第193話 七獣神再び
3日後にこの町で集合する事を決めて、仲間とは一旦解散する事にした。
アジトの屋敷に戻ってもいいし、この国の探索をしてもいい。転送ポイントだけは作っておくように言って私は更に東へ向かう事にした。
昨日と同じくリクに馬車を引っ張ってもらい、同乗者はココアだけ。城の解析が目的だから本当は1人でもいいんだけど、この2人は一緒にいる事が多いよな。
目的の城はすぐに見つけられた、白鷺城だ。名前が同じかどうかはわからないが、見た目は似てる? のかな?
私は城マニアでは無いのでじっくり見た事も無いけど、大体の場所と瓦が白っぽいのとで、白鷺城ではないかと思う。別に違ってもいいんだ、城の解析がしたいだけだから。
トラブルを避けるため、リクとココアは近くで待たせ、透明の指輪と飛行の指輪を填めて、潜入して解析をした。
大きな城だったが、30分で解析完了。
ココアとリクと合流し、更に東へ向かう。大阪城と金鯱城はもちろん解析して、江戸城も解析出来た。江戸で一泊して更に東へ向かう。
宿で聞いたらやはり東京では無く、江戸だという事が分かった。
将軍様の名前を聞いてみたら、江戸治之慎だって。誰それ? 将軍様では無く殿様だと教えてくれた。この東の国は統一されている訳では無く、各地を殿様が治めているそうだ。
江戸城って徳川幕府が天下統一してから出来たものじゃなかったか? んー、歴史はある程度分かってるけど、城の歴史までは知らないからな。異世界だしな。
予想通りというか当たり前というか、私の元いた世界とは違うようだ。ここまで似ているんだったら、もしかして過去の日本なのかもと思ってしまったが、過去の日本にも魔物はいませんね。
翌日も更に北へ向かい青葉城を解析し、北海道まで辿り着いた。
海峡を越える時、何かの結界を通った感覚があった。【那婆羅】が警告してこないんだから問題無いんだろ。
北海道に着くと地上に降りて一休みした。さすが北海道、広大な草原が広がっていたので外で食べる事にした。寄って来た所にはすべて転送ポイントを作って来たので帰りは一瞬だ。
食事を摂っていると、いつの間にか魔物に取り囲まれてた。
魔物が寄って来たなぁと思ったら四方から一斉に魔物が押し寄せて来て、あっという間に周りはビッシリ魔物で埋め尽くされてしまった。虎刀牙や角爪熊の姿もあった。
【サーチ】で確認すると真っ赤になっていてどれだけいるんだというぐらい魔物で埋め尽くされている。
【那婆羅】に聞いてもいつもの答えなんだろうな。
どうする? 面倒だなぁ、転送で帰るか。
「父ちゃん、やってもいい?」
「魔物を倒しに行くのか? 行ってもいいが、多すぎないか?」
「モンスターハウスに比べれば楽勝だよ」
魔物のレベルを考えると確かにそうなんだが、数はモンスターハウスの10倍では利かないだろ?
「父ちゃん、今日は仲間がいないから分身の指輪を貸してくれない?」
「ああいいぞ、何個いるんだ?」
周りを魔物に囲まれているが、魔物レベルでいくとBクラスより低い魔物ばかりなので、慌てる事も無い。
「じゃあ、10個ちょうだい」
「10個も使い熟せるのか?」
「まぁ見ててよ」
リクに分身の指輪を10個渡してやった。横でココアも物欲しそうにしてるからココアにも10個渡した。
リクは指輪を10個填めた。親指には填めないから同じ指に2個填めている所もある。
10体の分身を出し、分身だけで戦いに行かせた。それぞれに刀も持たせてる。リクが自分で創ったんだろうな、中々上手くできてるようじゃないか。
「私も」とココアは4個分身の指輪を填めて戦いに出した。自分達は食事をした所から動いて無い。ココアは式具を(ま、箸ですが)今回足した2本も合わせて4本出し、大きくして分身体を乗せて飛ばしている。あれって分身を乗せる意味あるのか? リクも分身だけを行かせて自分は私の前から動いて無い。
見る見る魔物は減って行く。1時間もすれば5キロ四方には魔物はいなくなった。生きてる魔物がいないだけで、魔物の死骸はたくさんあった。
このまま放置はできないよなぁ、収納の方が時間が掛かりそうだよ。解体までは無理だな。
ココアは4つの式具を操ってるから凄く集中しているが、リクは私がやったようにオートで分身体に命令をしているだけのようだった。
「父ちゃん、なんか強いのが1体いるよ。倒しちゃってもいいかな」
「どんな奴だ?」
「大きな白い蛇みたいだよ」
「そいつは倒しちゃマズいかもな、捕えられないか?」
「わかった、やってみる」
収納をココアに任せて、リクの言う白い蛇の方に行ってみた。思ってた通り白蛇姫だった。
白蛇姫はリクの分身体に囲まれて逃げる事ができないようだ。周囲の魔物はすべて倒していた。10体のリクの分身体が白蛇姫に刀を突き付けている。少しでも白蛇姫が動くと刀に刺さるので、白蛇姫は身動きが取れない。
白蛇姫は私の姿を確認すると大声で怒鳴って来た。
「其方達、妾に刀を向けるとはどういうことじゃ。無礼にも程があろう」
「先に嗾けて来たのはそっちだろ、私は穏便に済ませたいだけでそっちがその気なら別に戦ってもいいんだ。七獣神だったか、狼と狐は仲間の知り合いみたいなもんだから戦いは避けたいが、お前は倒してもいいんだぞ」
「ぐむむ、おのれー!」
白蛇姫は大口を開けて毒のブレス攻撃を仕掛けて来る。
「リク!」
白蛇姫を取り囲んでいたリクの分身体の一斉攻撃で白蛇姫は倒された。
「こいつは私が収納しておく、残りの魔物も収納をしてしまおうか」
白蛇姫が倒されると、まだ遠くから寄ってこようとしていた魔物達はどこかに去って行った。
面倒な事になりそうだな、それならこっちから行ってやろうか。
1時間かけて魔物を収納し、まずは江戸に転移して魔物の買い取りをしてもらう。
今回寄った中では一番大きな町だったので、大口の買い取りをしてくれる役所が3か所あった。全部回ってもココアが収納した分だけが捌けただけだった。それでも小判で5000両あった。尾張と大坂にも寄ってリクの分も捌いた、プラス2000両だ。
後は私の持ってる分だけど、西の大陸の町で出してみようか。
小判は私が全部持っておくことにした。うちの連中ってお金を使う事って無いからね。
武器は私が創るし食事はイチジロウが作ったり自分で作ったり。服は変身だし娯楽はダンジョン。酒も今は米の木で穫れるから、ホント使わないんだよ。今回、無駄使いした扇子や箸や櫛は、式具にしようとしてただけだしね、残念ながらできなかったけどね。
今晩は西の町で1泊したら、弓を貰いに行って、さっさと戻るか。
翌朝、弓を貰いに行った。
うん、いい。やっぱり私は洋弓より和弓の方が好きだなぁ。弓を貰うとすぐに解析。これで世界樹で和弓を創れるな、早く戻って創りたいな。矢も100本おまけで付けてくれた。もちろんすぐに解析。
あとは祠だけど、その前に解決しておこうか。
先に近い祠の前まで行って転送ポイントを創って、九州の上陸した所に転移した。
今回も付いて来たのはココアとリクだけ、他の者は先にアジトに帰らせた。
ノアと一部の者は温泉が気に入ったようで、もう少し滞在すると言っていた。念の為、500両渡しておいたよ。
九州の上陸して来た所に転移して来たが、周囲に七獣神はいなかった。
どこを探せばいいかもわからんなぁ、ソラの母親に聞いてみるか。
『ソラ、今どこだ』
念話でソラを呼んでみる。
『ご主人様ー、今どこー』
『上陸した場所だ、七獣神がいた所だよ。お前も転送ポイントを創ってただろ』
『わかったー、母様と行くよー』
一緒に来るのか。ちょうどいいな、白蛇姫の事を話しておこう。
ソラとクラマはすぐに現れた。
「ご主人様ー」
ソラは転移して来たら、私の元に駆け寄って来た。
「もう戻って来ていいのか?」
「いいのー、うちはご主人様と行くのー」
「クラマさえ良ければ私は構わないんだが」
そう言ってクラマに目をやる。なんかちょっと怒ってる?
「ほぉ、其方、妾の事を呼び捨てとな。無礼な奴じゃ」
またそれか、それでバトルになるのか?
「先に言っておくぞ、私とお前に上下関係は無い。しかも私達は初めに問答無用で攻撃されかけてる。そんな奴らに敬称を使う程、私は人間ができてないんでな。戦うと言うなら排除するだけだ、白蛇姫のようにな」
「なんと、白蛇姫を倒したじゃと? それは妾達への宣戦布告と見ていいのじゃな?」
「先に仕掛けたのはそっちだけどな、そう取ってもらっても構わないぞ」
「むむむ、ならば覚悟しろ!」
倒しても蘇生薬があるんだけどなぁ、ソラの母親だから倒すのは勘弁してやるか。
「他の七獣神は呼ばなくてもいいのか?」
「もう呼んでおるわ、今更命乞いをしても聞けぬぞ!」
呼んでるんなら話は早いな。
クラマに一気に近寄りアッパーカット! ワンパンでクラマを気絶させる。
他の奴らもゾロゾロ来始めたな、なんかムシャクシャするし殲滅でいいだろ。
私は刀を抜き魔物を引き連れて現れた大猫又と八咫烏に向かって行く。一振りで魔物を10体20体と切り裂く。ココア達の使ってるソニックブームでは無く、剣圧によるものなので技でも何でもない、ただの力技だ。
大猫又も八咫烏も雑魚と変わりなく斬り捨てる。
続いて現れた白狼、大魔魅も瞬殺。最後に遅れてやって来た霊亀も甲羅ごと叩っ斬ってやった。七獣神を倒されると、連れて来られた残りの魔物達は逃げ去って行った。
憂さ晴らしに結構本気で刀を振るったので、ココアもリクも私に気圧されて手を出さなかった。ソラはクラマの介抱中、まだ回復薬は使ってないようだ。今、回復させて私に向かって来ようもんなら一緒に斬られてしまうと思ったのかもしれないな。
一旦、倒した魔物を全部収納。その後七獣神だけを出して並べた。
ソラにクラマを回復させろと命令する。ソラの創った回復薬を飲んだクラマが目を覚ました。
「目覚めたか。お前はソラの母親だから斬らなかったが、他の者は全員倒したぞ。まだやるというなら容赦はしない」
「ぬぅ」
目の前に並べられた七獣神の無残な姿を見たクラマが唸る。
「だが、これ以上私達に敵対しないというなら、こいつらを生き返らせてやってもいい。判断はお前がしろ」
「なに!? 生き返らせる? そんな事ができるのか」
「ああ、ソラだってできるぞ。なぁソラ」
ソラは頷き、心配そうにクラマを見ている。
「わ、わかった、我らの負けじゃ。七獣神を生き返らせておくれ」
私はソラに向かって頷いて合図を送る。
ソラは自分で創った蘇生薬を出し、並べられている七獣神達の口に含ませた。
七獣神達が淡く七色に光り、息を吹き返した。
ソラは続けてHP全回復薬を七獣神達に飲ませた。
次々に死んでいたはずの七獣神達が目覚めていく。クラマはその様子を驚いて見ている。狐だから分かりにくいが驚いているように見える。
「ソラ、そのような事が出来るようになったのじゃな」
「うん、ご主人様のおかげだよー」
「そうか、そうか」
「だから行ってもいい?」
「わかった、跡継ぎの件はもう少し先にしてやろう。その代わり、必ず戻って来るのじゃぞ」
「うん! ありがとー、母様ー」
目覚めだした七獣神達の所に行きクラマが状況の説明をしていた。
「お前達が何故私を敵対視するのかはわからないが、お前達程度なら私の仲間1人で簡単に倒せるんだ。今回は生き返らせてやったが、まだ敵対するというなら次は無いぞ」
七獣神達は狸の大魔魅を中心に何か話し合っている。
「なんだ? まだやる気なのか」
「い、いや。もう戦う気は無い。しかし・・・」
大魔魅が何か含みがあるように答える。
「なんだ、まだ何かあるのか」
「お館様が何と言うか・・・」
「お館様? お前達の上がいるって言うのか」
七獣神達が頷いて同意を示す。
面倒だな、でもここまでやったら最後までやるしかないか。
「そのお館様って何者なんだ?」
「我らの本体というべきお方だ。我らはその方の一部分の存在」
「よくわからんが、どこにいるんだ? 会えるのか?」
「会うのか」
「ここまで関わったんだ、会った方がよくないか? 西の大陸の国とも交流を再開してほしいしな。話をした方がいいだろう」
「西の大陸との交流は我らで許可しよう。お館様については、我らが先に話をするから追って連絡をしよう。クラマの娘に連絡をすればいいな」
「ああ、それでいい。じゃあ、今日のところはもういいな」
「そうだな、また改めて連絡を致そう」
話しも終わり、七獣神達と別れてアジトの屋敷に戻った。
お館様か、どんな奴なんだろうな。話が出来る奴だといいな。
少し訂正しました。




