第206話 最後の封印
全員がアジトの食堂に戻って来た。
報告を受けたが、【監視】をしていたヨッコからと同じ報告だった。
全部消滅して確認できない。
私も同じことをしてしまったので何も言えない・・・。
でも確認はしないといけないよな。報告もあるしクリエイターに聞いてみるか。
自分の部屋に戻って短剣を出した。
ピッカーー!!
短剣が光、その光が女性の顔に変わって行く。
クリエイターの惚けた顔になるとその顔が口を開いた。
「ご苦労様~、さすがタロウね。やってくれると思ってたわ」
クリエイターは軽い口調で言って来る。なんで顔だけの時と全身の時があるんだ? 短剣だとパワーが足りないとかあるのか? 顔だけでも話せれば問題無いか。
「神は全員倒せたのか? 私達は確認できなかったが、そっちでは確認できたんじゃないのか?」
「確認できたわよ~。こちらの要望通り、神はいなくなったわ。ありがとねー」
どんどん軽くなって行くな、こいつは。
「そうか、それなら良かった。じゃあ、もういいんだな」
「まだよー、もう1人は後でって言ったでしょ」
「そういや、そんな事を言ってたな。冥王がいるからまだいいんじゃなかったのか?」
「う~ん、そうね。いいんだけど、もうついでじゃない? やっちゃってよ」
・・・・手伝ってやるって言ったしな。
「そいつはどこにいるんだ?」
「西の大陸よ」
「え?」
「驚いた? ホントそいつの封印には苦労したのよ」
「どこかも気になるが、どんな奴なんだ?」
「転生者なんだけど、私が見て無い時に勝手に転生して来ちゃったのよ。普通、この世界への転生って私の操作が必要なんだけど、勝手に来ちゃったのよね。普通はありえないんだけどね」
「勝手にって、そんな事が起こるのか?」
「普通は起こらないわよ。誰かの差し金かもしれないわね」
「そんな奴がいるのか?」
クリエイターのような奴がいるって事か?
「それは・・・言えないわ」
いるんだな。その誰かってのも知って奴なんだろうな。
「それは私には関係ないからいいんだ。それより、その転生者は強いのか?」
「強いわね」
「クリエイターよりもか?」
「私よりは強くないわよ。でも倒せないのよ」
「なんで?」
「私の管理外の転生者だからよ。こっちにも色々あるのよね」
初めは第3者の振りをして暈して話してたけど、どんどんボロが出て来るよな。ちょっと整理してみよう。
さっきの口振りだとクリエイターの様な者が他にもいるみたいな感じだった。
そいつの差し金で転生者が1人この世界に送り込まれた。
送り込まれた転生者はクリエーターよりは弱いが、そこそこ強い。しかもクリエーターには倒せない。
その転生者はクリエーターによって封印されている。封印の場所は西の大陸、元々私達が活動していた大陸だ。
その転生者の封印を解くから排除してほしいという事だな。
「なんでその転生者を封印したんだ? 暴れん坊なのか?」
「暴れん坊って事は無いけど、戦闘はよくしてたわね」
「弱い者いじめをするのか?」
「しないわね」
「ならいいじゃないか。そいつは良い奴じゃないのか?」
「あいつが送り込んで来た奴なのよ! 良い奴な訳ないじゃない!」
言っちゃったね、あいつって。他にも間違いなく誰かがいるんだ。
「なんで良い奴じゃないってわかるんだ? その転生者が何をしたんだ?」
「べ、別に・・・」
何か隠してるよな。でも、すぐに言ってくれるような気がするよ。
「それを言ってくれないと私もこれ以上は協力できないな」
「ちょちょっとー、なに言ってのよー! タロウは協力するって言ったじゃない」
「もうお前の創った神はいないんだろ? だったらお前の尻拭いは終わったと思うけど? 後はその転生者だけなんだろ? それならあいつ(・・・)と話し合えばいいんじゃないか?」
「そ、そんな無責任な事を言わないでよ。あいつに私が口で勝てる訳無いじゃない」
「お前に無責任って言われたくは無いけど、そこはいい。転生者の詳細かあいつ(・・・)の事か、どっちか教えろよ」
「なんでタロウがあいつの事を知ってんのよ。誰から聞いたのよ。コスモね、コスモって口が軽いからね」
「お前だよ」
「え?」
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙が流れた。
やっぱりこいつは抜けてるな。
「ちょ、ちょっと口が滑ったみたいね。私としたことが」
あれを口が滑ったって言ってしまうのか、堂々と大声で言ってたと思うが。
「仕方が無いわね、あいつの事は言えないから転生者の事を教えてあげるわ」
「・・・・」
もうお前ルールでいいよ、好きにしてくれ。
「転生者は東の国で生まれたのよ。生まれたっていうのとは少し違うかな? 異世界で死んで、こっちの世界で生き返ったって言った方が合うかな。東の国で死んだの男の子に乗り移って転生をして来たから」
転生者は男か。
「その転生者はメキメキと力を付け、西の大陸にやって来て魔物を倒しまくったわ。西の大陸には私が送ったんだけどね」
「人としてはいい事じゃないか、それの何が悪いんだ?」
「倒し過ぎるのよ、海王は倒すし、魔王は倒すし、冥王まで倒されかけたのよ」
「それっていつ頃の話だ?」
「その世界で1300年ぐらい前ね」
おい、それって・・・
「その転生者って・・・」
「そうよ、その短剣の元の持ち主よ」
「初代帝王か!?」
「確かそうなってたわね。私が丹精込めて育てた聖大ビクトリアも奪いやがったのよ」
奪いやがってって・・・初代帝王なら良い奴じゃないのか? 人類の危機を救った奴だろ? なんで封印する必要があるんだ?
「初代帝王なら良い奴じゃないか、なんで封印する必要があるんだよ」
「聖大ビクトリアも奪われちゃったし、幸せそうな転生者を見てるとなんだかねー。ちょうどあいつに振られてムシャクシャしてたしねー。あいつって私の気を引くために転生者をこっちに送って来たのよ。それなのに他に彼女が出来ると、後は任せたーですって。あれは二股だったわね、絶対二股だったわ、元々彼女がいたのよ。そんなあいつの送って来た転生者なんて・・・・ね?」
ね? って笑顔で言われても・・・。初代帝王って八つ当たりされて封印されてるの? それなら私は初代帝王の味方になっちゃうよ?
「その・・・初代帝王はどこにいるんだ?」
「ロンレーン西の石碑の奥よ」
え? ロンレーンの西にある祠の近くで、私が初めて西の大陸に来た時に野宿した所にある石碑か? いくら調べてもわからなかったのに。
「封印はどうやって解くんだ?」
「冥王の力を使って封印してるから、いつでも解けるわよ。力の繋がりを切ればいいだけだし。その手に持ってる短剣でも解けるわよ」
それは試してなかったな。初代帝王に関しては封印を解いて、会ってから決めようか。
もう1つ気になるから聞いておこう。
「神達っていつ頃から封印してたんだ?」
「2000年ぐらいかしら?」
「その後に初代帝王が4王を倒したんじゃないのか? 神達の封印は解けなかったのか?」
「あの時はヤバかったわー。冥王は関係なかったけど、他の3王が復活するまで他の異世界の管理ができないぐらいこの世界に集中してたわ」
「初代帝王に神達の事を頼めば良かったんじゃないのか?」
「いやよ! あいつの息の掛かった転生者に頼むぐらいなら、この世界を壊してやるわよ」
ヤバいなこいつ。こいつを倒した方が平和になるんじゃないのか?
「わかったよ、近いうちに封印を解いて初代帝王に会ってみるよ」
「倒してくれるのねー、ありがとー」
「倒すかどうかは会って話してから決めるよ。そこは私に任せてくれ」
「えー、ダメよー。あいつの息が掛かってる転生者はあいつが操る事ができるのよ。そんな危険な転生者を置いとけないじゃない」
「そのあいつ(・・・)ってお前の創った世界を壊すような狂暴な奴なのか?」
「・・・優しかったわよ」
クリエイターが顔を赤くしてボソッと呟いた。
よくわからん。すべてこいつの先走った勘違いのような気がするのは私だけか?
「初代帝王に関しては私に任せてもらう。それが条件だ」
「わっかったわよぉ」
口を尖らせて拗ねたように渋々だが納得したようだ。ホント見た目通りガキだな。
話も終わり、短剣の光も消えクリエイターも消えた。
明日にでも祠に行ってみるか。




