゃないか?
ノアの縄張りでは謎がありそうだし、良い知恵を貸してくれるかもしれないな。期待大だ。
さあ、名付けだな。
「早速名前を付けるぞ。」
ソラとココアの期待はもう気配でわかる。見なくてもいい。
「ミルキーでどうだ。」
真ん中の首が淡く光る。
「ありがとうございます、貴方様のお名前も伺ってよろしいでしょうか?」
「ああ、私はタロウだ。」
「タロウ様ですね、良いお名前です。タロウ様、無理なお願いかとは思いますが、右の首と左の首にも名前を授けていただけないでしょうか。そうしていただくことで、より一層お役に立つことができます。」
「別に構わないが、右は男のようだな。左はどうなんだ?」
「左の首は女でございます。」
男にもキラキラなんだろうな。とソラとココアに目を向ける。いつにも増して期待しているようだ。
3つだもんな。
「では右の首にアトム、左の首にはドレミと名付ける。」
今度は全身が淡い光に包まれる。
名前: ミルキー アトム ドレミ
年齢: 480
種族: 魔獣族
加護: 佐藤 太郎の加護
状態: 普通 普通 普通
性別: 女 男 女
レベル:35
魔法: 水(3)・木(3)・土(9)・光(3)・回復(4)・闇Max・空間(6)
技能: 牙Max・剣・槍・弓・料理(2)・解体(2)・遮断(8)・回避(4)
耐性: 熱・風・木・水・雷・毒・
スキル:【変身】9【俊敏】Max【空間移動】1【冥界移動】4【痛覚無効】4【隠形】4
ユニークスキル: 【冥界とのつながり】
称号: 地獄の番犬 サントスの森の長
おお!なんかすごくなってないか?やっぱり3つの名付けは強力なのかもな。
覚醒の伸び率が大きいぞ。料理は私の影響だろうな、ノアにも付いたし。
「ありがとうございます、タロウ様。」
「覚醒の上がり方がすごいな。」
「それは、アトムとドレミも覚醒したことが原因だと思います。私たちは それぞれ得意分野が異なりますから。闇系に関しては共通ですが、アトムは隠形や移動・空間を、ドレミは回復や補助の魔法、私は攻撃魔法です。得意武器も私は剣、アトムは剣と槍、ドレミは弓です。」
そういうことか、3人が1つの身体を共有してるわけだから、スキルなんかも増えるわけだ。変身はどうなんだろ?
「変身もできそうだが、何に変身できるんだ?」
「私たちが変身できるのは人の姿だけです。人に変身するときは、3人のうち誰か一つだけしかなれません。」
「見せてくれるか?」
「わかりました。」と淡く光り、ケルベロスの巨体がみるみる縮まり女性の姿になった。
見た目は20歳ぐらいだろうか、ショートカットの活発そうな可愛い系で身長は160センチだ。目はパッチリとして茶髪だった。論理的思考をしていた時とはギャップを感じる姿だ。
「次はアトムに。」と再び淡く光り身長が伸びていく。
180センチぐらいの細身だが、力強く俊敏そうな単髪の色黒の少年に変わった。
20歳前ぐらいだろうか、私が女だったら惚れてしまいそうなぐらいのいい男だった。
変身すると男も女も美形になるのか?それともうちの子だけ?
「オレの次はドレミだな。」と また淡く光り変身する。
ドレミは小さな女の子だった。小学校の1年生にもなってないぐらいだろうか。
1メートルぐらいの背丈で、どんぐり眼の可愛らしい女の子だった。
すこし首を傾げながら
「・・・・とーちゃん?」
「!!!!」
私に魔物の子供はおりません。が、可愛いらしーーーー。
刷り込み効果のようなものなんだろうか、ドレミは今まで話せなかったようだし初めて自我が芽生えたところなのだろう。
私は思わずドレミを抱き上げた。たまらなく可愛いい。もう、とーちゃんでいい。
いや、とーちゃんがいい。とーちゃんでお願いします。
「・・・・ああ・・・。」
「やっぱり どれみのとーちゃんだー」と私の顔に抱きついてくる。
あーーー癒されるーーー。
「主様!」デレデレの表情の私はココアから注意される。
その声で我に返り、3人からの痛い視線に苦笑いしながらドレミを降ろす。
「じゃあ、みるきーおねぇちゃんにもどるね。」と、また淡く光り変身する。
ミルキーに戻った。私の残念そうな表情を気にすることなく説明を続ける。
「あと、ケルベロスの姿で小さくなることもできます。レベルに関しては共通なのですが、熟練度に関してはそれぞれですので、できる限りケルベロスの姿でいたいと思うのですが構いませんか?」
「それは困るな。私たちは人の町にいることもあるんだ。ケルベロスの姿は、町の外限定にしてほしいが・・・。」
「そうなのですね」
ミルキーは少し考え込むと
「では町にいる間は、私たちの起きている時間をずらしてそれぞれの姿の時に熟練度を鍛えることにしましょう。少し身体に負担はありますが、タロウ様のお役に立てるように鍛えねばなりませんから。」
そんなこともできるのね。
「わかった。それでお願いするよ。」




