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第216話 最終回

 結婚か・・・結婚ね。

 1か月後って言ってたな。その前に出来る限りの事を終わらせておこう。


 その前に・・・この惨状をどうにかしないとな。


 バンブレアム城から戻って来ると、既に連絡が全員に回ってたようで、仲間全員が食堂に集合していた。

 獣人国に行ってる者も全員来ていた。

 元南の勇者達も、元北の勇者達も全員来ていた。


 皆、騒ぐだけ騒いで、飲むだけ飲んで、食べるだけ食べて、食堂は惨状と化してしまった。


 今日ぐらいは大目にみるか、私の為に祝ってくれてるんだしな。



 騒ぐだけ騒いだ次の朝は、全員が宿酔いだ。

 こいつらは放っておいて、やる事をやっておかないとな。

 結婚式までには、ある程度形にしておきたい。


 ケンとモイチは飲んで無かったようで、作業に入ってくれていた。

「どんな感じだ?」

「はい、順調ですけど、もっと時間が欲しいですね」

「そうだね、全然時間が足りないよ。タロウさんも結婚してる場合じゃないよ」

モイチもケンも時間が足りないと嘆く。結婚の事は冗談だろうけど、ホント時間は足りないと思うな。

 【那婆羅】や【那由多】とまでは行かなくても、何か劣化版でいいからスキルを付けてやれないかな。

――可能です。


 そうなのか? それじゃ付けてやってくれるか?

――分かりました。


――【ロブギフト】


――従者全員に【那由多】より劣化版になりますが、【恒河沙(ごうがしゃ)】を与えました。


 え? 全員? この一瞬で?

――従者とは繋がりがありますので、近くにいる必要はありません。


 【那婆羅】になってホント仕事が早すぎだ。


「ケン、モイチ、今ユニークスキル【恒河沙】を付けてやったが、どうだ? 解析や錬金が早くなってないか?」

「はいー! 急になんですかこれは! 早いです!」

「ホント早いよ。なんでもっと早く付けてくれなかったの!」

 モイチは感動してくれたけど、ケンには怒られた。

 今、思いついたんだから仕方がないじゃないか。

 でも、これで作業効率は上がるな。私も参加して創って行こう。


 洗濯機、電子レンジ、腕時計、スマホ、パソコン、車、バス、電気シェーバー、ドライアー、炊飯器、ステレオ、MP3プレイヤー、BDプレイヤー、LED、IHクッキング、モニター、電動歯ブラシ、フィギア、電子オルガン、デジカメ・・・・

 解析してきた物を片っ端から私が創る。

 その創った物をケンとモイチで解析し、電気式のまま使うのか、魔石や魔法と組み合わせて使えないかと試行錯誤して作り上げていく。

 途中からは、【創生】を付けてやったリクとニコとゴロウが加わり、色んな意見が交わされる。

 ソラは独自でやってるみたいだ。そうしてくれた方がありがたい。


 将来的には魔石との組み合わせになってくるだろうが、まずは電気を使うのがメインとなりそうなので、私はまた元の世界に戻る事にした。

 ソーラーシステムって、何社でも作っているみたいで、色んなメーカーの物を試そうと思ったからだ。


 日本の私の部屋に、転送魔法陣を創ってあるので、コスモのいる異空間を経由せずに直接転移した。


 あれ? ここは、いつもコスモがいる異空間じゃないか。

 日本の部屋に転送したつもりが、真っ暗な異空間に転移してしまった。

 

 失敗か? いや、そんなはずはない。【那由多】の時でも失敗なんかした事が無い。それが【那婆羅】で失敗するとは思えない。

 そもそもこの異空間には転送魔法陣を創って無い。

 クリエイターあたりの仕業だろうか。


(【那婆羅】、何があるかわからん。念の為、いつでも転移できるように周囲の解析をしててくれ。)

――分かりました。前回解析が完了していますので、準備はできています。


「タロウー!! あなた何メチャクチャにしてくれてんのよ! 私の創った世界になんてことしてくれんのよ!」

 怒声と共にクリエイターが現れた。コスモも一緒に来たようだ。

 もう1人いるようだが、誰だろう。昔、このクリエイターのサチコと付き合ってたっていうカツヒコって別のクリエイターか?


「私は奴隷や生贄が無くなるような世界にしたいから、いい世界にしようとしてるところだ」

「そんなのはいいのよ。タロウはこちら側に来る気は無いって言ってたよね」

「ああ、言ったぞ。だが、ここは私の住む世界だ。私の住みやすいように、気持ちよく住めるようにしているところだ」

「それにしたってやり過ぎよ。なんなのあの空中を走る電車は。小さな村だったけど、電気もあったわ。この世界で電気は無しなの、この世界は魔力なの」

「別に便利なら電気があったっていいじゃないか。便利になれば人の手を借りる事が減るんだ。減ると奴隷も減るんだ、態々奴隷がしなくてもいいことが増えるからな。お前は何の為に奴隷がいるのか知ってるのか?」

「知らないわよ! 奴隷は奴隷よ、そんな事知らなくてもいいの、奴隷がいる事に意味があるんだから」


 何だ、その勝手な法則は。ファンタジーには奴隷が付きものだから無くてもいいのに敢えて出してるだけか。

 私も大概勝手だと思うが、こいつは私以上だな。


「奴隷の仕事とというのは農耕なら牛馬の代わりに畑を耕すとか、開拓の為に森林伐採するとか、耕地開拓や山での採掘。こんなもの便利な道具があれば奴隷なんかいらないし、事業にもなる。逆に事業にしないから、開発も行なわれないから発展もしないんだ」


 私は更に続ける。

「他には家の中の仕事だ。炊事、洗濯、掃除の家事全般だ。こんなもの、便利な電化製品があれば時間も短縮できるし人手も多くいらない。時間も余るし、人手も余るから奴隷なんかいらなくなるんだ。敢えて奴隷にさせる事なんてないんだよ。しかも豊かになるから、その分教育や事業に余った人材や時間を回せばいい。本来、奴隷なんていらないんだよ」


「奴隷はいるの! 絶対にいるの!」

 何をそこまで奴隷に拘ってるんだ。

「お前の言ってる奴隷ってファンタジーに付きものの性奴隷や貴族が好き勝手に殺す奴隷の事か? それこそ人間として辞めるべき事だろ」

「そうよ! それが無いと創ってて面白く無いじゃない」

認めたよ。こいつが元凶か。だから発展しない世界になってたのか。


「そんなのは認めない。だから私が便利な世界にして奴隷を無くしてやるよ」

「ぐぬぬぬ」

 クリエイターのサチコは怒ってはいるが、武力で実力行使する気は無さそうだ。

 神の件で、私の方が強い事は分かってるからだろうな。


「そうは言うがよ、これ全部する気か?」

 横で聞いていたコスモが話に割り込んで来た。

「これ?」

「ああ、あの光ってる無数の世界の事だ」

 コスモはそう言って光の群れの方を指さした。


「あの世界の半分以上は、タロウのいる世界同様に奴隷制度があるぜ。そういう風にこいつが創ったからな。その全部の世界から奴隷を解放するのか?」

「そんな事までは知らないよ。私の関わった世界だけだ。見た事も無い世界まで私がする必要は無いだろ」

「このサチコも勝手だが、タロウも大概勝手だな。そんな自己満足だけで我々に逆らうのか?」


 そうだよ、私は勝手だよ。相談する相手もいなかったんだ。仲間は私の意見に反対なんかしないし、そりゃ勝手な奴になるだろ。 

「ん? 我々? 奴隷はお前ら全員の総意なのか?」

「奴隷が、と言う訳はじゃないぜ。我々は役割分担をしてんだよ。このジーザスが世界を創り、その世界にサチコ達クリエイターが理を創る。そしてオレがその世界を管理する。それぞれの事には一切口出ししない。そう決めてんだ。だからサチコに逆らうって事は、我々に逆らうって事にもなる」


 こっちの見た事も無い奴はジーザスだったのか。一言もしゃべらないな。

 でも、それぞれの事には口出ししないって言ったが、今回は私がサチコの理を変えた事で全員で抗議に来てるって事か?


「全員で私に抗議に来てるって事なんだな? それならとことん逆らう事にしよう。あの無数の世界も奴隷解放してやるよ」

 こうなりゃ意地だ。やってやるよ。


「まぁ、そう意地になるなよ。我々としては、これ以上手出しをしてほしくないだけだ。タロウは我々の手に余る存在だが、我々もこれ以上勝手をされるのは気に入らないんだな。だから提案だ。もうその世界はタロウの好きにしていい、だから他の世界には手を出すな。それとも我々の仲間になるか? 前にサチコに誘われたんだろ?」


確かに前に誘われた事はあるな。その時は茶飲み友達を探してるだけだと思ったが、こういう関係の仲間にならないかって事だったか。


 サーチの画面が目の前に突然現れた。【那婆羅】が出してくれたようだ。

 赤い点が私を囲むように点灯している。

 これって緊急事態か?

――警告する程ではありませんが、念の為の報告です。囲まれているようです。


 おいおい、囲まれているのは見たら分かるよ。警告する程じゃないって・・・こいつら全員【鑑定】で見れないんだが、問題無いのか?

――解析完了しています。


「こいつらは?」

「へー、見えてるのか。今、タロウを囲んでいるのはクリエイター達さ。普通、こっち側の者じゃないと見えないはずなんだがな。やっぱりタロウはオレ達の仲間になるべき奴だったんだな」


 私も見えてる訳じゃ無い。【那婆羅】が解析してサーチで出してくれてるだけだ。

 このまま戦闘になったら勝てないぞ。


「私は反対よ。前に誘ったのに断ったのよ、なによ今さら」

「サチコ、お前カツヒコに振られたからって、八つ当たりしてんじゃねーよ」

「な、なーにを言ってるのかなー。何で知ってるのよ」


 コスモはサチコを無視して話し出す。

「どうするか決まったかい? 仲間になった方がいいと思うぜ」


 このままここで暴れたとしよう。【那婆羅】が警戒する程では無いって言ったって事は、私からすると弱い奴らなんだろう。

 それで倒してしまったらどうなるんだ? こいつらって世界を幾つも創ってる奴らなんだよな。

 それが死んだら誰が世界を管理するんだ?

 こいつらの役割分担って、ジーザスが世界を創り、クリエイター達が理を創る。それをコスモが管理するんだったか。

 でも、クリエイター達も管理はしてるんだよな。理に異変が無いか管理はしてたよな。

 異変があれば封印したり、排除したり、足したり、創り変えたり。それを総括して見回ってるのがコスモって訳か。

 じゃあ、こいつが1番偉いのか。


 私がコスモを睨んでいると、コスモからの最終通告をされた。

「これが最後の確認だ。オレ達も暇じゃない。後でなんて返事はいらない、ここで今すぐ決めてくれ。オレ達の仲間になるのか。それともあの世界1つで納得するのか」


「・・・私は・・・お前達の・・・仲間に・・ならない・・・」

「カツヒコー! なんであなたそんな所にいるのよ! 私はまだあなたに話が・・・」

「カツヒコ?」

 私はサチコが叫んだ方に向かって振り向いた。


「はい」


 え?


「「「「はい」」」」


 え?


「「「「「はい」」」」」


 え?


「はい」「御意」「了解」「かしこまりました」「りょーかい」「ラジャー」「はい」「ほーい」「オッケー」「はーい」「了解」「はい」「はい」「はい」「御意」「了承しました」「かしこまりー」「受領」「了解です」「こちらこそー」「OK」「らじゃ」「オッケーです」「了解しました」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」「はい」・・・・・・・・・・



 え―――――――? なにこれ?

 私は、『仲間にならない』って言っただけだぞ?

――その後、『か』と付け加えました。


 え? そんな事言って無いぞ? その後には・・・「カツヒコ」って言ったか。

 え? あ! カツヒコの『カ』!? いや待ってくれ、そんな、いや、だって、ちょっと、おい、待ってくれ。『仲間にならないカ』ツヒコって続けて言っただけじゃないか。


――キーワードが大事なのです。


 ・・・・ホントお前はブレないね・・・。


 ・・・じゃあ、このジーザスとコスモとクリエイター達が仲間になったのは分かったよ。それ以外にも大量の返事が来たのはなんなんだ。


――コスモ達が現れる前に指示を受けました。

 んー、どんな指示だったか。


――いつでも転移できるように周囲の解析を指示されました。すべての異世界の解析を完了し、繋がりを付けておきました。


 ちょ―――っと待とうか。すべての異世界? あれ全部?

――はい。


 ・・・・・・・。


 はは・・・泣きたい・・・。


「ご主人様。どうか、ご指示を」

 コスモが目の前で(ひざまず)いている。周りを見るとクリエイター達も(ひざまず)いている。


 マージ勘弁だわ。なんでこうなった。私が全異世界の主人? 全異世界人が魔物や精霊も含めて何から何まで私の従者?

 大体コスモ達がこんな場所に飛ばして来るのが間違いだったんだ。そうだ、私のせいじゃない。

 と言っても変わる訳じゃ無し。【那婆羅】、これって消せない・・・よなぁ。

――消せません。

 だよなぁ。どうしよう。


 もうやってしまったものは仕方が無い! ここは開き直ろう。


(【那婆羅】、まだ全異世界とは繋がってるのか?)

――繋がっています。


(日本も入っているのか?)

――入っていません。あの世界は特殊で、繋がりを付けられませんでした。恐らく魔素が無いからだと思われます。


良かった。それだけが救いだよ。じゃあ、安心して指示が出せるな。


「奴隷は禁止だ、生贄も禁止。分かったかー!」


「「「「「はい!!!」」」」」」




【第1部 完】



‐―――――――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今まで読んで頂き、ありがとうございました。

 続編として【第2部】を思案中です。

 構想はできているのですが、あとは方向性を決めて、少し書き溜めてから開始したいと考えています。

 今は、仕事も忙しいので、1か月以内に始められたらいいなぁと思っています。


 自分でもまさかここまで長編にするつもりは無かったのですが、アクセス数を見たり、勝手にランキングを見たり、楽しい感想を頂いたり、ご指摘・ご指導を頂いたりしてる内に、いつの間にか216話、76万文字。

 凄い数字だと自分でも感心しています。

 これも読者の皆様のおかげだと思っています。

 ありがとうございました。


 あと1話、纏めと言いますか、以前から要望を受けていましたキャラの纏めを入れられたらと思いますが、中々上手く纏まりません。(多すぎて)

 主要人物だけでも第2部より先に投稿できるように頑張ります。


 ありがとうございました。



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