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第214話 異世界改造計画


 翌日、食堂に行くと全員朝食を摂っていた。

 その中にケンとモイチを見つけると近寄って声を掛けた。

 この元南の勇者の2人は、ベッキーを脅かして家に帰らせた時、北の勇者達と共にベッキーの所まで一緒に行ったが、すぐにアジトに戻って来ていた。もう1人の元南の勇者のハルはそのままベッキーといるみたいで戻って来ていない。

 何を創ってるのかは知らないが、2人で協力して午前中はダンジョン、昼からは研究をしたいるようだった。

 まだ出来上がった物を見せては貰ってないので、研究中という事なのだろう。


「ケン、モイチ。ちょっと相談があるんだが」

「なんですか?」

2人共こっちを見るが、モイチが答えた。ケンはまだ少し眠そうだ。


「お前達、パソコンは好きだろ?」

 2人の目が大きくなる。

「パソコンあるんですか!」

 眠そうだったケンが食いついて来た。

 私が話題に出すぐらいだ、あると思ったんだろう。


 昨夜、創っておいたノートPCを出してやる。

 CPUはi7、メモリ16GBのワイド画面。見本で店頭に並んでたやつを創ってみた。私の持ってたデスクトップより、ノートPCの方がスペックがいいって、ちょっと寂しかった。


「うわっ!!」

ケンは驚きの声を出すと、素早くノートPCを慌てて奪い取り画面を開くと電源を入れた。

 さっきまで寝惚け眼だったのが嘘のようだ。横でモイチも呆気に取られてる。

 何度電源ボタンを押しても何の反応もしない。それでも見た目や質感や重みで本物のノートPCだとは分かる。この世界には無い物だから。


 ケンは恨みがましい目を渡しに向けている。

「タロウさん、これは何! こんな仕打ちをして楽しい?」

 私がいたずらで面白がっていると勘違いしたようだ。


「そんな事はしないぞ。お前が早とちりをしただけだ。相談があるっていっただろ?」

 ケンは憮然としていたが、モイチは横でうんうんと私に同意してくれている。

「だったら何の相談なんですか?」

「今、正にケンが思った事だ。電気を何とか出来ないかと思ってね」

 ケンの顔が怒りから笑顔に変わる。

「そういう事かぁ。でもこの世界に電気って無いよ」

「それは固定観念だと思うんだ。この世界でも電気は創り出せると思うんだ。もう1度元の世界に行って来るけど、燃料さえあればこういうものもある」

 昨夜、一緒に創った軽油で動く発電機を出した。


「あっ! 発電機ですね! 確かにこれで電気は創れますね」

 今度はモイチが食いついた。

「そうだ、発電機だ。でも、軽油を買って来るのを忘れたんでもう一度行って、軽油を買って来ないと動かないんだ」

なんか2人が残念そうな目で私を見て来る。

 確かに忘れてたけど、そんな目をする事はないだろう。


「でもな、少しぐらいなら構わないかもしれないけど、排気ガスは出るんだ。折角この世界には排気ガスが無く空気が綺麗なんだから、排気ガスが出ないものをお前達2人で開発してくれないか?」

ケンとモイチは顔を見合わせ、2人で頷き合う。

「「はい、やります!」」

これで私が軽油を買って来るのを忘れたのって『態とだよ』って事にならないかな。


「これも怪我の功名ですね」ってモイチに言われてしまった。

ならなかったみたいだな。残念。


でも、このまま開発させるのも効率が悪いな。

(【那婆羅】、この2人に私のスキルの【創生】を与える事は出来ないか?)

――可能です。

(与えてしまうと私から無くなってしまわないか?)

――スキル表示からは一時的に消えますが、【那婆羅】の中にバックアップ済みですので完全に消える事はありません。


じゃあ、2人に【創生】を与えよう。

【ロブギフト】発動! ケンに【創生】を与える。

ケンにユニークスキル【創生】が付いた。すかさず【那婆羅】が私のユニークスキルに【創生】を復元させる。

【ロブギフト】発動! モイチに【創生】を与える。

モイチにユニークスキル【創生】が付いた。再び【那婆羅】がユニークスキル【創生】を復元させた。


「今、2人にユニークスキル【創生】を与えた。これで開発がかなり楽になると思う。まずはPCや発電機を解析してみて、自分で創ってみてくれ。その後は工夫をして、排気ガスを出さない発電機を創ってほしい」

「「わかりました!」」

2人はすぐにPCと発電機の解析に取り掛かった。

私の様に【那婆羅】がある訳ではないので、すごく時間が掛かるみたいだ。

先に食事を終わらせてから、自室に戻ってやるように言って私も朝食を摂る事にした。

いつもの場所に座ると、イチジロウが料理を持って来る前に、話を聞いていたリクとソラと鍛治ギルドに加盟しているニコとゴロウがやって来て、自分達も【創生】が欲しいと言うので与えてやった。

他の者は創る事には興味が無いようだ。確かに壊す専門だもんね、あなた達は。


電気についての解析と開発はケンとモイチに任せられるかは分からないが、できなければ私がやればいい。

その後も色々と大事な事が出て来るだろうから、その時に手伝ってもらえばいい。


私はもう一度、元の世界に行くべくメタルキングの指輪を填めて異世界の空間に転移した。今回は私の部屋も確認して、そこに転送魔法陣を創っておこう。


今回もコスモは出て来なかった。もしかしてクリエイターが出て来るかとも思ったが、誰も出て来なかった。

前回に解析は終わらせているから、今回は楽だった。すぐに元の世界に転移できた。

前回同様最寄りの駅に転移して来たが、誰も驚いた様子が無い。

まさか急に人が現れるとは思って無いのかもしれないが、無関心過ぎないか?

こっちとしては都合がいいので、このまま行動に移す事にした。


まずはガソリンスタンドだな。

透明の指輪を填めて、軽油、灯油、ガソリン、ハイオクを解析した。

次に住んでいた文化住宅に行ってみた。

何も変わって無い。佐藤と表札も上がったままだ。

玄関の扉を開けてみると鍵も掛かって無い。でも荒らされた形跡は・・・ちょっとある。ソラが暴れて逃げた時のままだ。

確かに片付けてないよ、帰って来れなかったんだから。でも、あの時のままって・・・鍵も掛かって無かったし、誰も私がいなくなって心配してくれる者はいなかったんだな。それにしては給料は振り込まれていたようだし、どうなってるんだか。


 荒れている所だけ簡単に片づけて、PCを立ち上げた。

 おお! 4年振りか? 感動だな!

 確かに私のPCだ。デスクトップ画面はミスターだし、間違いない。

 ミスター、ただいま。久し振りだな。

 心の中で挨拶をした。

 

 特に持って行く物は無いが、出来る限り解析しておこう。

電化製品は昨日アメーリアとアキバに行って、この部屋にあるものより良い物を解析済みだけど、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、時計、テレビ、タンス、机、コンセント、電線、LANの配線、水道、風呂・・・・

出来る限り解析した。【那婆羅】にとっては一瞬で解析できるみたいだ。一瞬触るだけで解析完了してしまう。


次は電力を創るんだったな。発電所と変電所の場所を確認しないとな。

PCで検索。すぐにわかった。

移動方法だが、車は創れるけどナンバーが面倒だ。偽造ナンバーだと捕まってしまうかもしれないから、移動はレンタカーだな。

 火力・水力・ソーラーの発電所の解析をした。原子力は辞めておいた、向こうの世界では必要ないだろう。

 ソーラー発電が一番有力だろうな。でも、できれば魔素や魔石を使った独自の方法を編み出すべきだな。

 変電所も解析したし、電柱の上の変圧器も解析した。

 おそらくここまでしなくても、発電機で十分な気もするが、備えておいて無駄になっても問題無い。ある物から選ぶことはできるが、無い物からは選べない。専門的な知識も無いんだから、選択肢は多い方がいい。

 あとは【創生】を持ってる者でチームを作って相談してみるか。

 でも、結局私が考えて創ったりしてるんだよな。


レンタカーを返し、自宅まで戻り、アジトに戻って来た時にはMPがあと僅かだった。

流石に、あれだけ解析したら、私のMPでも枯渇する寸前だったよ。危なかったな。


 元の世界と時系列は同じようだし、また行けばいいか。

 夜の内に、ケンとモイチに相談し、今後の方向性を話し合った。


 ケンはPCを絶対起動させてやると張り切っている。モイチも発電を完成させるという点では同じようだ。

 今晩は私の魔力が無くなっているので出来ないが、明日から太陽光発電システムを創って電力を賄う事で話は決まった。

 そうなると次は通信だ。電波は魔力に邪魔されて上手く飛ばないようだ。

 ケンは電波について研究していたようだ。

 魔力の薄い人間が住む町では電波は使えるが、町と町の間には魔素があるので、上手く電波を受信できない事は2人の間で研究済みだった。

 そうなると有線か。他の仲間の協力が必要になって来るな。

 エクスプレスの下の街道を利用できそうだな。街道の下にケーブルを埋めてやろう。

 そうすれば国と国を有線で繋げられるし、町の中はどうとでもなるだろう。

 有線なら工事を国がすればいいし、電波も使えそうだ。

 これならうまく行くんじゃないか? うん、良さそうだ。


 電力は各国で創ればいい、各家庭でもいいぐらいだ。通すのは通信線、弱電だ。

 電話線とLANケーブルを100本ずつ入れておけば当面は問題無いだろう。

 どうせ、基地局を創ってそこから各国へ入って行くんだから多すぎだと思う。

 予備という事でいいだろ。後からまた埋設工事をするのは手間だからな。

 今なら街道も工事中だし、やるなら今しかないな。


 次の日からは仲間に説明をして、街道の地下5メートルに人が通れるぐらいの直径2メートルの配管をそれぞれの街道の下に創るように指示した。

 もちろん配管は私が創った。


 1週間で配管の埋設を終えた。

その頃にはソーラーシステムも完成していた。まずはベータ版という事で、私の領地内にある獣人村に設置した。

 もちろんそれまでに、アジトでソーラー発電のテストをして、問題無くパソコンが起動してケンとモイチは有頂天になっていた。

 やっぱり通信できなくてもパソコンがあるだけで嬉しいよな。わかるよ、その気持ち。

 OS内蔵のトランプゲームをするだけでも嬉しいもんな。


 ソーラーシステムで電気を創り、まずした事は電灯だ。

 村の道に街灯を作り、夜でも明かりで照らされる道が出来た。

 各家にも電灯を導入した。それからは洗濯機、電子レンジ、IHコンロ、給湯器。これらを各家に導入しモデルケースとして試してもらう事にした。

 上手く行けば、次は町。そして国へと昇華させていく。


 次に、電動バイク、電気自動車。

 村の中は段差があるので、アーリーにお願いして森の出口まで道を創ってもらった。

 2輪車に乗るのは苦労していたようなので、電動自転車とママチャリも創った。

 あとは問題点が出たら解決をして、改善して行けばいい。

 どんどん近代化して、もっと住み易くて貧富の差の無い世界に変えてやる。

 あと心配なのは、クリエイターがどこで邪魔して来るかだな。

 今の所出て来ないから、見逃されてるのか。それともクリエイター自身に何か問題があったのか。

 クリエイターが出てくるまでに、どこまで出来るかだな。


 別にクリエイターと敵対したいわけじゃ無いんだ。ただ、この世界は作り物過ぎて可笑しすぎる。

魔物? 別にそれはいいだろう。

だが、差別はダメだ。奴隷はダメだ。生贄はダメだ。

それならもっと人間に良い様に変えてやれば、日本の様に変えてやれば、差別も少なくなるだろう。

 王国なんだから差別や戦争もあるかもしれないが、それを無くす為にはこの世界を進化させてやらないといけないと思う。

 私のいた日本ならば、それが出来ていた。確かに差別は日本でもあった。イジメもあった。でも、この世界程じゃない。

 それならば日本の様に変えてやるのが近道じゃないかと思うんだ。

 だからもうちょっと出て来るなよ。出て来て邪魔するんじゃないぞクリエイター。

 私がもっと良い世界にしてやるよ。


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