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第211話 試乗会

エクスプレス1号の試乗会も終わり、獣人国での宴会も終わったので、仕方無しだがバンブレアム王を乗せる為に、城を訪れた。


大陸の中心にある国だから、どうしてもバンブレアム帝国が流通の中心にもなる。

環状線の様に外回りを繋ぐという方法もあるが、一番大きな国でもあるバンブレアム帝国を中心にして初めて西の大陸の経済が回って活性化し、文化の進化にも繋がるとみている。

 今まで進化しなかったこの世界も少しは進化するんじゃないかという希望だ。

 私はこのままでもいいとも思うんだが、クリエイターの掌の上って感じが気に入らない。

 そのうち何か言って来るかもしれないが、それまでは思い通りにやってやろう。

 あのクリエイターの設定した世界だから、抜けてる所も多いと思うしな。


バンブレアム王、第1継承者ローゼッテン王子、第2継承者アムール王子、第3継承者アメーリア。

 他にも大臣や騎士団や世話係りを含め、総勢90名を厳選しバンブレアム帝国からの試乗会を行なった。


「王様、これがエクスプレス1号です。如何ですか?」

高さ20メートルのプラットフォームという名のカタパルトに登って来た王様は少し顔色が悪い。

「こ、これがエクスプレス1号か。しかし、た、高いな・・・」

どうやら高い所が苦手なようだ。あまり高い建物が無い世界だが、城はこれぐらいの高さの所もあるだろうに。

 他の連中も同様に顔色が悪い所を見れば、王様だけが苦手なんじゃなくて、この世界の者は皆が苦手なのかもな。

 それにしては前回同様アメーリアは大丈夫なようだけどな。浮遊の指輪で飛んだりしてるからなのかもな。


「下は街道になる予定だから下に創ると邪魔だろ? それに上にした方が風を受けやすいからな」

「ほぅ、風の力で動くのか。風魔法は魔石で出しているのか?」

「そうだ。かなりの数を使ったよ。でも、これで何時でも誰でも早く安全に移動できるようになるんだ。安いもんじゃないか?」

「安全なのか? 魔物は出ないという事か?」

「ああ、魔物はこの街道には入れないようにしてある。このエクスプレス1号も魔物から襲われる心配は無い」

「ほぅ・・・」

王様は感心すると、大臣と小声でやり取りをしている。乗車賃や通行料などの相談でもしているのかな?

「まずは体験してもらおうか。さ、乗って」

王様は私に誘導されエクスプレス1号に乗り込む。

 次に王子達が乗り込み大臣達も続いて乗り込む。

全員が乗り込み席に座ると、回転台の固定を解除した。

風の影響を受け、エクスプレス1号が徐々に動き始める。

車内では小さなどよめきが起こる。

更にプラットフォームから離れると、どよめきが大きくなった。

窓から下が見える。完全に浮いた状態だ。

乗り込むときに何も吊るものが無い事も確認されている。

『飛ぶ』という事が受け入れられないのか、全員が固まる。座席の手すりがミシミシ音を立てている。

全員が手すりを力一杯握り締めている。

そこまで緊張するものなのか? 気持ちが分からなくも無いが、もう少しリラックスしてる奴がいてもいいんじゃないか?

王様に「大丈夫か?」と聞いたが返事もしてくれなかったよ。


中間地点を過ぎても全員固まっている。寝てる奴もいない。

顔を動かさず眼だけで外を見て、すぐに目を瞑るやつの多い事多い事。背もたれにすら背中が付いていない。

そんなんで6時間も持つのか?


結局、片道6時間。手すりから手を離せた者はいなかった。

アメーリアも、途中で何度も席を立ち、緊張を(ほぐ)そうと歩き回ったようだが効果は無かったようだ。

エンダーク王国側に到着し、回転台に固定が終わると、降車の指示を出すが、誰も席を立てない。というか、手すりから手が離れないようだ。


到着した事を再度言ってやり、背もたれにもたれて力を抜く様に指示をする。

なんとか手が離れたようだが、今度は力の入れ過ぎで筋肉痛になってるようだ。

全員に回復薬を配って飲ますと、凝りも解れ動けるようになったようだ。


「王様、エンダーク王国に到着したんだがどうする?」

「どうするとはどういう事だ?」

「エンダーク王国に寄るのか、このまま戻るのかという事だよ」

「こ、こ、このまま戻る!? 有り得ぬわ、エンダーク王国に立ち寄る事にする」

「でも、エンダーク王国に連絡はしてないんだろ?」

「構わぬ! エンダーク王国に立ち寄る」

そう言って早々とエクスプレス1号から降りて、地上への階段を降りて行く。

大臣達も全員王様に付いて行った。

相当怖かったんだろうな。こればっかりは慣れるしかないか。


バンブレアム帝国御一行様がエンダーク王国に入ると、門兵が驚きで固まるが、一行は構わず門を潜る。

王を先頭に王子やアメーリアが続く。騎士団は両サイドを少し離れて固める。

大臣達文官や、世話係りの侍女たちは王の後を少し離れて続いてる。

私は侍女たちと一緒に歩いていると前へ行くように促され、更に大臣達にも前に行くように促される。

仕方なくアメーリアと一緒に歩いていると、アメーリアにも前に行くように促された。

結局、王様の横に並んで歩くことになってしまった。

バンブレアム帝国の王族として、エンダーク王国をパレードしている感じになってしまった。

王様は王子に声を掛け、アメーリアが私の横に並ぶような格好となった。

王様を見ると、非常に満足げだ。

さっきまでの青い顔はもう無くなっていて、回復薬のお陰か、今は血色も良く機嫌も非常に良さそうだ。

王様の機嫌を取る気も無いが、別に争う気も無いので機嫌は良い方がいいだろう。

そのまま1時間かけて町を歩き、エンダーク王国の城に辿り着いた。

途中、バンブレアム帝国一行の報告を受けたのか、馬車が用意されたがバンブレアム王は馬車を断り、城まで歩いて来た。

城では城門でエンダーク王が出迎えている。

急な事とは言え、城中の者が掻き集められて、城門前から左右に列を作りバンブレアム帝国御一行様を出迎えている。

城門の中の最前列にはエンダーク王が待っている。

バンブレアム王が城門まで来ると、エンダーク王が歓迎の言葉を長々と述べている。急な来訪にも拘らず、エンダーク王はキチンと対処しているようだ。


エンダーク王の歓迎の言葉が終わると城に通された。

バンブレアム帝国御一行様は王族と大臣と騎士団長を含めた精鋭を10名が広い会議室に通された。なぜか私も一緒に。

残りの騎士団や侍女たちは別室に通されたようだ。

エンダーク王国側も王や大臣ら文官が席に着く。護衛の親衛隊は部屋には入らず部屋の外を固めている。


「バンブレアム王、急な訪問でしたが、今日はどのような用件でお越しくださったのでしょうか」

エンダーク王が尋ねた。

「其方も存じておると思うが、このタロウがバンブレアム帝国とエンダーク王国を繋ぐ道を創ったので、その街道の視察と新しい乗り物の試乗をしてきたのだ」

「左様でしたか、タロウ殿が」

 私のせいでトップ会談が始められたみたいになってるぞ。私は戻る選択も提案したんだが。

「それで、其方にも乗ってみないかと誘いに来たんだ。どうだ、エンダーク王よ。乗ってみる気はないか? 非常に乗り心地はいいものだぞ」

 バンブレアム王が笑顔でエンダーク王に問いかける。

「もちろんバンブレアム王からの直接のお誘いを、断る訳などございませぬ。喜んでお供いたしましょう」

そうかそうかと笑うバンブレアム王の横では王子やアメーリアが苦笑いをしている。

バンブレアム王も中々のいたずら好きだな。


それから街道についての話になった。

街道の整備や使用料や関所の設置。大まかな話をバンブレアム王がし、エンダーク王はその言葉を1つ1つに驚きながらも黙って聞いていた。

エンダーク王の元に兵士が報告に来ると、バンブレアム帝国御一行様は大広間に案内され移動した。そこには既に豪華な食事が用意されていた。

急な来訪でもこれだけの物を準備したエンダーク王は中々のやり手かもしれないな。

今までの交流からは、そうは思えなかったが、やる時はやるみたいだ。

初めに出会った時は、悪魔に操られていたのにな。


その日はエンダーク城で一泊し、次の日の朝、エンダーク王国側のプラットフォームに、文官とその護衛として残った騎士団を除くバンブレアム帝国御一行様。

今後の方針の大筋は、昨日バンブレアム王が話してたが、その話を正式な条約として纏めるために大臣と文官が数名、その護衛として騎士団から数名が残る事になった。


その抜けた分はエンダーク王と側近と護衛の騎士が試乗の為にプラットフォームに立っていた。

全員で100名弱、今度はバンブレアム帝国に向けて出発だ。


エンダーク王国の連中は顔色を失っていて口数も少ない。いや、何も言葉を発していない。そんな余裕は無さそうだ。

それを見ているバンブレアム王は楽しそうにニヤついている。

嬉しそうにしているけど、昨日のあなた達は同じだったからね。


乗車してからも昨日のバンブレアム帝国の連中と同様、エンダーク王は手すりを持つ手に力が籠っている。指先が真っ白になってるね。

それを見ているバンブレアム王は楽しそうだ。

何度も言うけど、まさに昨日のあなた達だからね。

一度経験しているのもあるが、自分たち以上に緊張している者がいれば緊張も和らぐのだろう。復路のバンブレアム王には大分余裕があるように見えた。

飲み物を飲んだり、トイレに行ったりしていたから。

トイレはもちろん創ってるよ、片道6時間だからね。昨日は誰も席から立つ事も無く、それ以前に手すりから手を離す者もいなかったか。今日のエンダーク王達はそうなるんだろうな。

こればっかりは慣れるしかないな。


バンブレアム帝国側に到着すると、昨日同様に回復薬を渡して回った。

エンダーク王はバンブレアム帝国の城に招かれるということだし、私はここで別れる事にした。

エクスプレス1号の操作は簡単だ。

回転台に固定する事と解除する事、車両の扉を確実に閉める事。それだけだから。

その説明と、街道の整備をバンブレアム王に頼んで、残りの街道にもエクスプレス2号、3号を創る作業に移る事を告げた。


これだけでも西の大陸の活性化に繋がっているはずだ。

東側の国の国々もエクスプレスを創りたいが、それはバンブレアム王が先に連絡をしてくれてるみたいだから、その報告を待ってからだな。

後は船をコピーして東の国への航路を確保するだけだから、それが終わったら街道創りをやって、ようやく落ち着くな。

そしたら一度元の世界に戻ってみたいな。

クリエイターが出てきて邪魔しないだろうな。初代帝王を解放してから何も言って来ないのが不気味なんだよな。

コスモは私の味方のようだが、元々はクリエイター側だしなぁ。

まずは全部終わらせてからだな。これが終わってクリエイターが出て来なかったら1人でコスモの所へ行ってみるか。


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