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第213話 元の世界

あれ? コスモがいないな。いつもならすぐに出て来るのに。

異空間に来てみたが、コスモが出て来ない。

真っ暗なので体感時間が長く感じるが、それでも30分は待ったと思う。

コスモは現れなかった。


「タロウ様? コスモさんが現れませんね」

「そうだな、どうしようか。一旦戻るか・・・いや、一度解析してみる」

 真っ暗で地面は見えないが、手を付くと感触はある。そのまま【那婆羅】で解析を始める。

 あの光の群っていくつあるんだ? 1つ1つが世界の光だとコスモが言ってたが、無数に情報が入って来るのが分かるぞ。

 情報に関しては【那婆羅】に任せよう。


(【那婆羅】どのぐらいで解析が終わりそうだ?)

――およそ2時間で完了します。

それぐらいなら仕方が無いか。でも、この量を2時間って・・・

 【那由多】から進化して半端なく演算能力が上がってるんだな。

 今までも思ってたけど、【那婆羅】に解析できないものって無いんじゃないか?


「アメーリア、2時間ぐらい掛かるみたいだ。待てるか?」

「はい、私は大丈夫です」

 

アメーリアは私の邪魔にならないように、終始黙って待っている。

 別に解析は【那婆羅】がするんだから話してもいいんだけど、私も少しでも【那婆羅】の邪魔にならないようにと考え、アメーリアに話し掛けずにいた。

 【那婆羅】は私の一部だからね、少しでも早く終わらせたいし黙っていた。


2時間後、解析が完了した。

(私の元の世界ってわかるか?)

――はい。

(じゃあ、そこに連れて行ってくれ)

――分かりました。


光の1つが私達の方に向かって来る。

「アメーリア、行くぞ」

「はい!」


光が納まって来ると見慣れた風景が現れて来る。

ビル、道路、車、信号、電車、見慣れた服を着ている日本人・・・・


そこは私の家の最寄り駅の駅前だった。急行も止まる駅だったからそこそこ大きな駅だった。

懐かしさにボーっと立ったまま周りを見ていると涙が出て来た。

「ああ、帰って来た・・・やっと帰って来れた・・・」

「タロウ様・・・・」

 アメーリアには私の呟きは聞こえて無かったんだろう。周囲の建物の違いに驚いている。

 道路もアスファルト、ガラスの自動ドア、信号、車、バス・・・


「ここが私の世界だ、間違いない。もう戻って来れないと思ってた」

「でも、これからはいつでも戻って来れるんじゃありませんか?」

 珍しいながらも、私の世界と言われた事で安心したのか、それとも驚かないってやつの続きかもしれないが、私に(いたわ)りの言葉を掛けてくれた。


そうだ、そうなんだよ。この指輪がある限り能力が無くてもいつでも来れるんだ。もしかしたら魔法陣で直接来れるかもしれない。

あれ? アメーリアは普通に話してくれたよな。


「アメーリア? 私がわかるのか?」

たぶん元の世界に戻ったら元の50歳の姿に戻るものだと思ってたけど。


「何をおっしゃってるんですか?」

どこかに鏡は無いかな? あ、コンビニだ! 懐かしい。

駅前のバスロータリーの向こう側にコンビニを見つけた。

変わって無い。場所もそのまんまだ。


「アメーリア、ちょっとここで待っててくれないか。あそこの店に行って来るから。」

「私も一緒に行きます」

そうだよな、確かにここに1人でいるのは不安だろう。

「わかった、付いておいで」

「はい」


コンビニに入ると店員にひと声かけてトイレに駆け込んだ。

入る時に自動ドアのガラスに映る自分の姿も確認はできたが、しっかりと確認したい。


トイレに入って鏡を見る。

18歳の私だった。50歳の私では無い、どうなってるんだろう。

ここは私の世界では無いのか? 【那婆羅】の解析だから間違ってないと思うが・・・

それじゃあ、どうして50歳に戻らないんだ? もう私は向こうの世界の住人になってしまったのか?

確かに称号も『異空間の住人』から『東の国の冒険者』に変わってたよな。

でも、姿は確認できた。今も・・・『東の国の冒険者』だな。だいたい【鑑定】が使えてるよ。

あ、アメーリアを1人にしたままだった。考えるのは後にしよう。


トイレから出るとアメーリアは店の中を物色中だった。私を見つけると駆け寄って来て

「タロウ様! ここには見た事も無い物が沢山あります。これってなんですか?」

アメーリアの両手にはお菓子や酒の肴の様な袋など幾つも袋を持っていた。

 もう少し声のトーンを落とさない?


「あっちにはケーキもあるようですし、あっちには書物もありました。こっちには・・・」

「わかった、落ち着け。私も今は落ち着けない状況なんだ。まずは落ち着こう。」

「はい。」


 まずは服だ。

今着ている私の服はベッキーデザインでユニコが創ってくれた服だから、この元の世界でもちょっとお洒落な感じで問題無いんだが、アメーリアの服は大分浮いてるな。


慌てて自分の確認を先にしてしまったな、アメーリアもこの服だと目立つし話もゆっくりできないよな。

アメーリアの着てる服は貴族風だから日本のコンビニではまず見ないな。

コスと言えば無くは無いけど、美人だし西洋の顔立ちだから目立つんだよね。それでこの服だと目立ち過ぎだ。

 厨ニの方ならお忍びのお姫様が・・・とか思ってしまいそうだ。

 冗談は程々にして、まずはアメーリアを着替えさせないとな。私は女性物の服は持って無いから買うしかないか。防具なら持ってんだけどな。


元々私が着ていたものは、少しボロボロになっていたのでユニコに繕ってもらっていた。

収納から出して、ズボンのポケットに入っていた財布を出しておく。

財布を確認すると1万3千円と小銭とカードが入っている。これも服に入れたままだった、異世界に行く前に買い物に行った時のままだ。


先に服を調達しようか。

「アメーリア、その持っている物はあった所に置いてこようか。一度店を出て落ち着ける所に行こう。」

「はい、わかりました。」


驚かない遊びをしてくれてたお陰で助かったよ。本当ならもっと大騒ぎしてるはずだからな。

アメーリアと一緒に持っていた物を元の所に戻してコンビニを出た。

出る前にキャッシュカードで5万円降ろしておく。女物の服は高いってイメージがあったし、他にもいるかもしれないしね。

 ただ、残高を見ると給料はずっと振り込まれてたみたいだ。

 約4年分、元々の残金もあったと思うが、約2000万円入ってる。私の分身がいて働いてたとか?

 何がどうなってるんだか。その辺りの確認もしてみたい。


コンビニを出て服屋に向かった。女性物の服が売っている店に入り選んで着替えさせた。

私は何を買っていいか分からないしアメーリアも分からないから店の人に任せた。

今の流行りはーとか、色はーとか言い出すのでマネキンの着てる服を言ってサイズだけ合わせてもらった。長い買い物は嫌いだ。今は時間も惜しいしね。

アメーリアが着替えたらそのまま着て帰るからと今まで着ていた服を紙袋に入れて貰って店を出た。店を出たらアメーリアに収納させた。収納アイテムは有効なようだ。


まずは落ち着いてゆっくり話したい。考えたい。

家に戻るか? ここからだと少し遠いな。ファミレスでいいか、あそこのファミレスでいいな。

アメーリアを連れてファミレスに入った。


私はコーヒーを、アメーリアにはミックスジュースを頼んだ。

 久し振りにコーヒーを飲んだら、少し落ち着けた。元の世界に帰って来たと徐々に実感出来て来た。

 アメーリアはキョロキョロしたり、「なんですか、この美味しい飲み物は」と言ったかと思うと、メニューの料理の写真を見て「絵? ですよね?」と言ったり落ち着きが無い。

 やっぱり驚くよな。この程度で済んでいるなら、まだいい方か。


「これからどうするか・・・」

「タロウ様の世界を案内してください」

私の呟きにアメーリアが反応した。

「いや、そういう意味じゃ無くて、何からしようかと考えてるとこだよ」

「何がしたいんですか?」

「そうだな・・・まずは確認か。それと、今回来た目的だな」

「確認でしたら、案内しながらでもできるんじゃありませんか?」


 確かにそうだな、うまい事言うな。

「わかった、案内しようか。でも、どこを案内すればいいんだ? よく分からないよ」

「どこでもいいです。私の知らないものが沢山ありそうです。タロウ様の世界って楽しそうです」


どこでもいいってのが1番困るんだけど、アメーリアは私の世界の事なんて何も知らないだろうし、本当にどこでもいいんだろうな。


 特に当ても無く電車に乗って都心に向かった。

 大きなビルさえ見せてればいいか。いや? 電化製品がいいかもな。それならアキバだろ。うん、アキバに連れてってやろう。


 山手線に乗り換え、アキバへと向かう。

 その途中でもアメーリアの好奇心は抑えられない。だが、そこは何と言ってもお姫様。大きな声を出す事は抑えてくれるようになった。


 アキバではまず電化製品を見た。アメーリアの世界では電気が無いから参考程度だが、役に立つ物はいくらでもありそうだ。

電気を創るか、代替品を創るかだな。

 他にもパソコン、オーディオ、模型、おもちゃ、どこに行ってもアメーリアの目は輝いていた。メイド喫茶は辞めておいた。


 発電機を見つけたので、1つ解析しておいた。もちろん、ここで回ったすべての所で解析はすべて完了済みだ。ちなみに電車も。路上に止めてある車も自転車も解析済み。

 日本だから拳銃は無いが、モデルガンも解析済み。

 全部このままでは向こうの世界では使えないが、応用すれば使えるようになるんじゃないか?

 転生者の勇者達と相談してみるか。

 これだけ解析して創れるんなら、この私の世界でも億万長者になれるんじゃないか? 元の世界に戻る必要はある?

 もちろんあるさ。この私の世界より、心を通わせられる仲間が待っている。


その日は1泊して次の日はディズニーランドを回って、その夜に元の世界に戻った。

もちろん部屋は別々だよ。ビジネスホテルは部屋が狭いから、スイートルームで部屋が分かれてる所で1泊した。驚きの1泊20万円。もっと高い所もあるんだろうけど、ビジネスホテルのシングルしか使ったことが無い私にとっては、ありえない金額だった。

 だって、家賃より1泊の宿泊費が高いってありえないだろ。


帰りは思った通り、転送魔法陣で戻って来れたよ。戻った後は、こっちの魔法陣を通じて、向こう側の魔法陣を消しておいた。


 アメーリアの宮殿の魔法陣に戻って来たので、そのままアメーリアと別れたが、玄関ではニッコニコ顔の執事さんが迎えに出ていたよ。

 1泊したしな、勘違いされてるよな。

 

 元の世界に行って感じた事は色々あったが、MPが全く回復しなかった。逆に少しずつ減っていた。

 あのままいれば、MPは無くなってたと思う。そうなれば戻って来る事は出来なくなるんだろうな。メタルキングの指輪で戻る事を考えても、MP50は残しておかないと帰って来れなくなるな。

 今回はコスモもいなかったし、魔法陣で戻る事を考えても1週間が限度って感じだな。

 解析するだけならいいんだけど、次は1人で行って、自分の現状も確認したいし、明日になればMPも回復してるだろうから、それから考えるか。

 まずは、解析したもので、使えそうなものをリストアップして創ってみよう。

 今は、元勇者達はバンブレアム帝国のベッキーの店を手伝ってるはずだよな。

 あ、ケンジとモイチは残ってたか。明日にでも相談してみよう。

 あいつらもパソコンは好きそうだし、創ってやったら喜んで色んなアイデアを出してくれるんじゃないか?

 スマホやタブレットなんかだと、電気がいるけど発電機もあるしな。

 ネットワークがないので、通信ができないけど、そこらへんをケンジ達が考えてくれないかな?

 そうなるとこの世界も変わるぞ! 未だに出て来ないクリエイターが大人しい内に、この世界を発展させてやろう。

 明日からが楽しみだ。


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