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第191話 七獣神


ピアには完了の報告を念話でしてアジトの屋敷に戻って来た。

夕食までには少し時間があるが、『壁』の事は明日にする事にした。

コスモが言ってた役に立つおまけか、確かに獣人国で役に立ったな。こうする事があいつにはわかってたのかもな。


夕食の時に、明日『壁』の解析をする事を皆の前で言って、参加したい者は一緒に来ても構わないと言うと全員が来ることになった。こういう時はいつも全員来るよね。

それと、南の元勇者達が戻って来ていた。北の魔王を討伐できたそうだ。

北の勇者たちは20人いたが、10人はは元の世界に帰り残りの10人は残るか戻るか迷っている所だそうだ。というのも、今回の討伐で南の元勇者達の強さに魅かれ、自分達ももっと強くなりたいという想いが強くなってるようだ。

うん、それはいい。強くなりたいのも分かる。が、なぜここに居る? 勇者も増えるのか? ベッキーはいつまでいるんだ? 一応聞いておくか。

「なぁ、ベッキーはいつまでここにいる気なんだ?」

「なーに? そんなにあたしの事が気になるの?」

「いや、そろそろ帰らないかと思ってね」

「そんな心配いらないわよぉ、あたしは何処にも行かないから安心しなさーい」

「いや、そうじゃなくて、そろそろ帰ってくれないかと思ってね」

「なによ、その言い方。まるであたしが邪魔者みたいじゃない」

「そうだな、ハルもそろそろ自分探しをするだろうし、店に戻った方がいいんじゃないか?」

「そんな心配いらないわよ、あたしもハルももうやりたい事を見つけたから」

「ハルは分かるが、なぜお前も混ざってるんだ? お前のやりたい事って店を出す事じゃなかったのか?」

「もう店は出したからいいのよ。今後はここを拠点にハル達と北の勇者を鍛えるのよ」

「は? ここを拠点? 何を考えてるんだ、そんな事は許可しないぞ。他所でやれよ」

「だってここって居心地がいいじゃない? もうここを拠点にするって決めたの」

「ダメだ」

「決めたの」

ダメだこいつ。どうやったら追い出せるんだ? あっ! それで行くか。


その夜、全員が部屋に戻ってからエースを呼んだ。

「エース、前にベッキーにドッキリをやっただろ、あの時分身に変装させたことを覚えてるか?」

「もちろんです」

「じゃあ、もう一度やってベッキーを驚かせてくれ」

「わかりました。今からやりますか?」

「ああ、頼むよ」

エースが分身の指輪を填めて、分身に変装をさせた。前にベッキーの前で小さくして消した奴だ。

エースの分身をベッキーの部屋の外に行かせ、小石を投げて窓に当てた。

ベッキーが窓の外に目をやると木の陰からエースの分身がベッキーを見ている。

もちろんベッキーも気が付き、ベッキーの顔が驚愕の顔に変わって行く。

「ギャ――!!」

屋敷中に響き渡るベッキーの悲鳴。

皆がベッキーの部屋に殺到する。

「ベッキーどうしたの?」

1番早く到着した隣の部屋のハルがベッキーに尋ねる。

「出た、出たのよ。また出たのよー!」

「何が出たの?」

「あいつよー! あいつがまた出たの。ここにいたらまたあいつが来るわ。ダメよ、そんなのダメ」

「だから何が出たの?」

「帰るわ、あたし帰るから」

「何言ってるの? どうしたのよベッキー」

「いいの、ここにいたら危ないわ。早く送って、もうあたしは帰るのよ!」

もう何を言っても帰るの一点張り。仕方なくハルがベッキーを送って行った。

北の勇者達も南の元勇者達も次の日の朝からベッキーを追ってバンブレアム帝国のバッキーの店に行き、ベッキーの説得をする事になった。

邪魔者ベッキーを追い出す事に成功したし、纏めて北の勇者達も追い出せた。

後は待望の『壁』の解析をしようか。

昨日は1日潰れてしまったかなら、余計に期待感が高まったよ。それはココア達も同じようだな。

『壁』が解析出来たらジャンに乗ってそのまま行こうと言って屋敷の前で待たせるつもりが、一緒に飛行の指輪を填めて私の周りにいるからな。

私は右手を『壁』に当てて解析を始めた。一瞬だった、一瞬で解析完了と【那婆羅】が知らせてくれた。今まで【那由多】で解析していた分の足りない部分だけの解析だったようで、すぐに解析出来た。

書き換えにするか消すかで迷ったが、解析出来てるんだったらまた創れるし消す事にした。

『壁』は上の方から徐々に消えて行く。10秒も掛からず『壁』は全部消え去った。

これならジャンに乗って行けるから一度ジャンの背中に戻ろうと指示をしようかと思ったら、この場で馬車が5台出ていた、準備万端だ。皆行く気満々だな。

今ここには32人いるから、馬になってる者を除いて馬車に分かれて乗り込み一気に東の国を目指した。

陸地はすぐに見えた。そりゃ【神速移動】ですからね、ジャンの姿も一瞬で見えなくなったしね。見えた陸地に降りようとした時、声が掛かった。

「待てい!」

誰かが怒鳴って来た。

声がした方に目をやると、5体の魔物が陸地からこっちを見ていた。

魔物がいるんなら教えてくれてもいいだろうに、このへんは【那婆羅】になっても変わらないのか?

――警告するレベルではありませんでした。

はいはい、そこはブレないんだね。


大きな魔物達だった。狐、狼、狸、カラス、亀の大きな魔物達だった。

え? 狐? 狼?

「あっ!」

ソラが声を上げて私の後ろに隠れた。そんな気がしてましたよ、あれってソラの母様だろ。九尾の狐ってソラが狐になった時とそっくりだぞ。

「長老様? いえ、似てるけど違いますね」

ココアもボソっと独り言を言っている。

確かにあの狼の魔物も山の長老に似てるよな。

「お前達か! お前達が我らの結界を消したのか!」

この魔物達が作ってたのか、どういう意味があったんだろ。

「そうだ、私が『壁』を消した。あの『壁』には何か意味があったのか?」

「お前が結界を消したのだな、何て事をしてくれたんだ。また奴らがやって来るではないか」

「奴ら? 奴らって誰の事だ?」

「勇者と名乗っておったわ! 奴らがこの地を滅茶苦茶にしよるので、結界で来れなくしておったというのに、何て事をしてくれたんだ!」

「勇者? 勇者でこっちに来た奴はいないはずだが」

「惚けるでないわ! 間違いなく勇者と名乗りおったぞ。お前も関わりがあるのか」

「勇者とは関わりはあるなぁ。それっていつ頃の話だ? 今いる勇者達はこっちに来てないと思うぞ」

「たかが150年前の事も忘れておるのか」

あー、何かあったなぁ。マーメライメント王国の大臣が言ってたか。ブレイブヒーロー・ハーベスト、確か150年前って言ってたよな。ちょうど合うな。

皆をこの場で待たせ、絶対に攻撃はするなと指示を出し、5体の魔物の方に近づいた。

魔物達は私が近付いたことで身構えた。

「お前達と敵対するつもりは無い、少し話しを聞いてくれないか。それにお前ってソラの母様のクラマだろ」

そう言って九尾の狐の魔物を指さした。

「何故妾の名前を知っておるのじゃ、ソラとは誰じゃ」

あ、名前は私が付けたんだったな。どう説明するか。

「ソラという名前は私が名付けた。あそこにいるのはお前の娘じゃないのか?」

なんとか仲間の後ろに隠れようとしているが丸見えのソラを指さした。尻尾も出てるし。

「おお、なんと、確かに我が娘じゃ。ソラという名前をもらったのか」

「あっちのココアもそっちのあなたの所縁(ゆかり)の者じゃないのか?」

次にココアを指さした。

「おお! 確かにあれは弟の眷属の白狼だな」

狼の魔物もココアを確認して頷いている。

「クラマの娘もいたのか、では戦いは無しになるか。それではお前が結界を消した事を説明するのだな」

誰がしゃべってるのかと思ってたが、狸の魔物が代表してしゃべってたんだな。

「ああ、ソラの母親と戦う気は無いよ。それに150年前って言ったらその頃の人間は全員死んでるぞ。人間の寿命は長くても100年だ。結界を消したのはこの東の国へ来れなくてようやく消す事で来れるようになったらからだ」

「これだけの人数がいれば結界を消されても仕方が無かったか」

狸の魔物は仲間の方に目をやりながら諦めた感じで呟いた。

「『壁』は私1人だけで消したぞ。大分遠回りをしたがな」

「何っ! お前1人の力だと! ありえぬ」

「ま、そこはいいが、私達に敵意が無い事はわかってくれたようだな。今度は私からの質問だ、ここにいるのは私がそっちの言う結界を消したからなのか?」

「そうだ、また勇者が来たのかと思い、この地を守護する我ら七獣神が討伐にやってきたのだ。お前達の雰囲気からすると戦っていたら大分苦戦をしたかもしれんな」

「そうだな、戦いにならなくて良かったよ。でも七獣神って5体しかいないじゃないか」

「いや、隠れておるんだ。いざという時のためにな」


【那婆羅】?

――警告するレベルではありませんでした。

はいはい。

白蛇と猫の魔物が出て来て5体の魔物の横に加わった。

全部5メートル級の魔物で、白蛇は長さだけで行くと10メートル以上ありそうだ。

でも、私1人でも勝てそうだな。全員ステータス平均が2000をちょっと超えたぐらいか。昔の勇者になら勝てたかもな。

誤解も解けたようだし、この国に入る事も許してもらった。

話しが付いたら七獣神達はこの場から去って行った。クラマだけは少し残ってソラに説教をしてそのままソラを連れて行った。「ご主人様ー」って言われたが、そこは親子の問題だろ? 私は知らないよ。

まず西の町に行ってからオオカミおじさんの顔でも見に行ってみるか。


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