第19話 ココア威圧獲得
ゲンマは倉庫に移動しながら教えてくれた。
小判を持ってるやつが入国したって聞いてたからよ、しかも魔物を売るのが目的らしいから来るとは思ってたぜ。って、筒抜け?
「そんなに情報が早いのか?」
「いやいや、普通はそんなことは無いんだが、詰め所にたまたま居た奴がいてな、兄さんと換金所の奴とのやり取りを見てたんだ。冒険者ギルド内ならそんなことは無いんだぜ。」
そうあってほしいよ。
「さぁ兄さん!遠慮せずに全部出してくれ。」
わかったよ、わかりましたよ。肉はまた狩ればいいし、この際全部出してしまおう。
ゴブリン オーク 大アリクイ ベアラット カンガルーダ ファーラット ダークホーン リカント ウェアウルフ オーガ アダマンタイマイ ガルーダ リザードマン キラービー サラマンダー ツインヘッド クロコダイロン 等々 全部出してやった。
かなり大きな倉庫だったが、検証も兼ねるのでとゲンマの指示通り積み上げずに並べていったら、倉庫がいっぱいになった。
初めは騒いでいたゲンマも途中から静かになり、今は小さくプルプル震えている。
全部出し終えてゲンマの方に目をやると、同じようにプルプルしている受付のお姉さんともう一人男がいた。少し背は高いが、細身だけどがっちりしていて細マッチョな感じのダンディなおじさんだった。
シーンと静まり返った倉庫で場違いな声がする。
やりすぎちゃったんだろうねー
「ご主人様ー、お買い物に行かないのー?」
「そうですよ、主様。すごく楽しみにしてらっしゃったじゃありませんか。先日、刀を買った時より嬉しそうだったじゃありませんか。」
すごいよ君たち、この雰囲気の中でそういうことが言えるって。確かにそうだけど。
「あのー」
ハッと我を取り戻す3人。その中で細マッチョのダンディおじさんが声を掛けてくる。
「いや、失礼。あまりにもすごい光景だったもので。数もさることながら、このランクのものを・・・。私は、このギルドのマスターでアラハンと言います。以後よろしくお願いします。」
「はぁ、こちらこそ」
我を取り戻したアラハンは、魔物を見渡しながら
「失礼かとは思いますが、これはあなたたちが全部?」
「そうだよー、だいたいみんな同じぐらいやっつけたんだよー。弱いくせにキリが無いから飽きちゃったよー」
「弱って・・・・これが弱い魔物ですか!?」
「そうですね、確かに歯ごたえはございませんでした。が、ソラさんの言う通りキリがありませんでした。」
「君も・・・・か?」
中々話が進まないなー。そりゃやりすぎちゃったかもしれませんが、早く換金してもらってパンツが買いたいんだよ!私は。
「あのー、すぐにでも換金してほしいんだけど・・・」
「そうだ、そうだな、換金だ。ただ、少し話が聞きたいので、私の部屋まで来てくれませんか。」
「まぁ、すぐに換金してくれるっていうんなら構わないけど。」
「では、こちらまでお越しください。」
アラハンは、まだ心ここにあらずって感じのゲンマに急ぐように指示を出し、私たちを3階のマスタールームに招き入れた。
こちらには受付のお姉さんとは別のお姉さんがいて、ジュースを出してくれた。
秘書のマリオンさんというらしい。
一口ジュースに口を付けると、ようやく落ち着いた感じでアラハンが話し始める。
「まず始めに言っておきますが、この部屋で話したことは絶対に口外されませんのでご安心ください。」
ギルマスに視線を移し頷く。
「早速ですが、いくつか質問があります。できれば正直に答えていただきたい。悪いようには絶対しませんから。」
「わかった、信じよう。で、質問というのは?」
「まずは先ほどの魔物は、本当にあなたたちが倒したものですか?魔物を見せられた今でも、あなたたちのような若い3人でとはとても信じられないのですが。誰かが倒したものをあなたたちが持ってきたとか?バックに誰かいるのではないですか?」
【那由多】に統合されている探知が大きな殺気に反応する。振り向くとココアだ。
無表情だが目がヤバい。明らかに怒っている。
「本当だよー。昨日はお肉も無かったから多めに獲っっちゃったよー」
「昨日はって、昨日だけで獲ったということですか?絶対に信じられませんな。」
「だって、こっちには昨日来たとこだモーン。」
「いやいや、それでも1日でこの量はないでしょう。すべてがゴブリンだったとしても、この量をあなたたちだけでは無理でしょう。」
更に殺気が強くなる。いつの間にか薙刀が出ている。いつ出したのかなー
「ちょっと待ってください」とアラハンの言葉を止めてココアに向く。
「ココア、ちょっと待て。一旦落ち着いて薙刀を仕舞え。」
「主様、この者どもを叩き切ってよろしいでしょうか。非常に屈辱を感じます。」
「いやダメだから。叩き切ってはダメだから。まずは落ち着こうか。」
「一番弱い私のみならず、ソラさんや最強であらせられる主様までも侮辱しているのですよ、この者は。許すまじ行為と思えます、が?」
ココアは冷たい笑いを浮かべる。が、殺気はどんどん膨らんでいく。
ゾゾーッ!ココアってこういう風に怒るんだ!怖すぎるー
「わかった。ココア、分かったから。私はバカにされているんじゃなくて、ただの確認だよ。ね!アラハンさん!」と何度も大げさにアラハンに向かってウインクをする。
「あ、ああ・・・。そうです。ただの確認でし・・・・た。」
「な?ココア 確認だろ?」
「納得いきませんが、今回に限り我慢いたしましょう。あなたは寛大なる主様に感謝するがいい。次はありませんよ。」とさっきの冷たい笑顔を浮かべる。
「わーかったから、まずは薙刀を仕舞え。」怖ぇーよ。
薙刀を仕舞ったココアを確認してアラハンに目を向けると汗だくになった青い顔したアラハンが全力疾走でもした後かのように息を荒げている。
ココアって何かしたか?
――個体アラハンはココアの【威圧】によってダメージを受けました。
おいおい!威圧って。あー覚えてるよー 今覚えたんだろー。
何やってんだよー ココアちゃーん。




