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第207話 初代帝王

翌日は1人で石碑の前にやって来た。

転送ポイントはあった。西の大陸に来てから何度も訪れた場所だ。

初めは東の国へ戻る秘密が隠されていないかと、石碑に掛かれてる事を解読できないかと思いやって来た。

カインが仲間になってからは【結界】でなんとかできないものかとやってきた。

デルタも解析の為にやって来て図書館に籠り、解明しようとしたができなかった。

短剣で転移ができるようになってからは転送ポイントも創って、事ある毎に様子を見るために訪れた。

バンブレアム帝国で初代帝王の事を知った後も訪れた。

何度も来たが、何も分からなかった石碑の秘密。

それが、クリエイターが初代帝王を封印する為に創った物だと。

冥王を封印の重石として繋がりを付け、創られた物だと。

短剣で封印を解くことが出来るなんて、そんな簡単な事だったとは・・・。


私は短剣を取りだした。


ピッカ――!!


光が女の顔に変わって行く。クリエイターだ。


「やっぱりすぐにやって来たわね」

え? 出て来なくてもいいんだけど。

「あれ? なんで出て来たんだ?」

「え? 出て来ないと封印が解けないじゃん」

「なんで? 短剣を石碑に差すとかしたら封印が解けるんじゃ・・・」

「そんな訳無いじゃん! 私が封印を解くんだよ」

はい? どういう事だ?


「じゃあ、どうやったら封印が解けるんだ?」

「冥王を弄って封印の繋がりを切ってもいいんだけど、こっちの石碑で繋がりを切ってもいいんだよ。冥王と石碑との繋がりを切れば封印は解けるって事だね」

そうなんでしょうね、だから短剣で切るとかしたら封印が解けると思ったんだけど、違ったんでのか? あなたが直接手を下すって事ですか、それなら短剣で封印が解けるって言わないでくれよ。短剣で呼び出せば封印が解けるって言っててくれれば良かったんだよ。


こんな所で愚痴っても仕方が無い、さっさと封印を解いてもらおう。

「じゃあ、さっさと封印を解いてくれ」

「もう終わったよー。石碑の後ろから入れるよ」

「もう?」

石碑の後ろに回って確認すると階段が現れていた。

いつの間に・・・。

凄くおちょくられた気分だよ。

クリエイターに一瞥くれて短剣をさっと仕舞う。

「あっ! ちょ・・・」

クリエイターの顔が消えた。


「ふぅ」と一息吐いて階段を降りた。明かりは無かった。

真っ暗でも見えるし、サーチで周辺警戒もできるので問題無い。ここには生物はいないようだ。

階段は5階分ぐらいあっただろうか、思った以上に深かった。

階段を降りると1本の通路があり、通路を30メートル程歩くと扉があった。

高さ5メートルはある大きな石の扉だった。重そうな扉で取っ手が無い。継ぎ目も無い。

1枚扉? じゃあ、左右のどちらかに開けるのか?

石の扉にはドラゴンの彫像が浮彫で施されている。

「どうやったら開くんだ?」ここまで1本道だったし、目の前のこれも扉で間違いないだろう。

石の扉をコンコンと叩いてみる。


『なんだ!』

いきなり念話が頭に飛び込んで来た。

石の扉を見るとドラゴンの彫刻の目が赤く光っている。

『さあ願いを言え』

え? ドラ○○ボール?


願いって・・・、若い時は色々あったけどな。お金が欲しいとか、女が欲しいとか、出世したいとか、子供が元気でいて欲しいとか・・・。細かい事を言い出すとキリが無いぐらいあったけど、こっちの世界に来てからは、欲望という程欲しい物は無いかな。

普通はこの場面では『扉を開けてくれ』って言うんだろうな。お金はあるし、女は・・・欲しいのかな? 今までそれどころじゃ無かったかも。大体、周りは美女ばかりだけど、全部魔物だしな。 出世っていらないし、子供はいないね。

そう考えると、差し当たって欲しい物って無いのかな?

『早く言え!』

考え込んで答えを言わない私に待ちきれなくなったのか催促された。

このドラゴンの彫像が問いかけて来てるんだよな?


「問いかけて来てるのは私の目の前の彫像でいいんだよな?」

『そうだ』

「なんで彫像がそこまで意志を持って話せるんだ?」

『我は元々龍神だ。クリエイターによって、この姿に変えられ勇者を封印している』

龍神って・・・それを封印の為に扉にするなんて。無茶するな、クリエイターも。

「どうやったらお前の封印が解けるんだ?」

『わからぬ』

んー、どうやったら龍神の封印が解けるんだろ。それより扉を開けてもらって先に初代帝王の事を先にするか。

「扉を開けるとお前はどうなるんだ?」

『別にどうもならん。このままだろう』

じゃあ、先に中の事を済ますか。でも・・・これって・・・呪い? 状態異常?

試してやるか。

状態全快薬をドラゴンの彫像に振りかけてみた。

石の扉全体がキラキラと輝き、暗闇を明るくする。


石の扉が消え、そこには1人の少女が立っていた。120センチぐらいだろうか、小さい女の子だ。可愛さでは、うちのドレミには負けるけどね。

そういえば最近ドレミを見て無いなぁ。ミルキーばっかりだもんな。


「お? おお! 我の封印が解けておるぞ!」

その少女の姿で、おっさんの話し方は無いだろ。魔法の島で監視者をやってたアノマリカリスより酷いぞ。

でも龍神の封印は解けたようだな。扉も無くなったし、奥に行かせてもらうとしよう。


「これで自由なようだな。私は奥に用事があるから通らせてもらうぞ」

少女の姿をした龍神は、まだ信じられないのか自分の手や足を見て、いちいち感動している。こっちの言葉は届いていないようだ。

龍神はそのままにして、奥に入って行く。


すぐに通路が終わり広い部屋に出た。1辺が20メートルぐらいの部屋で、天井も10メートルぐらいある広い大きな部屋で、真ん中に手術台のような簡素なベッドがあり、そこに1人の青年が寝ていた。

中央のベッドで寝ている青年には、スポットライトの様に光が真上から当たっていた。


これが初代帝王? バンブレアム帝国の伝承では3人の父親だって事だったけど、まだ20代半ばか後半って感じにしか見えないな。

黒髪だし、西洋人ってよりは東洋人って感じか。

目を瞑っているから目の色が分からないが、黒だったら元日本人かもしれないな。でも転生者だから関係ないか。


【鑑定】

名前: ユウジ・バンブレアム♂28歳:人族 LV87

HP3223 MP3258 攻撃力3114 防御力3100 素早さ3155

スキル:【亜空間収納】【超速再生】【痛覚無効】

ユニークスキル:【名付け】

称号: 海王バスター、魔王バスター、東の国の勇者

従者: ヤマト、ムサシ


称号を見る限り、初代帝王で間違いないだろうな。

強さもまあまあだし、ユニークスキルの【名付け】で従者を創るのかな?

従者もヤマトにムサシか、和風だな。元日本人の転生者の可能性は高いな。


クリエイターの話では封印は解いたって事だったが、石碑の封印を解いたって事だったのかな? 初代帝王の封印は解けてないのかな? でも状態:普通(睡眠)ってなってるだけなんだがな。

目が覚めるまで待つか? いや、待たなくてもいいだろ。

ユウジ・バンブレアムを揺すって起こした。

う~ん。と小さな声が聞こえるとユウジ・バンブレアムが目覚めた。


「ここは・・・・!」

ユウジ・バンブレアムは周りを見回して、私にも気づいたようだ。

「目が覚めたか?」

まだ少し寝惚けているようだったので、確認の為に声を掛けた。

「ここは?・・・あなたは?」

「私はタロウだ。ここは石碑の地下だが、お前はクリエイターによって封印されてたようだな」

「俺・・いや僕・・じゃなくて私・・・じゃないな、余はユウジ・バンブレアムである。其方(そなた)が余の封印を解いてくれたのか」

まだ『余』と言う事に慣れてないみたいだな。東の国に転生してこの大陸にやって来て、4王を倒し国を興した。

急激な環境の変化だもんな。王として何年ぐらい在位してたんだろう。

でも、封印された事は覚えてるのか。それなら話は早いかもな。


「クリエイターに封印された事は覚えてるんだな?」

「ああ、女の神だな。確かサチコと名乗っていたと思う」

ラスボスか? クリエイターって名前があったんだ。そういや、聞いて無かったな。


「なぜ封印されたか覚えてるか?」

「それが・・・よく思い出せない。最後に見た物は、いつの間にあったのか分からない魔物と人の死体の山。そして女の神の怒りの形相。その顔がサチコと名乗った後から記憶が無い」

「何をしたのかは覚えて無いんだな?」

「ああ、覚えて無い」

クリエイターの言ってた『あいつ』に操られて何かしたんだろうか。

この世界での危険人物であるなら、やはり排除対象なのか。悪い奴には見えないんだけどなぁ。

いきなり問答無用で斬りかかって来るような奴ならこっちもやり易いんだが、バンブレアム帝国の創始者だろ? しかもその時の最大の功労者で、今も語り継がれている伝説の人。

少し話してみての印象だけど、悪そうな人でも無さそうに思える、王というよりは普通の人に見える。ステータス確認をしてなければ冒険者にすら見えない。あ、それは私も同じか。


問題なのは、『あいつ』に操られて何をするか分からないって事か。

んー、どうする。

1つ目は、クリエイターの言う通り排除。

これはなんとなく辞めたい。なんとなくだけどな。正解が分からない以上、勘に頼るのも1つの方法だろう。


2つ目は、クリエイターか『あいつ』に交渉する。

クリエイターが言って聞くかどうかは分からないが、いきなり排除よりはいいんじゃないかと思う。『あいつ』についてももう少し知りたいしな。


3つ目はクリエイターからも『あいつ』からも手を出せない所に連れて行く。

そんな所があるのか? それは分からないが、この封印に関して『あいつ』は手を出せなかったんだろ? 封印をしてる冥王にも手を出してないみたいだしな。

それならクリエイターも『あいつ』も手を出せない所があるかもしれない。


1の即排除は無いな。2の相談は、少しありか。3の場所探しは今すぐには無理だな。

番外として、私の従者にする。というのはどうだろうか。

これもこの世界で生まれた仲間たちは、クリエイターが出てくる毎に時間停止の影響を受けているからダメかもな。

でも、彼は転生者だからどうなんだろうか。勇者達のように召喚者では無く転生者。

身体はこの世界で生まれた者の身体だから影響は受けるか。

難しいなぁ。


前回、ゴーンをアジトに連れて行った時の反省から、このまま連れて行く訳にもいかないし、他で連れて行くといえば所縁のあるバンブレアム帝国か? 町で暴れない保証も無いしな、辞めておこう。


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